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第二十九話 ひきこもりと、狙われた異世界レジスタンス
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香川梓は複数のパソコンとスマホを使って、ユーチューブのチャンネル視聴者数を水増している。これはなにも自分の個人チャンネルに対して、行っているのでは無かった。彼女は動画再生回数が十未満の、チャンネル登録者がほとんどいないユーチューブに対して、水増し作業をしていた。
彼女はそのチャンネルに自分の作った幾つものアカウントで、他人になりすまし応援コメントとイイネを送る。これはなにもその配信者を応援するためでも無い。新しい動画が上がると、低評価と罵詈雑言のコメントを残して、弱小チャンネルを喜びから奈落の底に落とすことこそが、彼女の本当の目的であった。
数十に増えた登録者が、一本の動画を上げたことで突然アンチに変わる。それを機に動画更新が止まったり、チャンネル自体が無くなることが、香川梓にとって愉悦に浸れる時間であった。
他人から見れば全く悪趣味極まりない趣味であった。しかし彼女に言わせれば、糞みたいにつまらない情報を、世界中に垂れ流す配信者こそが悪趣味だと、身勝手な理由でこのなりすましを長年続けていた。
そんなある日、ユーチューブを覗くと、とんでもないチャンネルを発見してしまう。『異世界レジスタンス』という、異世界が地球に攻めて来ると公言する、お馬鹿なチャンネルであった。
配信者が異世界だと称す、フィリップを見せ付けてくる。最初はネタサイトだと思い、流し見していたが、動画を見終わった後、ネタで作った物ではないと確信した。
すぐにでもこのチャンネルを潰したかったが、政治色の強いサイトや、自分の趣味をひけらかすためだけに作ったチャンネルは、簡単な駆け引きで動画配信を止めることが無いことも、彼女の経験則でよく分かっていた。そこでこのサイトにコメントを残して、もう少しだけ成り行きを見ることにする。
『私もいち戦士として、応援させて貰います』
香川梓はこのチャンネルの最初の登録者となり、イイネのボタンを一つだけ贈った――
* * *
今泉誠はバスの中でスマホを立ち上げ、自分の作ったチャンネルを確認した。すると登録者が一人、入っているのに驚いた。こんな馬鹿みたいなチャンネルを、応援する奇特な人もいるものだと、肩を揺らして小さく吹き出す。
親友の心を癒せればと思い、立ち上げただけのチャンネルなので、少しだけ申し訳なくも思ってしまう。
たった一人だけのコメントを既読して、彼はイイネを返した――
彼女はそのチャンネルに自分の作った幾つものアカウントで、他人になりすまし応援コメントとイイネを送る。これはなにもその配信者を応援するためでも無い。新しい動画が上がると、低評価と罵詈雑言のコメントを残して、弱小チャンネルを喜びから奈落の底に落とすことこそが、彼女の本当の目的であった。
数十に増えた登録者が、一本の動画を上げたことで突然アンチに変わる。それを機に動画更新が止まったり、チャンネル自体が無くなることが、香川梓にとって愉悦に浸れる時間であった。
他人から見れば全く悪趣味極まりない趣味であった。しかし彼女に言わせれば、糞みたいにつまらない情報を、世界中に垂れ流す配信者こそが悪趣味だと、身勝手な理由でこのなりすましを長年続けていた。
そんなある日、ユーチューブを覗くと、とんでもないチャンネルを発見してしまう。『異世界レジスタンス』という、異世界が地球に攻めて来ると公言する、お馬鹿なチャンネルであった。
配信者が異世界だと称す、フィリップを見せ付けてくる。最初はネタサイトだと思い、流し見していたが、動画を見終わった後、ネタで作った物ではないと確信した。
すぐにでもこのチャンネルを潰したかったが、政治色の強いサイトや、自分の趣味をひけらかすためだけに作ったチャンネルは、簡単な駆け引きで動画配信を止めることが無いことも、彼女の経験則でよく分かっていた。そこでこのサイトにコメントを残して、もう少しだけ成り行きを見ることにする。
『私もいち戦士として、応援させて貰います』
香川梓はこのチャンネルの最初の登録者となり、イイネのボタンを一つだけ贈った――
* * *
今泉誠はバスの中でスマホを立ち上げ、自分の作ったチャンネルを確認した。すると登録者が一人、入っているのに驚いた。こんな馬鹿みたいなチャンネルを、応援する奇特な人もいるものだと、肩を揺らして小さく吹き出す。
親友の心を癒せればと思い、立ち上げただけのチャンネルなので、少しだけ申し訳なくも思ってしまう。
たった一人だけのコメントを既読して、彼はイイネを返した――
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