働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

文字の大きさ
194 / 229

第百九十五話 王女、ドラゴニア王国を去る

しおりを挟む
「おっちゃーーーーーーーーーーーん!」

 クラリスの絶叫が寝室に響き渡る。

「ふあ~~っ。もう子供ではないのだから、静かに起きてくれ」

 俺は不愉快そうに、彼女の顔を見上げた。

「ななな、何でそんなに、のんきな顔をしていられるのですか!!」

 抑えきれない怒りを俺にぶつけた。

「全く訳が分からないから、落ち着いて説明してくれ」

「ここで私が寝ていた理由は理解出来ています。ですが……それにかこつけて、私の身体にキスをするなんて最低です!!」

 そう言って、胸を手で隠しながら首筋から、おっぱいに残った赤いあとを俺に見せ付けた。

「はあ~何を勘違いしているのやら……。迷惑を掛けられたのは、こちらの方なんだが」

 俺はおもむろに服をめくり上げ、体中に残ったキスマークを彼女に見せる。

 「ふあっ!! おっちゃんは変態ですか!! 破廉恥ですか! 露出狂ですね!」

 クラリスが矢継ぎ早に、悪態をつく。

「ふわわわわ、なにお二人とも騒いでいるのですか……もう少し寝かせてくれませんか。……あれ? 私はなんで床下で寝ているのかしら」

 床からパトリシア王女がむくりと立ち上がる。

「ベッドから転げ落ちたんだよ」

「そうでしたか……でもおっちゃんの部屋で寝たのはどうして……はは、マリーサさんに二人が運ばれたとき、私もベッドに転がり込んでしまったのを思い出しました」

 そう言って、手をパンと打ち鳴らした。

「どうやら自己解決してくれたみたいで、おっちゃんは嬉しいよ」

「は、話しをそらすな。ふあっ!? パトリシア王女にまで、毒牙をかけるとは言語道断だ」

 クラリスはいきり立っているが、俺は彼女が何を怒っているのか分からないという風に、眉をひそめて首を傾げる。

「クラリスさん、おっちゃんが私に何をしたんですか!?」

 そう言って、パトリシアが俺をまじまじと見た。

「王女様の首筋に沢山のキスマークが付いているんだぞ」

「……。それってクラリスさんが酔っぱらって、私とおっちゃんに口づけをしまくって……」

 彼女はその赤い跡を目を細めながらじっと見つめる――

「ーーーーつ」

 彼女の身体が、みるみる赤く染まって行くのが分かる。

 「おまえが俺たちに付けた痕だな」

「ですよね」

 俺と彼女はお互いを見つめて頷いた。そのとたん、クラリスは白目を向いて、バタリと後ろにひっくり返ってしまった。

 俺はおっぱいを剥き出して、気絶しているクラリスにちらりと目を向けてから、口を開いた。

「悪いがこいつに服を着せてやってくれ」

「はい……また目覚めて、気絶させても可哀想ですしね」

 彼女はベッドの隅でくしゃくしゃになっていた、クラリスの服を拾い上げ着せてあげている。俺はそんな残念美人をジト目で見つめるしかなかった。できればその様子をスマホで一枚撮って、残せればという下衆な妄想はした。

 全員の着替えが終わり、テーブルで一息つく。俺は手に持った呼び鈴をチリリンと鳴らした。すると直ぐに扉を叩いて、アリッサさんが部屋に入ってくる。

「おはようございます。お二人とも早いお目覚めですね」

「奥に転がっている目覚まし時計のお陰だ。そういや、昨日は世話になったな」

 しばらく妙な空気が二人の間に流れた……。

「お構いなく、これもメイドのお仕事です」

 彼女はきっぱりと言い切った。

「これからの予定を聞きたいのだけど、教えてくれるか?」

「はい、ではすぐに朝食をお持ちしますね。実は、まだガルシア様が塔にお戻りになっていませんので、そのままここで待機していて下さい」

 小さくお辞儀をして、部屋から出て行った。

                         *      *       *

「美味しかったです」

 パトリシアは、空になった食器を運んでいくアリッサさんにお礼を言った。

「それは良かったです。料理長にその言葉を伝えますね」

 慣れた手つきでテキパキとテーブルの食器を片付けていく。

「俺も旨かったと、足しといてくれ」

 冗談めかして言ってみた。

「はい、足しときます」

 アリッサさんがクスクスと笑った。

「お前も何か言うことが無いのか」

「……」

 クラリスは大人気もなく、ぷいっと横を向く。

 この俺とクラリスの関係を知らない彼女は、不思議そうな顔で俺たちを見た。俺たちが今日この国を出立するので、クラリスと最後の食事をしようと誘って椅子に座らせたが、食事中一言も話そうとはしなかった。

