働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

文字の大きさ
88 / 229

第八十九話 帰郷

しおりを挟む
 エルフ皇国の城門を抜けて、しばらくしてから馬車が止まる。同乗していた数人のエルフが馬車から降りた。

「ここから、ラミアの国に転移します」

 転移魔法で馬車ごと運べるらしく、俺は馬車から降りなくても大丈夫と言われる。しかし、馬車の中にハエがいると怖いので、俺も適当な理屈をつけ彼女たちと一緒に馬車から降りると願い出た。

「安全上無理です」

 素っ気なく断られてしまう。転移後、ハエ人間になったら誰が責任を取ってくれるのやら……。そう思った矢先、俺の頭の上には小さなハエが止まっていた。

 俺は彼女らと共に緑の光に包まれ、転移の渦に引き込まれる。以前は馬車が往来している道端の一角が転移先だったが、今回は、地面が芝生で敷き詰められた屋敷であった。

 馬車から降りようとすると、刀を腰に刺した屈強なラミアの兵隊が、俺たちを取り囲んでいた。

「そいつは妾の玩具おもちゃじゃ! そんなに邪険に扱うではない!」

 知ったる声を聞いて、俺は馬車から勢いよく飛び降りた。

「よっ! 久しぶりだな」

 蛇姫が俺たちを迎えに来てくれていた。

「話しは聞いているが、妾は汝の道具ではないぞ」

 ターニャは、口角を上げて俺を睨みつける。

「悪いとは思っている。ただもうこれ以上、馬車の旅は俺の少ない命をさら削ってしまう。そうなるとターニャにとっても大きな損失だとは思わないか」

「相変わらず口の達者な猿じゃ」

 そう言って溜息を一つついた。  

「そんな不機嫌な顔をするなよ、わざわざエルフ皇国までいって土産を買ってきたのに」

「そちにしては中々、気が利くではないか」

 俺は綺麗な紙に包装された箱を手渡す。ターニャは嬉しそうな顔をして、その場で包装紙をビリビリと破り捨て、中身を確認した。
 
 ――――『銘菓エルフのたまご』――――

 俺の頭に電撃が落とされた。(だいぶ強め)

「馬鹿者ッッ!! こんなものは何処でも売っておるわ!」

 思った以上に『エルフの玉子』がメジャーなお菓子で安心した。
 
「わりい、これを渡すのも忘れていたわ」

 そう言って、俺はポケットから小さな包み紙を彼女に手渡す。

 その中身を確認したターニャの頬が少し赤くなる。青みがかった尻尾がぱたぱたと左右に揺れていた……。

「何をしておる! 早く妾の髪につけるのじゃ」

 艶のある彼女の前髪に、赤い宝石がついたエルフ細工の髪留めをつけてあげた。 

「美しい髪に映えて、凄く似合っているぞ」

「あ、当たり前なのじゃ」

 俺は理不尽にも、頭から電撃を浴びた。(かなり弱め)

 何はともあれ、俺の転移は無事に済んだので、次の転移に備える準備に入る。準備といっても、ターニャが転移魔法を唱えるだけなのだが……。

「済まないが、面倒を掛ける」

 ターニャに頭を下げた。

「有無」

 その一言で話は片付く。こういうところが彼女の魅力の一つだと思えた。

 新しい転移の扉が開き、俺たちは馬車と共に緑の光に包まれる。光が消え、勝手知ったる森の入り口に戻ってきた。久しぶりの見慣れた風景に安堵する。

 ようやく長い旅の終わりを迎える――

 同行してきたエルフも、大木に妖しげな魔法陣を書き込んでいる。この魔法陣が平和利用されますようにと祈る。

「今度来るときは、講談の全国ツアーを用意しておくぞ」

 ターニャは俺を見ながら意地悪そうに笑った。

「それは勘弁してくれ!」

 彼女は俺を大木裏の転移門まで送り届け、そのままトンボ返りで国に帰って行った。馬車から荷を下ろすと意外に荷物が多かった。ソリにぎりぎりで積めるか思案していたら、一人のエルフが声を掛けてきた。

「おっちゃん様、私も人間国に用がありますので、ソリを一台引きます」

「それは助かるが、このままでは何かと目立つかと」

 そう言うと、彼女はフードの付いた上着を羽織った。彼女の行き先はギルドだったので、先にギルドを案内してから帰宅することに決まった。

 ギルドへ向かう道すがら、エルフとの会話は全くはずまなかった。

「人間国に来た用件とは何ですか?」

「任務なので、教えられない」

 素っ気なく断わられた。

「お姉さんのお名前は?」

「任務なので、教えられない!」

「お姉さんの年はいくつ?」

「任務だから、教えられない!!」

「お姉さんの好きなタイプの男性は?」

「任務だから、教えられない!!!」

 彼女の顔色が変わったのを見て、慌てて質問を止めた。

 エルフ族はドワーフと仲が悪いとは聞いていたが、人に対してはそれ以下の扱いだと感じた。そう言えば、エルゾナ皇妃も最初に会ったとき、謝罪にしては、心がこもっていなかったのを思い出す。皇妃の立場だから定型文のような挨拶に終わったのではなく、人に対して感情が出しきれなかったのか……今更、振り返っても詮無きことだ。ただ、女エルフの名前ぐらいは知りたかった。

 とりあえず、俺は彼女をギルドまで案内し、ようやく我が家に帰ることが出来た。

 沢山の荷物を抱えていたので、呼び鈴を鳴らそうとしたが気が変わった。こっそり入って、ちやほやされたくなった。部屋には人の気配がする。そーっと玄関の扉を開き、荷物の重さでふらつきながらリビングへと近づいた。

 部屋へはいるなり

「帰ってきたぞ!!」

 大声を出してサプライズ登場!! レイラが呆然と俺を見てリビングに立ちつくす。

「おっちゃん!! テレサが王都で大怪我を負った」

 俺は抱えた荷物を落としそうになった――――
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...