17 / 25
相談事
しおりを挟む
今日は朝から大忙し。
カフェは混雑している。
なんとか回せている状態。
今日は具だくさん特製おにぎりを提供している。
お店に出す分とお弁当の注文も入っているので目が回るほどの忙しさ。
デンさんは外で接客。お客様は嬉しそうにしている。
「はい。またせたノ。これがチュウモンのモノダヨ」
「美味しそう!楽しみです」
「またナー」
「ありがとうございます」
デンさんが守り神のケット・シーということもありお客様もうれしそうに受ける。
「デン様。こんにちは。また来ました」
「ありがとうナ」
「デン様。これ差し入れです」
「オッ。ありがとう」
デンさんに差し入れを渡す人もいる。お店の猫たちやハチくん、ナナさんにも色々と持ってきてくれる方が多い。本当にうれしい。
お昼のピークが過ぎ、キッチンは落ち着きを取り戻してきたのでカフェへ戻る。
「ナナさん、ハチくん。休憩入ってください。あとは私がやりますから」
「わかったわ」
「ワリぃナ」
ふたりが休憩に入る。
「さぁ次になにかいいメニュー思い浮かばないかな?何にしようかな」
メニューを見ながら考えていると。
「すみません」
お客様がひとり入ってきた。
「はい。いらっしゃいませ」
「あの……こちらで猫のお世話をしていただけるって聞いたのですけど……」
「はい。どうかなされましたか?」
「えっと……私が飼っているこの猫ちゃんを預かって欲しいのです。いえ。ごめんなさい。引き取っていただきたいのです。実は遠くの方へ嫁ぐことになったのです。そこは移動にかなり日数のかかるところなのです。本当は連れていきたいのです。ですが移動の負担など道中が不安なのと……その……引っ越し先というのが北の地にあるサホロという寒い国なのです」
北の国。先日、マリーさんがお土産を買ってきてくれた所。
かなり寒い国で厳しい環境の中で暮らしている人がいると聞いた。
資源が豊富で栄えてはいるけど寒さはどうにもならないって……。
「あそこですか……かなり寒いんですよね」
「ええ……小動物にはなかなか厳しい環境でして……それなら住み慣れたこの町で新しい方に引き取ってもらったほうがいいのかなと……」
「お店としてはケット・シーさんがいるので色々と大丈夫ですが……本当によろしいのですか?」
「ええ、ケット・シー様の恩恵があるからこそ安心してお預けできます」
「わかりました。この子ももう納得されているのですよね」
「はい。もう何日も伝えました」
デンさんの方を見ると
「オウ。もうわかっていル。サミシイけどケット・シーサマがいるカラダイジョウブ。アンシンしてあたらシイセイカツにハヤクなれろッテ。そうイッテル」
「よかったです。でしたら安心です。どうかこの子のことをよろしくお願いします。後日またお預けにきます。そのあと出発まで数日あるので会いにもきますのでよろしくお願いいたします」
数日後、ふたたび猫ちゃんを連れてやってきた。
猫ちゃんの方はデンさんの紹介もありすぐみんなの輪の中へ溶け込んだ。
普段は少しケージなどで徐々に慣らしてから一緒にするのだけど大丈夫そう。
飼い主さんに安心してもらいたかったのだろう。
「それではこの子のことをよろしくお願いします」
その後、数日間毎日お店に通ってくださり十分にお別れをおしんだ。出発日もあわただしい中、最後のお別れをするためにきてくださり新天地で幸せに過ごせるようデンさんに頼んで祝福をつけてもらい出発を見送りました。
「デンさんありがとうね」
「オウ。このコをダイジにしてくれたンダ。これくらいヤスイもんだ。」
相変わらず優しい。
「ソレニしてモすごいトコロヘいくんだナ。タイヘンダゾ」
「うん。頑張ってほしいですね」
「ソウダナ」
それから一週間後。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。ここのケット・シーさまのうわさを聞いてきたんです」
「うわさですか? どんなものでしょうか」
「なんでも願い事をかなえてくれるとか」
そんなうわさが広まっているのか……大丈夫かな……?
