働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

文字の大きさ
157 / 229

第百五十八話 亡国の姫君【其の一】

しおりを挟む
 山を下りてから我が家に辿り着いたのは、黄昏時のことであった。門扉の前で子供たち数人が集まっているのが見え隠れする。

「遅いではないか」

 薄暗がりの向こうから聞き慣れた声がする。じっと目を凝らすと、立っていたのは子供ではなく、フードをかぶり顎髭を蓄えたドワーフたちだった。その中の一人だけ、身長が百八十センチを優に超えるフードを深くかぶった人物が混じっていた。

「なっ!? ノエルがなんでいるんだよ」

 俺は呆気に取られて、ぽかんと口を開く。ノエルが俺に会いたくてここに来ていないこと位はすぐに理解出来た……。しかもよく見ると、ドワーフの一人は密売組織のコージーだった。

「仕事の依頼じゃな」

 どうせ碌でもない仕事だと思ったが、取りあえず彼ら四人を招き入れることにした。

「ここで立ち話は出来そうもないから、家に入ってくれ。家は土足禁止だからここで靴を脱いでからだ」

 俺は招かざる四人を居間まで案内し、テーブルに座らせる。そうしてお茶の用意を済ませテーブルに着くと、彼らの視線が俺に集まった。

「俺としては何も聞かずに帰って貰いたいが、そうもいかないだろう……取りあえず話しだけは、ノエルに免じて聞いてやる!」

「まあ、そうなるよな」

 コージーが不敵に笑う。

「すまんの……おっちゃん。この依頼は、ドワーフ国からの依頼だと思って貰いたい」

 ノエルは申し訳なさそうな顔をして謝罪した。

「コージーがいるので、きな臭い話しに聞こえるな」


「フハハハ、依頼というのはこの方を、ここで暫くの間預かって欲しいのよ」

 コージーはそう言って、フードを深く被ったドワーフの一人・・を指差した。そのドワーフはフードをおもむろにとると、オレは信じられないというように目を見開いた。

「リザードマンじゃねえか!?」

 ドラゴニア王国で出会った、メイドのアリッサさんと同じ顔のリザードマンがそこにいた。いや、彼女より若干小さい女性だということは分別がついた。

「リザードマンを知っているなら話が早い。このお方はその国の王女スカーレット様だ。リザードマンの国はイグザス王が国を治めることになったのだが、今現在は、リザードマンの国は、隣国によって攻められて、ほぼ敗戦状態に陥っている」

