勇者の友人はひきこもり

山鳥うずら

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第六話 蠢動蠢く

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 どんよりとした空気に包まれた王宮の一室で――

今回の・・・勇者の実力は、どうであったのか?」

 冷たく濁った目で、ナービスに尋ねる男が居た。

「今度の勇者様は大当たりです! 適正魔法は全ての属性魔法を使いこなし、しかも剣聖ダレン様が手も足も出せないまま負けました」

「な、なんと! あの剣聖が負けたとな!!」

 アンディ王は思わず椅子から立ち上がり。驚きを露わにした。

「はい、勇者様には剣一本通りませんでした」

「フハハハハ。大量のにえを使って漸く当たりを引き当てたか! 今までの勇者はアースの知識は持ってきてくれたが、殆どが使い物にならない者ばかりだったからな」

「情報だけ・・は沢山集まりましたので、使い物にならないなど言えばイージス様から罰せられますわ」

「フハハハ、そうだったな。ナービスよ、その勇者をどう使うつもりなのだ?」

「勇者様は実力はありますが、実戦経験が全くありませんので、小さな戦いに参加させる予定です」

「そうか……無茶して壊すでないぞ! アース人は弱い者・・・が多いからな」

「ははっ、アース人の扱いは重々承知しております。金の卵を産むニワトリの腹を割くなどしませんわ……」

「金の卵を産むニワトリとは、何の話しだ?」

「毎日一つずつの金のタマゴを産むニワトリに、欲を出して腹を切り金を取り出そうとして殺してしまう、何もかも失ったアース国の寓話です」

「フハハハハ! アース国は上手い話を創作するの」

「はい……私としては、いらない知識ばかりが増えて困りものですが」

いらない・・・・とは罰当たりだな。ナービスよ、本音が漏れておるぞ! お前が言った通り、今後はそなたの膨大に溜めた知識が武器になるのだ」

 そう言って、男はさらに濁った目でナービスを諫めた。

「一本取られましたわね……」

 ナービスは、薄気味悪い笑みを浮かべながら呟いた……。
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