働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

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第八十三話 エルフ皇国【其の二】

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「レイラ! 悪さはやめろ……まだ眠いんだ」

 身体を揺さぶり悪ふざけをする…… 無意識のうちにその手を振り払う。

「キャッ!」

 なんだか可愛い声を出しやがってと、意識が次第にはっきりとしてくる。ベッドの前で何故か、侍女が恥ずかしそうに俺を見ていた。

「おっちゃん様、お目覚めですね。お召し物はここに置いときますので、お着替えを済ませたら、もう一度呼んで下さい」

 そういえば昨夜、お昼過ぎに起こして貰うように頼んだような……。結構酒が入っていたので、あやふやな記憶しか残っていない。

 昨日を振り返ると怒濤の一日だったと自画自賛出来る。衛兵にボコボコに蹴られ、殴られ、牢屋に入れられる。起きたら前がまともに見えないほど、身体にダメージが残る。そこにエルフ皇国の皇妃が来て、俺の怪我を魔法で治す。テトラは皇妃の娘で皇女でした。馬車に乗って王宮にいきました。そこで皇妃と皇女と一緒にご飯を食べたら、皇妃は大食いでした。

 誰も信じないわ――

 新しい服に着替えた俺は呼び鈴をチリンチリンと鳴らして侍女を呼んだ。俺はエルゾナ皇妃のいる部屋に通された。

「昨晩はよく眠れましたか?」

 エルゾナ皇妃は、まるで天使のようにふわりと微笑んだ。

「旅の疲れを十分に癒せた」

「ここに呼んだのは、ほかでもありませんテトラの件です。彼女は貴方が全財産を使い助けてくれたそうですね、けれど……その恩にお返しするすべがないのです……」

 (あの胸の大きさといい、子持ちとは思えない肌つやと若さ……エルフという種族は神が作りし化け物だな) 

「気にするな! これは俺の気まぐれで始めたことだ。それに恩を返すならテトラからでないと意味がない」

「厳しいお言葉ですね……しかし私にも立場があります」

 苦渋の表情を作り、上目遣いで俺を見た。たまに見せてくる、テトラの表情にそっくりだった。

「それは困ったな……身体を治したことで手打ちだろ」

「そうだわ! あれにしましょう!!」

 両手を打ち合わせ、彼女は侍女を連れて席を立った。しばらくして彼女は俺に小さな小瓶と銀のプレートを手渡した。

「通行証とエルフの秘薬エリクサーです。死人以外は、すべての万病、身体欠損など治癒回復が出来るクスリです」

「対価でいえば貰いすぎだが、皇妃様が納得するならそれでいい」

 瓶の中に詰められた青い液体を見ながら

「エルフの涙が原料とか」

 軽い冗談を飛ばすと、エルゾナ皇妃の目が突然左右に動き出す。

「そ、そ、そんな訳、あ、ありませんですわ 」

 俺の言葉に完全に動揺していた。

そりゃあ・・・・そうですよね・・・・・・

 俺は危うくエルフ皇国の土になるところだった……。

「帰路についてお願……」

 突然バタンと大きな扉を開く音と共に、テトラが飛び込んできた。

「お母様! おっちゃんが起きてきたら私にも知らせてといったでしょ」

「テトラよ、はしたない! 話の途中で口を挟むなど」

 皇妃の叱咤を何処吹く風で受け流す……。

「帰路の件と、俺の刀は鈍ってはいないが、ドワーフ国産なので、もし良い鍛冶師がいたら研ぎ直して欲しい」

「それはお安い御用です。まだ貴方様の道具はこちらで預かっていますので、至急鍛冶師にやらせて明日には手渡せると思います」

「それは助かった、すぐに出立できる」

  俺ががそう言った途端、テトラは血相を変えた。

「何言ってるの! おっちゃんはしばらくここに滞在するのだから」

 一悶着合ったが、滞在期間を四日とすることで彼女と折り合いがついた。
 
                           *      *      *

 豪華な馬車に揺られながら、エルフ皇国の町並みを楽しむ。煉瓦のような青白い石で規則正しく積まれている建物、そんな青い世界に心が奪われそうになる。百年前にはここが森林だったとは到底思えなかった……。