 コージーの言葉に、苦い表情を浮かべてしまう。

「俺が聞いたところによると、国を滅ぼすまで戦争が大きくなれば、魔王が介入すると耳にしたが」

「よく知っているな。隣国もリザードマンが支配している国なので、魔王様からみれば内戦の一部と捉えている」

「リザードマンとドワーフは戦争をしていたので、お前たちが王女を守っている理由がサッパリ分からないな」

「簡単に言うと亡命だ……イグザス王とキャゼルヌ女王との間に密約があり、彼女を受け入れることになったのだ」

 俺の言葉に、すかさずコージーがそう返した。

「じゃあ、そのままドワーフ国で預かれば済む話しだぜ。わざわざ、人間国に出張ってこなくても良いはずだ」

「そこなのよ……うちの国も一枚岩ではない。彼女にもしもの事があれば、国が半分に別れる事態がある訳。そこで暗殺者のこないここに白羽の矢が立った」

 彼は呆れたように口にする。

「確かに人間国にドワーフの集団やリザードマンが簡単に来られるとは思わないが、こうやってお前たちが来ている矛盾は理解出来るよな」

「だから、俺が運び屋になって、ここに来たのよ。人間国に王女が匿われているのを知っている者は殆ど居ない」

 コージーはまじまじと俺を見つめながら、そう言った。

「今の話しだと俺がこの仕事を受ける事を前提で進めているが、俺はこの仕事を受けたつもりはないし、彼女を守れる自信はないぞ!」

「まあ、そうかもしれん……ただドワーフ国で王女を預かるよりは数倍、があるのも分かって欲しい。この件は二ヶ月で片がつくのでその間、彼女を預かってくれ」

 俺は大きな溜息を一つついて、断ろうとした……。

「おっちゃん、悪いが頼む……」

 ノエルから鶴の一声が飛ぶ。こうやってずるずると悪の繫がりは切れなくなり、太い関係になると実感した。

「で、依頼料はいくら出すんだ?」

「一日につき人間国の金貨一枚だ。彼女を二月以内に迎えに来たとしても二ヶ月分は払わせて貰う」

 国家の依頼にしては、あまりにも安すぎると感じたが、自分が受け取る金額としては破格な依頼料なので、価格を交渉することはしなかった。

「この依頼を受けると言いたいが……失敗したときは俺に責任を押しつけられるのは勘弁して欲しい! これは無責任と思われるが絶対に譲れない条件だ」

「ああ、承知した」

 コージーはこの条件をあっさりと飲んだ。

「あと、彼女の生活費だが、俺たちの同居人は高ランクの冒険者と住んでいるので、食費は金貨二十枚は必要だ。パンで良ければ金貨一枚で彼女には別の食事を用意する事は可能だ」

「おっちゃん! それは少々ぼりすぎではないか」

 コージーが、若干引いたようにそう口にする。

「俺の依頼料を鑑みればそう思うかもな……しかし上級冒険者の稼ぎは桁違いだ。金貨一枚で雇える奴なんて、人間国をどう探したとして一人も居ないぞ」

 彼は暫く考えた末、答えを出した。

「それでは、契約成立だな」

 コージーは俺に両手を差し出す。

「いや、まだ重大な問題が残っている。彼女はこの姿のままだと、ここで生活はできんよ。リザードマンなんてこの国では一人もいない。どう考えても厄介ごとの二つや三つは想像出来ちまう。それを回避出来るのが、人間の姿に見せかけられる偽装魔法だ。俺の知り合いに魔法に長けた人物がいるので依頼させてもらう。その魔法の代価は一月で金貨二十枚は支払わされる」

「おいおい、それでは依頼料より経費の方が高くなるぞ」

「亡国の姫君の警護を、金貨一枚で依頼する方がおかしいのよ」

 俺は軽く毒を吐きかけた……。

「ちげえねぇ。それではこの依頼を引き受けて貰えると言うことだな」

 今度は俺からコージーに右手を差し出したとき、もう一悶着起こった。

「姫様に偽装魔法を掛けられるなら、私にも掛けて欲しい!!」

 もう一人・・・・のフードをかぶった大男が声を荒げて、椅子から立ち上がる。その大男の尻から千切れんばかりに、激しく尾を振り乱していた。

「悪いがお前を信用して行動することは不可能だ。俺は家族を危険にさらすことは出来ない。もし逆の立場だとしてもそう言えるのか? それに王女を守ることが出来るのなら、この依頼は俺に来ないだろう。付き人と一緒に俺が預かるという話しが出なかった事自体、お前の立場は信用されていない、もしくはイレギュラーな存在なんだろうよ」

「ぐぬぬ……」

「グルガムよ静かにしなさい。貴方がここまで私に付き従ってくれたことで十分の働きです。二ヶ月後にまた合いましょう」

 初めて王女が声を出すとグルガムは頭を下げ、静かに椅子に座り直した。

 俺は仕切り直しとばかりに、コージーと握手を仕直した。

「では、前払いの半金と、魔法代、食費をまとめて貰おうか」

「悪いが人間国の貨幣がないので、この宝石をまずは換金したい」

 そう言うと、コージーは懐から小袋を取り出し、テーブルの上に宝石を転がした。

「ギルドで換金してやるから、明日ここにもう一度来てくれ」

 俺は話しは済んだとばかりに、彼らを玄関まで追い出すように案内した。しかし一人だけ中々靴を履かずに、家から出ない男が居た――

「ノエルも早く帰れよ」

「何言っているのか聞こえないのじゃが……」

 自分の心中を見透かされているのを承知でノエルはすっとぼけた。

「風呂も丁度暖まった頃だろうし、汗を流した後、二人で飲みに行くとするか」

 のんべえ(酒飲み)が、笑って口にする。

「そうこなくてはのう!」

 ノエルはパチンと指を大きく鳴らして、鼻歌を歌いながら風呂場に向かった――
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...