働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

文字の大きさ
214 / 229

外伝 ダブリンの憂鬱【前編】

しおりを挟む
 テーブルの上には、高級な酒と綺麗に盛られた料理の皿が並べられていた。デルモント伯爵家の晩飯は、俺が一月の間薬草を狩り続けたとしても、この一皿のスープでさえ作れないほど豪華な食材が使われていた。

 いつもなら、彼の家で御馳走になることなど殆ど無かった。しかし今日だけは特別な理由で、この夕飯のご相伴にあずかることになってしまった――。

少しだけ時計の針を戻す――

「おっちゃん氏、何かいい出物でも持ってきてくれたのでおじゃるか」

 ダブリンが目を輝かせながら俺を見た。

「悪いが、良い話ではあるが、ダブリンの御期待にはそえんのよ」

 明らかに分かりやすいぐらい、ガッカリとした顔になる。

「それは誠に残念じゃ。では、最近手に入れたアレでも見せるでおじゃる」

 そう言って、椅子から立ち上がろうとしたダブリンを俺は引き留めた。

「唐突だが、ダブリンは将来どうするつもりだ?」

 俺の問いに、ダブリンはわずかに困惑を浮かべながら答える。

「そうですな……麻呂には兄がいるので、家督を引き継ぐことはないし、こういう男だと認識さているので、このままゆっくりと老いていければと思っているでおじゃる」

「わははは。流石我が友、俺が思っていた以上にぶれて無くて嬉しいわ」

「それは馬鹿にしているでおじゃるか」

「いやいや、俺には羨ましすぎて、つい口に出た言葉だ。ただ、今回自分が持ってきた情報は、デルモント伯爵家の将来に関わる話しだ。もし道を間違えば、ダブリンの未来は悲しいものになると思え」

「おっちゃん氏、冗談にしては少し笑えんでおじゃるよ」

 俺はわざと声を低くして話した。

「第一王子のカティアが王になることは知っているか?」

「なっ!? おっちゃん氏が何故知っているのでおじゃるのか……」

 ダブリンがぎょっとした顔を作る。

「ほっとしたよ……ここまで無知だったらどうしようもないと思ったが、これなら何とかなるかもしれんな。ここからは我が友だから話す情報だ。伯爵や兄は知らされている可能性があると思うが、ローランツ王国は魔王討伐を企てている」

「なっ! なっ! その話は本当でおじゃるか!!」

 驚きに目をまたたかせる。

「しっ、声が大きい。メイドに聞かれたらどうする」

「すまんでおじゃる」

 ダブリンが叱られた子犬のようにしゅんとする。

「この戦は必ず魔王に負けるぞ……そして王家の首が全て飛ばされる」

 声のトーンをさらに一つ下げ、彼に告げた。

「ひいいぃ! ただ、我が国が負けるとは限らないでおじゃる」

 その俺の言葉を否定するように、もう一つの可能性にダブリンはすがった。

「俺は先日、魔王に会ってきた。奴は化け物だ! 詳しいことは省くが、第二王女パトリシアに付くことが、正しい選択だ。調子に乗ってデルモント家がこの戦に参加したら、全て失う可能性が大きいぞ」

「兄上の性格なら、戦に参加しそうでおじゃる……」

 真っ青な顔で嘆いて見せた。

「いまデルモント伯爵家が一番にしなければいけないことは、パトリシア王女と強い縁を結ぶことだ。俺が出来るのは、この話を持ってきたのが、俺だと言えば、パトリシア王女は、何の疑問も持たずに受け入れてくれる」

 俺はダブリンに正解を指し示す。

「第二王女に力などないでおじゃるが……」

 至極真っ当な意見を述べた。

「『九つの匣』の話を思い出してみろ……その匣の中にパトリシアは含まれない」

「おっちゃん氏の情報を信じることが大前提でおじゃるな……。麻呂には家族を説得するには、敷居が高すぎでおじゃる」

 ダブリンはいつもの倍以上、太った身体をブルブルと震わせ、自分が動くことを拒否した。

「じゃあ、このまま虫たちとの生活とお別れして、冒険者にでも落ちぶれたら俺が薬草の狩りかたぐらいは教えてやるさ。すぐにそのぷよぷよの腹が小さくなるぞ」

 そう言って、ダブリンのお腹をムギュッと摘んでやった。

「我が友に出来るのはここまでだ……後は自分で何とかしろ」

 俺はテーブルの上の焼き菓子を懐に入れ、ダブリンの部屋から出て行く――

――右足に大きな子豚がしがみついてきた。

「説得など無理でおじゃる!! でも貧乏も嫌でおじゃる!!」

 今から屠殺場とさつばに連れて行かれるのを拒む子豚をじっと見つめる。

「やれやれ」

  俺は小さく呟き、呆れたように肩をすくめてみせた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...