「素晴らしい街並みだな!」

「これをおっちゃんに見せたかったの、すぐに帰るというなんて信じられないわ」

 頬をぷくっと膨らませ怒った顔を作った。

「まず最初に、この革ジャンを仕立て直す店に行きたい」

 もう何年も着古し、継ぎ接ぎをしてよれよれになった革ジャンを見せる。

「新しいのを買った方がいいんじゃない?」

「此奴は、最初から俺の命を守ってくれた……だからもう少し付き合いたい」

 わざとらしく革ジャンをさすった。

「なんだか妬けるわね」

 テトラはクスクス笑う。

「他に行きたい店はないの?」

「家で待ってる雛鳥の下着は欲しい」

「それは心配ないわ。お姉様たちに、衣服は頼まれているもの!」

 いつのまにお土産を頼んでいたのやら……。

「そうだな、靴を新調したい。丈夫で軽い靴がエルフの工業力なら人間より良い物があるだろし、この靴もたぶん良い物だが流石に限界が来てる」

「おっちゃんの靴、よく見ると凄く精巧よね!」

「自慢出来る故郷の一品だ」

 馬車は皇国の中心街に着き馬車から降りた。俺たちの後ろには、普段着を着た衛兵がぞろぞろと付いて来る。

 俺の買い物はすぐ終わる。服の仕立てはエルゾナ皇妃の名前を使わせて貰い、当日には仕上がるといういう親切なお言葉まで頂いた。靴もデザインにはこだわらないので、無骨な黒いブーツを一足選んだ。何年ぶりかに新しい靴を履いた俺は、かなりテンションが上がったのは彼女には秘密だ。

 テトラの服選びは意外と難航した。サイズではなくデザインでだ……俺から見ればエルフの服は普通に見えたが、もしも考え無しに服を選べば、人間の国ではかなり浮いてしまう。いやはや、悲しき文明の差を痛感させられた。

「次はお食事に行きましょう」

「今回は、腹の音が鳴らなかったな」

 彼女は真っ赤な顔をしながら、俺の頭をポカポカと殴った。 

 たわいもない会話をしながら、街をぶらぶら歩く。舗装された道が当たり前のように思えてきて一人苦笑する。色が統一された建物の中で、彼女が選んだ料理店は意外な店だった。

 テーブルの上には、大皿に円形をして放射状に切り分けられた食べ物が乗せられていた。

 まさしくピザである――

「んふぅ~~、このカリカリの食感と、チーズが蕩けて美味しいのよね」

 サクサクと音を立てながら、リスのように口いっぱいにピザを頬張って食べる。

「久しぶりにクリスピーピザを食べたな」

「タリアの町になかったのに、何故、知ってるのよ?」

「故郷にはあったからな、イタリアンはないのか?」

「イタリアンって何よ!?」

「薄いピザ生地をクリスピー、太くてふんわりやわらかなピザ生地をイタリアンと、生地を二種類に分けよんでいたぞ。イタリアンは外はかりっと中はもっちりして腹持ちが良いんだな……」

「どうやって作るのか教えなさいよ!」

 (エルフはみんなこういうやつなのか)

「テトラ皇女様、お味はどうでしたでしょうか?」

 店の奥から、人の良さそうな料理長が現れた。

「いつも通り美味しかったわ、料理長はこのピザ生地の他に、外はカリ、中はモチッとした食感の生地を作ったことはある?」

「そんなピザは、聞いたこともありませんぞ」

「俺もど素人だから話半分で聞いて欲しい。生地をもう少し太くして、イタリアンの生地を焼くときは、釜の温度が倍ぐらい高い温度で急激に焼く。すると高温で焼けた生地の外側はカリッとし、中は火は通っているがモチモチの食感を残す」

「後は、この店の生地は棒で薄く延ばしているように思う。故郷のパイ生地は叩きながら延ばし生地から水分が抜けるとか、他には生地を手で回しながら丸く遠心力を使って広げていく職人も居たような……」

 その説明を聞いた店主は感嘆の声を上げる。

「ふはーーーー革命ですぞ!! 焼き方はもちろん、生地から水分を抜く発想は驚きです」

 エルフ皇国に激震が起こるのはおっちゃんがこの地を去った後のこと……





 ※ ピザという名称は異世界では呼び名が違いますが、名称のやり取りを省略して、ピザにしております。
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