「まぁイインジャないのカ?」
そう言ってデンさんは話を聞く。
「実は……私の父が病気で長くはないそうなのです。治療費が高額になりそうで……どうにかできないかと相談したくて……」
「なるほど。それはツライですね……それで何か病気について心当たりはあるのですか?」
「いえ。それが……わからないのです。今までずっと一緒にいたのに急に症状が悪くなって……医者も原因がわからないと言うのです。このままだとどんどん悪くなっていくと……」
「そうですか……」
「治る方法はないかと探しているのですが見つからなくて……藁にもすがる思いでケット・シー様にお願いすればと……すみません。こんなこといきなり言われても困りますよね」
「イイヤ、ダイジョウブだ」
「お気になさらずに。デンさんもこう言ってますし。きっとお力になれると思います」
「本当ですか!?」
「アア」
「ケット・シー様ありがとうございます」
「デンさんちょっと」
デンさんを呼び耳打ちする。
『デンさん、こういう場合ってどうしたらいいの?』
『ウン。オレはココのマモリガミだからナ。できるコトはカギられてくるガ、モンダイないとオモウ。とりあえずハナシをきいてクレ』
『じゃあ……やってみるね』
『オウ』
デンさんの指示を受けながら私は女の子と向かい合って話す。いつ悪くなったことに気づいたのか。そのあとの症状はどう変わってきたのか。最近の様子など。周りの人の変化など。彼女は言葉に詰まりながら話してくれた。
「フムー。アァはいったガ。チトやっかいダナ。さてどうするか」
しかしデンさんも悩む。彼女も不安そうだ。
しかし話を聞く限り……普段は元気なのだが、ふとした瞬間になにもできなくなり動くことすらできなくなる。
一日寝込むとよくなることもあるが一週間寝込むこともあるそう。
食欲もあまりなく色々なことに意欲がない。
ひどい時は消えてなくなりたいと言い出すこともあるらしい。
これって……いわゆるうつ病なのでは……。
『デンさんちょっといい?』
『ウン? ドウシタ?』
「すみません。ちょっと失礼します」
ふたりで席を外す。
「デンさん。彼女のお父さんの病気なんですが、私の前に住んでいた国にある病気に似ているのです。うつ病と言って様々なことに対してやる気がなくなるのです。生きることすら嫌になることもあります。原因は様々で、大きな要因としてストレスが影響します」
「ストレス?」
「はい。環境、身の回りの変化によって心が乱れてしまう病気です。治療法としては薬があります。できれば心のケアや環境を落ち着けるように変えることがいいとされいます」
「なにか環境の変化があったんだと思います。私、聞いてみます」
「ワカッタ。マカセル。なにかアレばいえヨ」
彼女にお父さんのことや家族のことを尋ねた。すると彼女が最近結婚したこと。
仕事を引退して家に居ることが増えたこということ。これで状況がわかった。
あとはどうすればよくなるのか……
「ナァこころノビョウキならうちのコたちデなおせないのカ?」
「たしかにアニマルセラピーという治療法もあります。そうですね。一度試してもいいかもしれませんね。お話してみます」
彼女にうつ病のこと。
治療法としてアニマルセラピーという方法があることを伝えた。
ペットは一度も飼ったことがなく触れ合ったこともほとんどしてこなかったのでこれでよくなるのか彼女もどこか不安を残していたが、後日、お父さんも連れてきてもらう約束をして帰っていった。
あとは誰に行ってもらうか。
たぶん誰でも力になれるだろうけどお互いの相性をみたい。
数日後お父さんを連れて彼女が来店してくれた。
猫エリアに入るといつものようにみんなが群がる。
ただひとり少し離れたところからその様子を監察している子がいる。
長毛キジトラでしっぽがとてもふさふさしているのが特徴。
みんなが落ち着いて離れたあとお父さんも少し椅子に座って休憩をしていた。
そのタイミングを見計らい椅子の背もたれへ飛び乗る。
そしてその大きな尻尾をお父さんの顔をなでるように何度も当てている。
頬をなでるふさふさの尻尾に少しうっとりしているような表情をしてくれた。
うん。この子だ。そう確信して今度は抱っこをしてもらう。
その子はお父さんのお腹あたりを一生懸命ふみふみしている。
甘えているときにやるニーディングというやつ。
これなら大丈夫。
はじめのうちは娘さんがお世話をしてお父さんが遊び相手。
