魔道を極めた最強賢者は遥か未来の世界でスローライフを謳歌する

烏の人

文字の大きさ
16 / 16

おてんばの行方

しおりを挟む
 城下が騒がしいと気がついたのは、私がメイ様を探し回っている頃のことだ。日もかけてきた辺り、彼女が城を飛び出し数時間が経過していた。

「なんだ…このざわめきは。」

 少し嫌な予感がする。騒ぎのする方へと急ぐ。念のために、あの本を取り出しておく。だが、仮に本命イールと対峙でもすれば…意味はないだろう?

 群衆を掻き分け進む。そこに居たのは…メイ様を抱えた男の姿だった。この男はいったい…それよりもメイ様はどうなった?

「メイ様!!」

 呼び掛ける

「ああ、あんたがこの子の知り合いか?」

 雰囲気で感じ取る。ただ者ではない。まさかこいつが…。

「いやぁ、急に倒れられたもんでどうしようかと思ってな。多分しばらくすれば起きるさ。」

「多分では困るのだが…。」

 敵意はないようである。

「ともかく、知り合いが居て助かった。」

 そう言うとその男は、メイ様をこちらに預けた。その男の言う通り、眠っているだけのようで安心する。

「あぁ、少し聞きたいのだけど…こいつはいったいどこで手に入れたんだ?」

 そう言うとその男は1本のナイフを取り出す。

「それは…?」

「そこのおてんばが持ってた。」

「メイ様が!?」

 私も見たことのないナイフだ。いったいどこから…それに少し禍々しい魔力を感じる。

「まあ、知らないなら知らないでいい。良ければちょっと預かろうと思ってな。」

「なぜおまえが…?」

「出所を知りたくてな。こいつは下手をすれば世界を終わらせる代物だ。」

「ならなおのこと看過はできん。」

「そうか…ならひとつだけ、これだけ守ってくれ。こいつを使って人を殺すんじゃないぞ?」

「どういう忠告だ…私は殺しなんてしない。」

「あんたもそうだが、そこのおてんばにもな。そいつ、破滅願望があるみたいだ。」

「はあ、何かやらかしたか?」

「まあ、盛大にな。」

「それはすまないことをした。」

「それじゃ、僕はこれで―――――。」

「待て、おまえ、名前は?」

「ああ…イール。」

 イール…やはりこいつが。

「もう少し、お話をしたいのだけど、よろしいかしら?」

「おや、急に態度が変わったね。」

 下手をすればこの世界が今、終わる。

「僕について…何を知りたいのかな?」

「ここだと少し一目が多い。」

「それもそうだね。」

「了承と見ていいね?【心界顕現】」

 こいつと話をするのであればここしかない。そうして、私はイールをその世界に持ち込むことに成功したのだった。


「いや、しかし...酷くないかい?」

「何がだ?」

「どうして僕が縛られなきゃならんのさ?」

 捕縛し、吊り上げられた彼はそう言う。

「いいか、君は我が国において最も危険と見なされている人物だ。私の心理世界と言えどこのくらいはする。」

「心理世界ねぇ…まあ、いいさ。何を知りたい?」

「単刀直入に言う…おまえは世界を滅ぼす気はあるのか?」

「あるわけねぇよ。人殺しはもう勘弁だ。」

「…今まで何人殺した…?」

「さあ?」

「…呆れた…。」

「まあ、君も知らんだろうから僕の全てを話してやろう。突拍子もない話だが信じてくれるかい?」

「…話せ。」

「まず、僕は6000年前の世界から来た。」

「な、なんだと!?」

「まあ、そんな反応になるだろうね。何せこの世界では1000年前以降の文献はほとんど残っていない。それは1度文明が滅んだから…らしい。」

「そんな…。」

「まあ、これは僕も先ほど知ったことだ。それで6000年前、僕は魔術の神と呼ばれていてね。いろいろな宗教の派閥に捕らえられては偶像にされ、兵器として扱われてきた。」

「兵器だと?」

「ああ、それでいくつもの命を消してきた。」

「…。」

「無論耐えられる話じゃなかったんでな。こんな未来まで逃げてきたと、そう言うわけだよ。他に質問は?」

「…い、いやいや、情報が多すぎる…。」

「だろうな、まあ、信じようが信じまいがそれは君たち次第だ。僕は好き勝手生きるって決めたんでな。誰の味方でもない。」

「ま、まあ、事情は解ったが…にわかには信じられん。」

 いや、でも冷静に考えれば私も異世界転生してるし…6000年前の神みたいな人が居てもおかしくは無いのか…?

「それでいいさ。」

「…なら、もう1つ聞いていいか?」

「何なりと。」

「先のナイフ…あれはなんだ?」

「何でも1000年前の戦争の残骸らしいな。あれだけはきちんと保管しておけ。とんでもないことになるぞ?」

「わ、解った。忠告感謝する。」

「さて、君が聞きたいのはこの辺かな?」

「あ、ああ…。」

 終始圧倒である。これがイールと言う男か…。

「まあ、また何かあったら言ってくれ。僕らは飛竜の森の奥に居るから。」

 そう言うと、イールはまさかの一言を呟いた。

「【解除】だ。」

 呆気に取られたが…私の心理世界はそれにより解除された。これがイールと言う男の実力…圧倒的強者。

「あれは勝てないな…。」

 メイ様を抱えながら、彼の背中にそう呟くのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。 「あれ?なんか身体が軽いな」 その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。 これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!

処理中です...