働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

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第百六十三話 亡国の姫君【其の六】

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 スカーレットの衣服を買いそろえたので、我が家に戻ることにした。薬屋から帰る道すがら、相変わらず彼女からは何も喋りかけてこないので、こちらから何か話そうかと話題を探る。しかし彼女がリザードマン国の王女で、大食漢というぐらいの情報しか持っていないので、どう話せばいいか考えこんでいるうちに我が家に着いていた。

 部屋に入るや否や、スカーレットは部屋に閉じこもってしまう。まだ彼女の警護を一日しか終えていないというのに、疲れがどドッと吹き出した。このまま彼女を家に押し込めて、毎日金貨一枚稼げる美味しい仕事だと、割り切ることも出来そうになかった。さしあたって今夜は雛鳥たちが帰ってくるので、彼女の歓迎会の準備をすることに専念した。

 冷蔵庫の中にはまだ沢山の食材が残っているので、買い物に行かずにすんだ。とりあえず大量の揚げ物と、サラダ、焼き肉、煮物、それにデザートのプリンを作ることにする。スカーレットもよく食べるので、料理が足りないということだけは避けようと、気合いを入れて台所で汗を流した。

 日が少し傾いた頃、焼き肉以外の料理がテーブルに並び一仕事を終える。スカーレットの姿を見るのは、トイレを使うときぐらいで、俺とすれ違っても言葉を交わすことは一度もない。

 お風呂に新しい水を入れているときに、部屋から大きな声が聞こえる。

「おおーー、すげー旨そうなご馳走だぜ」

 俺は慌てて台所に戻り、料理を死守しようと走った。

「つまみ食いするなよ!!」

「んん……」

 食物で頬を大きく膨らませた、レイラが首を縦に振った。

「これ以上食べたら、お前には焼き肉は

 そう言って、これ以上のつまみ食いを牽制した。
 
「おっちゃんよー、今日は何の祝い事なんだ?」

 レイラが不思議そうに尋ねる。

「客人を二ヶ月ばかり預かることになったので、その歓迎会だ」

「おおーー、どんな奴なんだ」

「シャイな女性なんで、部屋から出てこんよ」

 なんとなく事情を察したレイラは「ふーん」と言ったきり、それ以上は質問をしてくることはなかった。

 暫くレイラと居間で談笑しながら、お風呂が沸くのを待つ。その間、ルリとテレサも帰宅し、居間が賑やかになる。俺は彼女たちにスカーレットの立場と、ここに来た経緯を説明した。その話が終わり、お風呂も沸いた頃合いになったので、一番風呂をスカーレットに勧める事にした。

「風呂の準備が出来たので、入ってくれ」

 スカーレットは何も言わずに、着替えを持ってのそりと部屋から出てきたので風呂場まで案内する。そうして、風呂の中に置いてある赤いラベルのシャンプーだけは使ってはいけないと、注意を促した。

「人間のくせに、こんな上等のシャンプーを使っているなんて笑ってしまいますわ」

「これは人間様用ではなく、ラミア国の王女の取り置きなんだよ」

「ふふふ、使われたくないなら、もう少しまともな嘘をついて頂戴」

 俺を見下すように笑った。

「そうだといいんだが……俺が電撃を浴びせさせられるので、他のシャンプーと石鹸を使ってくれ。どちらも悪い物ではないだろう」

「ええ……」

 彼女を納得させたかは分からなかったが、俺はタオルを渡して風呂場から離れた……

            *      *      *

 テーブルの上には、焼き肉、唐揚げ、天ぷら、煮物、サラダ、の山々と酒瓶が所押せましと並ぶ。雛鳥たちの「早く挨拶をしろ」というプレッシャーが俺に突き刺さる。

 俺は席から立ち上がり、ゴホンとわざと咳払いを一つしてからスカーレットを紹介する。

「これから二ヶ月の間、俺が警護するリザードマンのスカーレットさんだ。ここに来た経緯はお前たちにはもう伝えたから知っていると思うが、安全上魔法でこの姿になっている。もし彼女が狙われることがあったら守ってくれ」

「冒険者をやっているレイラだよろしく」

「白薔薇騎士団のテレサです、以後お見知りおきを願います」

「ぼ、冒険者のルリです」

 三人三様の挨拶を、順番に済ませた。

「ふん……」

 スカーレットは、面白くもなさそうに鼻を鳴らしただけで、自分の挨拶はしなかった。

 俺の背中に冷たい汗が走ったが、三人の雛鳥たちはそんな失礼な彼女の態度を気にもとめず、乾杯の音頭を取った。

  「「「「乾杯ーーーーーーい!」」」」

 コップを天井へと掲げ、乾杯の合図を楽しげに口にする。

 四人の雛鳥たちが、俺の用意した手料理に舌鼓を打つ。思った以上にテーブルから、料理が消えていくのを見て、多めに作って良かったと安堵する。

  食事中レイラとテレサが気を遣って、スカーレットに話しかけるが、「ああ」「うん」「そうだな」「・・・」と、一言でしか言葉を返さないので会話が成立しない。彼女たちは声をかけるのは諦めて、各々で食事を楽しむことに切り替え始めた。俺もこうなることは予想できたが、どうフォローするか全く見当がつかなかったので、ただただ、いつものように雛鳥たちの会話を聞きながら、酒を浴びるように飲んで宴を楽しむことにした。

「プリンは、最後といつもいっているだろう」

 俺がルリに文句を言うと

「こんなに沢山のプリンが、冷蔵庫に閉じ込められているのは可愛そう」

 ルリはそう言い返しながら、幾つものプリンをお盆にせて運んできた。

「はい、お裾分け」

 スカーレットに。プリンを載せた小皿を手渡した。

「ありがとう……」

 彼女は受け取ったプリンを見ながら、指先でぷるると震えるプリンを何度もつっついた。

「その行為は正解! プリンが喜んでいる」

 ルリがさっぱり意味がわからない、名言? を吐く。

「んふぅ~~~、ナニコレ!?」

 彼女はプリンを口に入れ、おもわず感嘆の声を上げる。

「プリンというデザートだな」

 俺がそう言うと、スカーレットは今日一番可愛い笑顔をみんなに見せた

「プリン様のお力」

 ドヤ顔で俺に向かってルリがニヤリと笑った。

 俺が用意したんですが……

 スカーレットがプリンを気に入ったところで、彼女との会話が弾むことはなかったが、テーブルの上の料理は、雛鳥の腹に粗方収まった。ルリとスカーレット以外は、お酒を飲んで出来上がっており、スカーレットが先に部屋に戻っていったことはうっすらと分かった。

 「ひっく……悪い子じゃないんで、よろひくたのみゅうよ」

「あはは……任せておけ……トカゲとの生活に免疫が出来たかりゃな!」

「うははは、それ受ける!!」

 レイラがはしゃぎ声を上げる。

「まかせて」

 ルリは胸をどんと叩いて口にする。

 俺は頼もしい雛鳥たちをねぎらうために、台所から乾き物を用意し、朝まで飲み明かすことにした。
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