働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

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第百九十話 王女と甘い時間

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「あなたが来ると、いつも驚かされるわね。どうしたら、竜王様とお付き合い出来たのか、聞きたいわ」

 エルゾナ皇妃が、俺の顔を見て笑う。

「まだ答えを聞いていないんだが」

「ふふふ、それならお安い御用です。それより隣でうずうずしている娘に、早く声を掛けてやって下さい」

 そう言って、エルゾナ皇妃はテトラの背中を押した。

「お久しぶりね、また変な女なんか連れて来ちゃってガッカリだわ」

 顔をへの字に曲げて、怒った顔をした。

「仕事の依頼だから、しょうがないだろう」

 彼女に言い訳などしなくても良いのに、余計なことを口走る。

「クリオネちゃんたちは、元気にしているかしら」

「ああ、そうい……、四人とも五月蠅いぐらい元気にしているぞ」

 ほっとしたように、テトラは自分の胸に手を当て息をついた。

 クリオネが転職をしたことを話そうとしたが、わざわざそのことを彼女に伝えて心配させることはないと思い直す。

「またみんなに、早く会いたい……」

 唇を閉じて寂しそうな遠い目をする。

「一人前になったら遊びに来ればいいさ」

 俺は柄にもなく。優しい声を彼女に掛けた。

「もう二人とも、恋人みたいなんだから」

 母親が・・・娘をからかった。

「そ、そんなんじゃないんだからね」

 テトラは頭から湯気を出しながら、皇妃をぽかぽかと殴っていた。

 何とか無事に会談が終わり、彼女たちと一端別れて俺たちは貴賓室に通された。部屋に入るや否や、パトリシア王女が、頭を床に付ける勢いで謝罪を始めた。

「おっちゃん……すいません。私の我が儘でここまで付き合わせておいて、全部の交渉を貴方にして貰い、沢山の仕事を背負わせてしまいました。この数日で自分が、何も出来ないただの子供だと痛感しました」

「ここまできたら、事が上手く運ぶのを祈るだけだな。まだ魔王の鼻先しか見えてはいないから、これからどう転ぶか分からんよ」

 彼女も漸く自分の立場が徐々に分かってきたと、彼女の猛省ぶりにちょっとだけ溜飲が下がった。

「はい……気を引き締めて……」

 パトリシア王女はうつむき、ぼろぼろと涙を零した。 

「ドラゴニア王国に繋ぎが出来れば、後は魔王に直接会うだけだ。後は王女様の腕次第だな」

 俺は湿った場を明るくしようと、おどけた調子で言った。

 部屋の中で荷物の整理などしながら、時間を潰していると扉を叩いてメイドが入ってくる。

「パトリシア王女様、お食事の用意が出来ましたので、すいませんが私に着いて来て下さい」

「はい」

「おお、もうそんな時間か! なんとか無事に食事を終えたいものだ」

 そう言うと、メイドにじろりと睨まれ、俺はすっかり萎縮してしまう。

 俺とパトリシア王女のテーブルに次々と料理が運ばれてくる。最初は美味しそうと、手を叩いて喜んでいた王女だが、次第に顔色が変わっていく。何故ならテーブルの上には、数人前は優に超える料理が並べられていたからである。

 エルゾナ皇妃の乾杯の合図で、二人を歓迎する晩餐会が始まった。晩餐会といっても、エルフの親子と俺たち計四人だけの小さな食事会だった。

「私、出されたこの料理を食べきる自信がありません」

 パトリシア王女は小刻みに肩を震わせながら、俺に小さな声で囁いた。

「が・ん・ば・れ!!」

 そう言う他、無かった……。

 会食が淡淡と進む中、二人のエルフの前に並べられた料理が、次々と消えていく。

「あの二人のエルフは、化け物ですか!?」

 王女は驚きの余り目をまるくし、二人には聞こえないぐらい小さな声で呟いた。

「見ての通り化け物だな」

 俺は彼女に相槌を打った。

「何か私たちのことを言いましたか?」

 皇妃が食事を止めて話し掛けてくる。俺は慌てて、その言葉を誤魔化すように

「それで明日の予定を教えて欲しい」

 と、エルゾナ皇妃に尋ねた。

「明日のお昼までには、連絡をつけますので、出立は夕方ぐらいで宜しいですか」

「向こうが迎えてくれるなら、その時間で問題ない。よろしく頼む」

 皇妃が時間を決めると、俺はうなずいた。

「テトラちゃんは、それまでおっちゃんたちとデートが出来るわね」

 彼女の顔を見て、にっこりと微笑む。

「お、お母様!?」

 テトラの顔は熟れたトマトのように真っ赤になった。

「せっかくここまで来たから、王女様にこの街でも案内してやってくれ」

 俺がまっすぐテトラに視線を向けてお願いする。

「そこまで言うなら、案内してあげてもいいかしら」

 テトラは鼻をプクッと膨らませ、すまし顔で承知した。

 そんな二人の甘酸っぱいやり取りなど、全く関知せず、パトリシア王女は、ただ出された料理と格闘し続けていた。目に涙を浮かべながら目の前の料理を胃の中に押し込んでいる。さすが一国の王女だと、俺は感心しきりであった。

「あらら、パトリシア王女ったら、泣くぐらい喜んで・・・料理を食べてくれているのね。そんなに美味しいのなら私の分も分けて差し上げます」

 彼女は皇妃から差しだされた皿の上に、山盛りの揚げ物が乗っているのを見た途端、白眼をむき、口から泡が、もとい揚げ物がこぼれ落ちていた――
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