慣れてきたら少しずつお世話もお父さんがやっていくようにした。まずはこの子が心の拠り所になってくれることを祈る。
しかしそんな祈りは意味もなくあっという間にお父さんの症状は改善して普段の生活に戻れている。
お父さんにベタベタで幸せに暮らしているという。
ケット・シー様の恩恵ってやつなのかな……。
カフェは混雑している。
なんとか回せている状態。
今日は具だくさん特製おにぎりを提供している。
お店に出す分とお弁当の注文も入っているので目が回るほどの忙しさ。
デンさんは外で接客。お客様は嬉しそうにしている。
「はい。またせたノ。これがチュウモンのモノダヨ」
「美味しそう!楽しみです」
「またナー」
「ありがとうございます」
デンさんが守り神のケット・シーということもありお客様もうれしそうに受ける。
「デン様。こんにちは。また来ました」
「ありがとうナ」
「デン様。これ差し入れです」
「オッ。ありがとう」
デンさんに差し入れを渡す人もいる。お店の猫たちやハチくん、ナナさんにも色々と持ってきてくれる方が多い。本当にうれしい。
お昼のピークが過ぎ、キッチンは落ち着きを取り戻してきたのでカフェへ戻る。
「ナナさん、ハチくん。休憩入ってください。あとは私がやりますから」
「わかったわ」
「ワリぃナ」
ふたりが休憩に入る。
「さぁ次になにかいいメニュー思い浮かばないかな?何にしようかな」
メニューを見ながら考えていると。
「すみません」
お客様がひとり入ってきた。
「はい。いらっしゃいませ」
「あの……こちらで猫のお世話をしていただけるって聞いたのですけど……」
「はい。どうかなされましたか?」
「えっと……私が飼っているこの猫ちゃんを預かって欲しいのです。いえ。ごめんなさい。引き取っていただきたいのです。実は遠くの方へ嫁ぐことになったのです。そこは移動にかなり日数のかかるところなのです。本当は連れていきたいのです。ですが移動の負担など道中が不安なのと……その……引っ越し先というのが北の地にあるサホロという寒い国なのです」
北の国。先日、マリーさんがお土産を買ってきてくれた所。
かなり寒い国で厳しい環境の中で暮らしている人がいると聞いた。
資源が豊富で栄えてはいるけど寒さはどうにもならないって……。
「あそこですか……かなり寒いんですよね」
「ええ……小動物にはなかなか厳しい環境でして……それなら住み慣れたこの町で新しい方に引き取ってもらったほうがいいのかなと……」
「お店としてはケット・シーさんがいるので色々と大丈夫ですが……本当によろしいのですか?」
「ええ、ケット・シー様の恩恵があるからこそ安心してお預けできます」
「わかりました。この子ももう納得されているのですよね」
「はい。もう何日も伝えました」
デンさんの方を見ると
「オウ。もうわかっていル。サミシイけどケット・シーサマがいるカラダイジョウブ。アンシンしてあたらシイセイカツにハヤクなれろッテ。そうイッテル」
「よかったです。でしたら安心です。どうかこの子のことをよろしくお願いします。後日またお預けにきます。そのあと出発まで数日あるので会いにもきますのでよろしくお願いいたします」
数日後、ふたたび猫ちゃんを連れてやってきた。
猫ちゃんの方はデンさんの紹介もありすぐみんなの輪の中へ溶け込んだ。
普段は少しケージなどで徐々に慣らしてから一緒にするのだけど大丈夫そう。
飼い主さんに安心してもらいたかったのだろう。
「それではこの子のことをよろしくお願いします」
その後、数日間毎日お店に通ってくださり十分にお別れをおしんだ。出発日もあわただしい中、最後のお別れをするためにきてくださり新天地で幸せに過ごせるようデンさんに頼んで祝福をつけてもらい出発を見送りました。
「デンさんありがとうね」
「オウ。このコをダイジにしてくれたンダ。これくらいヤスイもんだ。」
相変わらず優しい。
「ソレニしてモすごいトコロヘいくんだナ。タイヘンダゾ」
「うん。頑張ってほしいですね」
「ソウダナ」
それから一週間後。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。ここのケット・シーさまのうわさを聞いてきたんです」
「うわさですか? どんなものでしょうか」
「なんでも願い事をかなえてくれるとか」
そんなうわさが広まっているのか……大丈夫かな……?