 アリッサさんがクラリスの食器を片付ける際

「同僚に誤解されちゃいました」

 髪の毛を少し掻き分け、彼女に赤い痕を見せ付けた。

「申し訳ない」

 両手で顔を隠して、ぼそりと謝罪の言葉を口にする。
 
「ひゃはははは」

 俺はそのやり取りを見て手を叩いて笑う。

「泣かしてやる」

 俺にしか届かないぐらい小さな声で、クラリスは怨嗟えんさの言葉を呟いた。

 お茶と焼き菓子を運んできたので、アリッサさんを交えて歓談する。俺はリザードマン国の情報が知りたくて、彼女に色々と話を聞いてみた。彼女も祖国がまさか隣国に攻められるとは思ってはいなかったので、かなり動揺したという。国に残してきた両親の情報では、占領されてはいるものの、生活が大きく変わってはいないと知らされている。ただ、これから税が倍になるとか、不安な事はかなりあるそうだ。

  何回目か、ポットのお茶が入れ替わったとき、アリッサさんが席から離れ、直ぐに戻ってきた。

「竜王様がお呼びです」

 ようやく竜王ガルムから呼び出しがかかる。そうして俺たちは竜王の居る別室に通され事になった。

「お二人とも大変待たせてしまったな。喜んでくれ魔王様と連絡がついたので、面会を許されたぞ」

 竜王が笑顔で俺たちを迎える。

「ありがとうございます」

 彼女は竜王に頭を下げ、感謝の意を表した。

「俺からもお礼を言わせて貰う」

「ははは、おっちゃんらしくもない」

 竜王は俺の肩を叩いて笑う。

「で、魔王様とはいつ会えるんだ」

「すぐにでも会えるぞ……というより直ぐにでも行く方が好印象だ」

 竜王の隣に座っている、ガルシアが答える。

「このまま。わしがお前たちを運んでも良いが、流石にすぐに飛び立つのは無理がある。ここにクラリスが来ているそうだな。だから彼女を魔王城に案内させようと思う」

「魔王様に失礼でなければ、特に問題ない」

 ――――俺たちは慌てて荷造りを済ませて、塔の外に出た。

 クラリスは真っ赤な竜に変わり、大きな翼を二度三度と羽ばたかせた。初めてその姿を見た、パトリシアは腰を抜かすほど驚いていた。

 俺は腰を屈めた赤竜の背にある荷台の上によじ登った。そこで少し問題が起きる。パトリシアが上手く荷台まで登ることが出来なかった。従者に担がれて何度か登ろうとしたが、彼女の細腕では無理だと結論付ける。

「仕方がない」

 と、ガルシアがそう言うと、赤竜の倍以上の大きさに変わる。そうして彼女の身体をむずりとつかんで、荷台に運んだ。

「ふえええ、怖かったです」

 パトリシアは真っ青な顔をしながら、御台に入ってきた。

「飛び立つから、舌を噛むなよ」

 荷台の外からクラリスの声が聞こえてきた。ばさばさと大きな翼をはためかせ、赤竜は大空を舞った――

 パトリシアは荷台の窓から、かじり付くように外の景色を見ている。

「す、凄いです! 地上の建物が小さく玩具みたいに見えます」

 赤竜は空中を旋回しドラゴニア王国を飛び立った――

 ―― かに思えたが、高度が急に下がっていく。彼女の身に何か起こったのか心配すると、窓から外を覗くと地上にみるみる近づいていく」

「クラリス! 大丈夫か!?」

 俺は荷台の中から大声を上げたが、返事は帰ってこなかった。すると荷台がズシリと軽く揺れ地面に着いたのが分かる。

「クラリス、迎えに来てくれたの」

 懐かしい声が、荷台の外から聞こえてきた。

「姫様、いまお客様を運んでいる最中なので乗せられないのです」

「なんだ……それならどうしてここに降りてきたの」

 エメラルドグリーンの髪の毛を、肩まで伸ばした小さな竜族の子供が、クラリスに尋ねた。

暫く会っていなかったので・・・・・・・・・・・・姫様の顔が見たかった・・・・・・・・・・からですよ・・・・・

  そう、彼女は言った……。

「えへへ、数日しか経ってないのに、寂しがりやさんね」

 ソラは笑顔で笑った。

「また、後で迎えに参ります」

「またねーーーーーぇ」

 ソラが何度も何度も、俺に向けて・・・・・手を振る。そのソラの姿が小さく消えるまで、俺は見続けた。

「ふん! 泣かせてやったぞ」

 その言葉が、赤竜の翼の音で掻き消されていく――――
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...