キバー・プンダー コンフェッションズ

yoshimax

文字の大きさ
12 / 26

10 テン

しおりを挟む
 グロースクリークでの滞在は、主にハイパーネットを介しての調査となった。ハイパーネット上の情報をたどり、Nつまりタイムエンペラーが現在どこを漂流しているのかを突き止めようとしていた。Nは、もう完全に憎しみと怒りのパワーによって自ら崩壊し、玄夢のかなたを彷徨って居るかもしれないのだ。その兆候はあった。Nとタイムエンペラーは完全なる合体をしてしまったのだ。怒れる者の行き着く先なのかもしれなかった・・・・・・・・・・。
 タイムエンペラーシステムは悪い宇宙人が、人間が持つ怒りと憎しみのマイナスパワーを利用し、システム自身の力を増幅し、その悪しき力を持って地球を征服するためにつくりだしたらしい。そういうプログラムになっている。良き宇宙人もまた、このバンクーバーで密かに活動し、タイムエンペラー打倒に向けて動いていると聞く。

 サンチャゴ博士から連絡が入った。ハイパーネットの中継プレースでもあるグロースクリークは、台湾と秘密の回線があった。ここは、リラックスして仕事ができた。近くには台湾出身のカウボーイが居て、彼は白い木造のコロニアル建築のチャイニーズカフェをやっていたが、そこのチョーメンはうまかった。年の頃還暦くらいの台湾出身のカウボーイは、どうやらサンチャゴと知り合いの様子だ。サンチャゴとはサイモンフレイザー大学で同期だったみたいだ。彼は、ボンジョビの『ブレイズ・オブ・グローリー』のCDをかけた。チョーメン、台湾、カウボーイ、ウエスタン映画、カントリー、ロック、コロニアルハウス、青い空、・・・みごとに調和していた。

 サンチャゴの通信が私のPCにハイパースカイプを通して現れた。
「キバー・プンダー、・・・私だ、サンチャゴだ。今は高雄にいる。高雄のルイグービルに拠点を移した。悪い宇宙人に狙られたからだ。私は今、良き宇宙人グループと接触に成功した。われわれは、良き宇宙人がわにいる。悪しき宇宙人らは、タイムエンペラーを使って、独裁を企んでいる。恐怖政治だ。やつらはかなり手ごわい。しかし、システムは大きくサイバースペースに依存していると分かった。つまり、サイバースペースの内部に入り込んで、やつらを一網打尽にできる、そういうことだ。」
 サンチャゴはそう私に伝えた。簡単に言うが、どうやってサイバースペースに入り込むというのだろう、そして、どうやってそこで対決できると言うのだろう? 映画ならば、いろいろある。はじめて軍事とコンピュータが密接になっていることを告げた映画は、ジョン・バダム監督の『ウォーゲーム』だった。もはや古典とも言われる傑作映画だ。あの映画では、核戦争がどちらの勝利ももたらさない、ということをコンピュータが学ぶことで、われわれは平和共存をすべきなのだ、と観客に伝えていた。凶暴な軍拡は、双方を滅ぼし合うだけだ。人類は何度も間違った。『ターミネーター』では、軍事用につくられた戦争プログラムが、かえって、コンピュータ同士のネットワークとなり、地上から人類を滅ばそうという選択をするAIが描かれた。それを止めるために、コンピュータのプログラムが書き換えられたロボットが、人類のリーダーを守るのだが、そのロボットは人間との交流によって、人間性を獲得していく。はたして、コンピュータ、AIは人間性を獲得できるのだろうか? そのとき、われわれと、人造人間はともに生きていくことが出来る社会を築けるのか? それが出来る人間もいるだろう、そして、出来ない人間もいるだろう・・・。だが、平和共存が大切だ。コンピュータはどこまで進歩するのだろう。小説では『ニューロマンサー』で、いわゆるサイバーギアをつけてサイバースペースの世界へ人が、ジャンプイン・ジャンプアウトする社会が描かれた。この執筆時代はPCがまだみんなの道具ではなかったので、サイバースペース・ジャンパーは、ひとつの職業として、プロだけがジャンピングインをなしえるものとして書かれた。その後、この小説の延長線上に『JM』があった。JMの主人公ジョニーもまた、ある意味、サイバースペースを渡り歩くプロで、そのなかで、危険な仕事をしていた。長すぎるサイバースペース体験は心身に悪影響であり、その悪影響を考えながら、サイバースペースの世界に入り込まねばならない。それほど入るのは自由ではない。そういう未来社会をロンゴ監督がある意味アーティスティックに描いていた。そして、『マトリックス』の登場だった。これは、サイバースペース映画の決定版のひとつと言える。これは、世界観が驚愕だった。つまり、すでに、この世界はマシンとコンピュータに完全に支配されていて、人々は眠らされて、脳にただ、コンピュータが作った情報としてのサイバースペースを与えられているだけの世界なんだ、という・・・。つまり、すでにこの世界がサイバースペースなのだ。なぜ、気付かない? そんな映画だ。 ほかに、コンピュータワールドに入り込む映画作品は、『TRON』ワールドがある。これは、壮大なコンピュータの回路の中に、人間が意識として入り込み、回路内部の争いで、やはり善と悪とが存在し、主人公はコンピュータ回路内部の悪と戦い、そして、回路の中のプログラムワールドに平和をもたらし、帰還する、という物語だった。 コンピュータのつくりだす壮大な世界にも、人間の持つ善悪が反映される。それは、支配と自由の概念と繋がる。それはコンピュータの世界を描いた文学だ。

 サンチャゴは言う、「こういうことだ。キバープンダー、・・・・つまり、タイムエンペラーをネットから誘い出し、サイバースペースの中で、つまり、メタバースの中で、君がタイムエンペラーと対決すればいいのだ。私がそのための世界を構築する。そこでは、君は『バーガス』というアバターになる。しばらくプログラム時間をくれ。その間、君はバンクーバー島でゆっくり文化を楽しんでくれ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【アラウコの叫び 】第4巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日21:40投稿】 4巻は、序盤は「推理もの」、中盤から後半は「ロマンスもの」が展開されます。 ・サンティアゴで起こる「事件」と「裁き」 ・「アンデスの悪魔」として悪名を轟かせた狂気の老人カルバハルの存在感 ・ニドス家の兄妹の「行く末」 ・イネスとバルディビアとの「出逢い」と「結末」 大きく分けてこの様な展開になってます。 ------------------- 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

【アラウコの叫び 】第3巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎週月曜07:20投稿】 3巻からは戦争編になります。 戦物語に関心のある方は、ここから読み始めるのも良いかもしれません。 ※1、2巻は序章的な物語、伝承、風土や生活等事を扱っています。 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

処理中です...