「まぁイインジャないのカ?」
そう言ってデンさんは話を聞く。
「実は……私の父が病気で長くはないそうなのです。治療費が高額になりそうで……どうにかできないかと相談したくて……」
「なるほど。それはツライですね……それで何か病気について心当たりはあるのですか?」
「いえ。それが……わからないのです。今までずっと一緒にいたのに急に症状が悪くなって……医者も原因がわからないと言うのです。このままだとどんどん悪くなっていくと……」
「そうですか……」
「治る方法はないかと探しているのですが見つからなくて……藁にもすがる思いでケット・シー様にお願いすればと……すみません。こんなこといきなり言われても困りますよね」
「イイヤ、ダイジョウブだ」
「お気になさらずに。デンさんもこう言ってますし。きっとお力になれると思います」
「本当ですか!?」
「アア」
「ケット・シー様ありがとうございます」
「デンさんちょっと」
デンさんを呼び耳打ちする。
『デンさん、こういう場合ってどうしたらいいの?』
『ウン。オレはココのマモリガミだからナ。できるコトはカギられてくるガ、モンダイないとオモウ。とりあえずハナシをきいてクレ』
『じゃあ……やってみるね』
『オウ』
デンさんの指示を受けながら私は女の子と向かい合って話す。いつ悪くなったことに気づいたのか。そのあとの症状はどう変わってきたのか。最近の様子など。周りの人の変化など。彼女は言葉に詰まりながら話してくれた。
「フムー。アァはいったガ。チトやっかいダナ。さてどうするか」
しかしデンさんも悩む。彼女も不安そうだ。
しかし話を聞く限り……普段は元気なのだが、ふとした瞬間になにもできなくなり動くことすらできなくなる。
一日寝込むとよくなることもあるが一週間寝込むこともあるそう。
食欲もあまりなく色々なことに意欲がない。
ひどい時は消えてなくなりたいと言い出すこともあるらしい。
これって……いわゆるうつ病なのでは……。
『デンさんちょっといい?』
『ウン? ドウシタ?』
「すみません。ちょっと失礼します」
ふたりで席を外す。
「デンさん。彼女のお父さんの病気なんですが、私の前に住んでいた国にある病気に似ているのです。うつ病と言って様々なことに対してやる気がなくなるのです。生きることすら嫌になることもあります。原因は様々で、大きな要因としてストレスが影響します」
「ストレス?」
「はい。環境、身の回りの変化によって心が乱れてしまう病気です。治療法としては薬があります。できれば心のケアや環境を落ち着けるように変えることがいいとされいます」
「なにか環境の変化があったんだと思います。私、聞いてみます」
「ワカッタ。マカセル。なにかアレばいえヨ」
彼女にお父さんのことや家族のことを尋ねた。すると彼女が最近結婚したこと。
仕事を引退して家に居ることが増えたこということ。これで状況がわかった。
あとはどうすればよくなるのか……
「ナァこころノビョウキならうちのコたちデなおせないのカ?」
「たしかにアニマルセラピーという治療法もあります。そうですね。一度試してもいいかもしれませんね。お話してみます」
彼女にうつ病のこと。
治療法としてアニマルセラピーという方法があることを伝えた。
ペットは一度も飼ったことがなく触れ合ったこともほとんどしてこなかったのでこれでよくなるのか彼女もどこか不安を残していたが、後日、お父さんも連れてきてもらう約束をして帰っていった。
あとは誰に行ってもらうか。
たぶん誰でも力になれるだろうけどお互いの相性をみたい。
数日後お父さんを連れて彼女が来店してくれた。
猫エリアに入るといつものようにみんなが群がる。
ただひとり少し離れたところからその様子を監察している子がいる。
長毛キジトラでしっぽがとてもふさふさしているのが特徴。
みんなが落ち着いて離れたあとお父さんも少し椅子に座って休憩をしていた。
そのタイミングを見計らい椅子の背もたれへ飛び乗る。
そしてその大きな尻尾をお父さんの顔をなでるように何度も当てている。
頬をなでるふさふさの尻尾に少しうっとりしているような表情をしてくれた。
うん。この子だ。そう確信して今度は抱っこをしてもらう。
その子はお父さんのお腹あたりを一生懸命ふみふみしている。
甘えているときにやるニーディングというやつ。
これなら大丈夫。
はじめのうちは娘さんがお世話をしてお父さんが遊び相手。
慣れてきたら少しずつお世話もお父さんがやっていくようにした。まずはこの子が心の拠り所になってくれることを祈る。
しかしそんな祈りは意味もなくあっという間にお父さんの症状は改善して普段の生活に戻れている。
お父さんにベタベタで幸せに暮らしているという。
ケット・シー様の恩恵ってやつなのかな……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる