働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

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外伝 ダブリンの憂鬱【後編】

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「父上を呼ぶので説得して欲しいのでおじゃる」

 ダブリンが深い絶望を俺に向けてすがってくる。

「とりあえず、話だけは伯爵にしておいてくれ。俺は一端家に戻り、忘れ物を取りに帰るわ」

 俺は軽い調子でダブリンに告げた。

「に、逃げるのでおじゃるか」

「馬車を出せば、逃げることなど出来ないだろう」

 彼に向けて優しく微笑んでみせる。

「キャサリン!! 馬車を早急に用意せよ!!」

 一筋の光を逃さぬように、メイドの名を叫んだ。

「直ちに御用意致します」

 彼女の声が部屋の外から聞こえてきた。そうして俺は馬車に乗せられて、家を往復する羽目になった。

 時計の針が動き出す――

 そういえばダブリンとは結構長い付き合いになっていたが、デルモント伯爵の顔を見たことを一度もなかった。デルモント伯爵はダブリンが同じDNAを引き継いでいるとは思えないほど、精悍な顔つきに顎髭が綺麗にそろったイケおじだった。二人を見比べて、少しだけダブリンに哀れみを感じてしまう。ただ俺もまた、異世界とはいえど、同じ容姿レベルの進化を自分が受け継いでいないことを呪う。そのイケおじと一緒に何の因果か食事を共にしていた……。

「おっちゃんとやら、息子と仲良くしているそうだな」

 まず口火を切ったのは伯爵からであった。

「ああ、虫友だ」

 いつものようにぶっきらぼうに対応する。

「話は息子から全部聞かせて貰った。お前をこのまま家から追い出すことも出来ず困っておる」

 目尻に気迫込めてたそのセリフに、困ったと感じさせることはない。

「こんな旨い飯と酒の前でするのか?」

 そんなイケおじの鋭い眼光を俺は受け流す。

「ふはは、これは失礼した……存分に食べた後で話そうじゃないか。だが、お前は食べ過ぎだ」

「ぶぎゃ!」

 ダブリンが父親に叩かれた。

 ――空になった食器が全て片付けられ、高そうなお酒とつまみが追加で並ぶ。

「では、ゆっくり聞かせて貰うとするか」

 そう言って、手に持ったグラスの酒に口をつける。

「ダブリンに話したこと以外、何が聞きたい?」

「そうだな……魔王討伐が失敗する理由だ」

「まず、人間と魔人の文明の差が大きすぎる。例えると人間が小鬼なら、魔人はドワーフ以上の文化で暮らしている」

「大昔は人とドワーフは交易をしていたと聞いたことがある。魔人の文明を卑下する訳ではないが、そこまでかけ離れているとは思わないが」

 伯爵は顎髭を弄りながら、懐疑的な表情を浮べてそう言った。

「まず、この話をする前に、伯爵の立ち位置を聞かせて貰いたい。特に魔王討伐に何処まで関わるのか」

「それを聞いてどうする!」

 眉間にシワを寄せ、伯爵の目が細く光る。

「討伐計画に大きく関わっているのなら、もう俺の出番があるとは思えない。だからこれ以上手札を切るつもりは無いと言うことだ」

「ふむ……確かに貴殿の言うことは納得出来るな。上の息子はかなりこの戦に参加したがってはいるが、まだ王は軍の編成を決めてはおらん」

「そうか……これはドワーフ国、これはラミア国、これはドラゴニア皇国の特別通行証だ」

 そう言って、テーブルに金属のプレートを並べた。

「なんと! それは本物か?」

 テーブルに並べられた金属のプレートを、まじまじと見つめながら問いかけてくる。

「わざわざ、伯爵様を騙すため、俺が偽物を用意する必要は何処にもない。俺がどの国も見てき証だ」

「ただ、それだけで私が、何の力もないパトリシア王女にくみするには説得力に欠けてるとは思わないか?」

「ああ俺もそう思う。ただ伯爵が魔王討伐に勝てる見込みがあると言い切れないだろう。人数で勝てる相手だとは到底思わない。もしかして鉄砲・・が決め手か」

「なっ! なぜお前ごときが、我が国の秘密を知っておるのだ」

 椅子から立ち上がり大声を張り上げた。

「簡単な話だ……俺がパトリシア王女と繋がっているからな」

 俺は即答する。

「そうか……」

「で、そのでどうして勝てると思った?」

 俺は伯爵を見下すようにニヤリと笑う。

「お前はこの武器の威力と、数を知っておるのか」

「面倒臭いので最後のカードを切る。俺は魔王に会ってきたと聞いたよな」

「ああ……息子からだが」

 俺はテーブルにゴロリとを転がした。

 部屋は明るかったはずだが、その石はそれ以上の光で部屋中を照らした。

「ドラゴニア皇国のトップから頂戴した龍石だ。じっくり見てくれ」

「ま、まさかこんな大きな龍石など存在するはずはない」

 驚愕の表情をデルモント伯爵が見せた。

「魔王の配下に竜族がいる。その空を飛ぶ魔人をそんなちんけな武器で落とせると思っているのか」

「な、なんと」

 そう言ったきり、口を噤んでしまう。

「俺はただ友人を冒険者にするのが忍びなくて、あんたに会っただけだ。パトリシア王女に肩入れしてくれと頼んでは居ない。二枚舌を使うのは、そちら側の専売特許だろ! 彼女は必ず生き残る――後は言わなくても分かるだろう。どう対応するのがデルモント家にとって一番正しい選択か、この俺が見せた手札で十分すぎると思うがな」

 俺はそう言って、彼の答えを聞かずに席を立った。

「上手く事が進めば、ギルドを通して金貨千枚支払ってくれ。安すぎる情報料だが友人価格だ」

 俺はそう言い残し、デルモント伯爵邸を後にした――
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