キバー・プンダー コンフェッションズ

yoshimax

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  八月二十三日。
  国際都市TAIPEIに着いた。国際都市なので英語も通じる人々がかなり居る。ジャポンのスタンダードタイムからマイナス一時間。
  バス・トランスポーテーションを利用して(なかなか複雑だったが)待ち合わせのホテル「リビエラ」に九時PM到着。
  此処でムシュー・ハオヤン会長と会う。彼はアジアのどんな場所にも出没する。怪人の様な面も持ち合わせて居るのだ。『東マレーシア映画社』と云う謎の看板を掲げた私用ビルディング・プラッツに随分前に招待されたが、何か謎めいて居て「本当に映画スタジオなのか?」という印象を受けた。イタリアの映画プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスと肩を並べる程奇々怪々だ。だが彼は『臺灣』にも精通して居て、今回此処がミーティングプレースと為った。
  他に私も個人的に用事が在った。タイペイ・ゾナ・サイバネティカの記事をネットニュースで見たからだ。



  九月一日。
  私は未だタイペイに居た。場所は西門。(XIMEN.シーメン。)此処を『ゾナ・サイバネティカ』と呼ぶ者が居る。此のゾーンでは既にサロゲート・ボデイが実用化されて居る。西門を歩くヒューマノイドたちの中には、サイバネティック・アンドロイドが数百体は居るらしい。
  そう言えばこう云う話は、昔の恋人サクラ・ピンクが大好きだった。サクラ・ピンクが今、世界の何処に居るかも知らないし、もうサクラ・ピンクと話をする事も無いだろうが、彼女がこの西門を歩くと云う数百体のサイバネティック・ドールの話を聞いたら、きっと歓喜するだろうと思う。
  だが、彼らが本物の人間か、メカ・ボデイを持つサイバネティックなのかは、見ただけでは分からない。
  私はその様な町、シーメン(西門)に滞在して居た。此処にはヤングが集まる。そういった魅力が有るのだ。最新鋭のメカも此処に集まって居る。此の様な熱気が、シーメンの面白さを創る。私は此処へ来る前に或る記事を読んで居た。殆ど無視されている小さなネットの記事だった・・・。其の記事を頼りに私は或る食堂に入った。入口では中年女性が注文を聞きながら「ルーローハン」を作って居た。ルーローハンと云うのは台北のファストフードで、スティームドライスに甘煮牛肉刻みが載って居るものだ。私は大好きだ。ブレックファストとして、女性にルーローハンと、スイカジュースをオーダーした。
  ココで、午前十時三十分に、ルーローハン&スイカジュースを注文すると、「ある男」が「奥」から現れると云うのだ・・・。



「私を呼んで居るのは君かね?」そう言う声が後ろから聴こえた。此の男が、知る人ぞ知るサンチャゴ博士だ。
  サンチャゴ博士は、私を奥へと案内した。
  奥にはエレベーターが在り、私たちは其れに乗り込んだ。地下五十メートルの処に、サンチャゴ博士の研究室が在る。私は然るべき代価を用意して来て居た・・・・・・・・。
  サンチャゴ博士は代価を受け取ると、グリーンのニット帽を私にくれた。ニット帽には無数のアクセプターが編み込まれて居た。其のアクセプターが、私の思考を超ナノスケールで読み取り、意志データがニット帽天辺のウェイブ・ジェネレータからサテライト送信され、(まるで見掛けは生物の様にさえ思える)エレクトリック操り人形が作動するのだ。
  私に与えられた操り人形は『キバー・プンダー』と云う名が付いて居た。外観は動物だ。熊の一種だろう。だが、この世のアニマルでは無い。体は人間の様だ。山海経にでも出そうだ。テーマパークのキャラクター着ぐるみにも見えるだろう。ニットを着けている間、私の意識は、操り人形の中にある。此の精巧に出来た操り人形メカの瞳が何故か、フランス俳優ジャン・ユーグ・アングラ―ドに似ている事に私は気付いた。
  サンチャゴ博士は、このテクノロジーのイノベーターの一人で、アジア最高の腕だとも言われる。しかし、名のある研究機関に所属することを嫌い、それを避けているため、ルーローハンの店の地下で、自分の好きなようにやっているみたいだ。
  私はニットを持って、シーメンの、宿泊をして居るミュージックホテルに戻った。ホテルのベッドに横たわりながら、ニットをかぶった。私の意識はキバー・プンダーの方へと移動した。つまりキバー・プンダーは私の化身(アバタール)となったのだ。

  その後しばらくイタリアに滞在する事にした。
  イタリアの村は、常に私のベースキャンプの様で在った。



  此処はいい風が吹き、いい大地が在る。
  ひともいい。
  私の本体は、前述のヴィラに居た・・・・・。
  私の意識は、キバー・プンダーというアバタールの中で、(はたから見ると熊のファンタジークリーチャー着ぐるみの様だが)イタリアを旅している。



  やがて、私は思いついたのだ。この技術でスーパーヒーローに為ろう、と。例えば、それは、人間でなくてもいいじゃないか。コスプレが日常化したアジアでは、仮面を被って歩いて居ても、誰も驚かない。ネズミやダックや、キツツキや蝙蝠、半人半獣がストリートを闊歩して居る。チャイナタウンには幾つものパンダ仮面が売られて居る。かつてサイバーと言えばトーキョーの代名詞だったが、現在、必ずしもそうではない。サイバネティックス・ヒューマノイドを製作するグループや企業はスペインやイタリアにも多い。サイバネティックス・ワールド、それはインターネット・コンピューティングを通して、世界中に存在し始めて居るのだ。私は想う、「サイバネティックスは、世界をどれだけエキサイティングにしただろう、又どれだけ世界に貢献しただろう?」と。
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