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第百七十一話 亡国の姫君【其の十四】
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ベットリと血がついた薙刀の刃を井戸の水で洗い流す。いつもなら血の臭いは鉄臭く感じるのだが、リザードマンの血の臭いは、生臭かった。濡れた刀身を布で綺麗に拭き取ると、小さな刃こぼれが幾つも見つかった。
泥で汚れた防具を玄関に脱ぎ捨て、居間に入るとテレサが家に帰ってきていた。俺は彼女に、家の近くで襲われた経緯を話す。
「おい、それは本当なのか!?」
「ああ、なんとか全員を片づけることは出来たがな。刀の修理がしたいので、武器屋に行ってくるのわ。だから風呂の炊き出しとスカーレットの警護をして欲しい。暴漢の拠点も潰したので、襲ってくることはまずないとは思うが、一応注意して留守を頼む」
「了解した」
テレサは一つ返事で、快く引き受けてくれる。
ギルドの近くの武器屋まで足を運ぶ。ギルドで刀を洗ってから、武器屋に寄った方が効率が良かったと、二度手間になったことを後悔する。そのときの自分は、店に残した彼女を、我が家まで無事に連れ帰ることで頭が一杯になっていた。いつもはここで血のついた刀の汚れを落としてから、帰宅していたのをすっかり忘れていた……。
冒険者御用達の店舗が並ぶ中、馴染みの武器屋に辿り着く。店の扉を開くとギギギと音が鳴り、ドアの立て付けの悪さが気になった。
「親父さん、すまないが薙刀の手入れをお願いしたい」
カウンターに座っている、店主に薙刀を手渡した。
「結構、ぞんざいに扱っておるのう。良い刀が泣いておるわ!」
刀身を確認した親父に、愚痴を言われる。
「はは面目ない……すぐに出来るか?」
頭を掻きながら、とぼけた顔で詫びをいれた。
「店番をしてくれるならいけるぞ。無理なら明日の朝までには、仕上げといてやる」
「飯の用意もあるし、明日、引き取らせて貰う」
そう言って、代金を支払い店から出た。このまま真っ直ぐに我が家に帰ろうと思ったが、市場に寄ることにする。食材を買って料理を作るのが面倒くさくなり、出来合い物を大量に買いこんで持ち帰ることにした。
「ただいま、今戻ったぞ」
返事のないのを寂しく思いつつ靴を脱いだ……。そのまま荷物を台所まで運び、出来合い物を大皿に移し替える。食卓に酒と料理を並べながら、今日は朝まで飲み明かそうと決めた。
「なんだ……今日はおっちゃんの料理が無いのか」
明らかに失望した声で、テレサが声を掛けてくる。
「その代わりお前たちの大好きな、タバサさんの串焼きを、多めに買ってきたので許してくれ」
「タバサさんが焼く肉は旨いから大歓迎だ。もう二人とも風呂には入ったから、おっちゃんも早く身体を流してくるといい」
一番風呂を年長者に譲る、そんな雛鳥は我が家には居ないようだ。
「今日はゆっくり風呂に浸かりたいので、先に食べてて良いぞ。ただし、俺の分は残しておいてくれ」
彼女は俺を見ながら、不満そうな顔をした。いやいやこうでも言わないと、タバサさんの串焼きは残っていないだろうと、喉まで出掛かったが、言うのを止めた。
あばばばばばばば……電気が身体の筋肉がぴくぴくと動き、腰の痛みが軽くなる気がする。ピリピリとした刺激を堪能した後、泡風呂に切り替えた。浴槽の壁から泡が吹き出し、大量の気泡が肌にあたって破裂する。身体がブルブルと震え、疲れが取れていく。
今日は本当にタフな一日だった――いつまで冒険者を続けられるのかと、不安で心が押し潰されそうになり、俺は湯船の下に頭を沈めた……。
* * *
冷えた心も、酒を飲めば全て忘れられる……。串焼きを頰張りながら、お酒が進む。ふと、スカーレットの顔を覗くと顔色が優れなかった。それはそうだ、暴漢に襲われて、血を流して人が死ぬところを見ていれば、食が進むはずはないだろう。
「無理して食べる必要はないぞ」
そう言って、彼女を労う。
「あの……そうではないのです。毎日お肉が続くので……嫌いではないんですが、私たちは結構魚を食べる習慣があって……」
スカーレットを見ると、恥ずかしそうにうつむいていた。
「ははっ……そういえば、エビフライは出していたが、魚料理はほとんど作らなかったよな。タリアの町の魚は鮮度が悪く、しかも泥臭い種類が多いのよ」
「そうだったんですか」
スカーレットは残念そうな顔になる。
「また、川で釣ってきたらいいではないのか?」
「彼女を連れて、山に潜るのはちょっとな」
そう言って、首をひねった。
「おっちゃん、町の中にも川が流れているぞ」
俺はえっという顔をした。
「あんな汚い川の魚が食べられるか!?」
「別に中心部に流れている川ではなく、綺麗な川なら幾つもあるな」
然も当たり前の常識だというように、俺の知らない情報をさらっと話した。
「ま、マジですか!?」
目から鱗でした――
「明日にでも、近所のガキたちに、食べられる魚が釣れそうな川を教えて貰うとするか」
スカーレットの顔がぱっと明るくなる。ころころと顔色の変わる彼女が、何故だが可愛く見えた。
「私も行こうかな!!」
テレサの何気ない一言に、一瞬だけ声がつまる。
「お、お前は、絶対に付いて来るな!!!!」
俺は彼女の申し出をきっぱりと断った。スカーレットは二人の遣り取りを、不思議そうな顔をしながら、夕食をパクパクと食べていた。
泥で汚れた防具を玄関に脱ぎ捨て、居間に入るとテレサが家に帰ってきていた。俺は彼女に、家の近くで襲われた経緯を話す。
「おい、それは本当なのか!?」
「ああ、なんとか全員を片づけることは出来たがな。刀の修理がしたいので、武器屋に行ってくるのわ。だから風呂の炊き出しとスカーレットの警護をして欲しい。暴漢の拠点も潰したので、襲ってくることはまずないとは思うが、一応注意して留守を頼む」
「了解した」
テレサは一つ返事で、快く引き受けてくれる。
ギルドの近くの武器屋まで足を運ぶ。ギルドで刀を洗ってから、武器屋に寄った方が効率が良かったと、二度手間になったことを後悔する。そのときの自分は、店に残した彼女を、我が家まで無事に連れ帰ることで頭が一杯になっていた。いつもはここで血のついた刀の汚れを落としてから、帰宅していたのをすっかり忘れていた……。
冒険者御用達の店舗が並ぶ中、馴染みの武器屋に辿り着く。店の扉を開くとギギギと音が鳴り、ドアの立て付けの悪さが気になった。
「親父さん、すまないが薙刀の手入れをお願いしたい」
カウンターに座っている、店主に薙刀を手渡した。
「結構、ぞんざいに扱っておるのう。良い刀が泣いておるわ!」
刀身を確認した親父に、愚痴を言われる。
「はは面目ない……すぐに出来るか?」
頭を掻きながら、とぼけた顔で詫びをいれた。
「店番をしてくれるならいけるぞ。無理なら明日の朝までには、仕上げといてやる」
「飯の用意もあるし、明日、引き取らせて貰う」
そう言って、代金を支払い店から出た。このまま真っ直ぐに我が家に帰ろうと思ったが、市場に寄ることにする。食材を買って料理を作るのが面倒くさくなり、出来合い物を大量に買いこんで持ち帰ることにした。
「ただいま、今戻ったぞ」
返事のないのを寂しく思いつつ靴を脱いだ……。そのまま荷物を台所まで運び、出来合い物を大皿に移し替える。食卓に酒と料理を並べながら、今日は朝まで飲み明かそうと決めた。
「なんだ……今日はおっちゃんの料理が無いのか」
明らかに失望した声で、テレサが声を掛けてくる。
「その代わりお前たちの大好きな、タバサさんの串焼きを、多めに買ってきたので許してくれ」
「タバサさんが焼く肉は旨いから大歓迎だ。もう二人とも風呂には入ったから、おっちゃんも早く身体を流してくるといい」
一番風呂を年長者に譲る、そんな雛鳥は我が家には居ないようだ。
「今日はゆっくり風呂に浸かりたいので、先に食べてて良いぞ。ただし、俺の分は残しておいてくれ」
彼女は俺を見ながら、不満そうな顔をした。いやいやこうでも言わないと、タバサさんの串焼きは残っていないだろうと、喉まで出掛かったが、言うのを止めた。
あばばばばばばば……電気が身体の筋肉がぴくぴくと動き、腰の痛みが軽くなる気がする。ピリピリとした刺激を堪能した後、泡風呂に切り替えた。浴槽の壁から泡が吹き出し、大量の気泡が肌にあたって破裂する。身体がブルブルと震え、疲れが取れていく。
今日は本当にタフな一日だった――いつまで冒険者を続けられるのかと、不安で心が押し潰されそうになり、俺は湯船の下に頭を沈めた……。
* * *
冷えた心も、酒を飲めば全て忘れられる……。串焼きを頰張りながら、お酒が進む。ふと、スカーレットの顔を覗くと顔色が優れなかった。それはそうだ、暴漢に襲われて、血を流して人が死ぬところを見ていれば、食が進むはずはないだろう。
「無理して食べる必要はないぞ」
そう言って、彼女を労う。
「あの……そうではないのです。毎日お肉が続くので……嫌いではないんですが、私たちは結構魚を食べる習慣があって……」
スカーレットを見ると、恥ずかしそうにうつむいていた。
「ははっ……そういえば、エビフライは出していたが、魚料理はほとんど作らなかったよな。タリアの町の魚は鮮度が悪く、しかも泥臭い種類が多いのよ」
「そうだったんですか」
スカーレットは残念そうな顔になる。
「また、川で釣ってきたらいいではないのか?」
「彼女を連れて、山に潜るのはちょっとな」
そう言って、首をひねった。
「おっちゃん、町の中にも川が流れているぞ」
俺はえっという顔をした。
「あんな汚い川の魚が食べられるか!?」
「別に中心部に流れている川ではなく、綺麗な川なら幾つもあるな」
然も当たり前の常識だというように、俺の知らない情報をさらっと話した。
「ま、マジですか!?」
目から鱗でした――
「明日にでも、近所のガキたちに、食べられる魚が釣れそうな川を教えて貰うとするか」
スカーレットの顔がぱっと明るくなる。ころころと顔色の変わる彼女が、何故だが可愛く見えた。
「私も行こうかな!!」
テレサの何気ない一言に、一瞬だけ声がつまる。
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翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
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