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第5章
オリーブの知らない男性達でした
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オリーブの知らない男性達でした。
「やめて…。」
声がふるえて、音になりません。息を大きく吸って、もう一度、
「お願い、もうやめて!」
オリーブは叫びました。今度はちゃんと音になりました。目の前の二人と、目が合いました。首に近づけられた扇が、触れました。その冷たい感触を感じました。
「お願いします。逃げてください。私なんかにかまわず早く逃げて!」
知らない男性でした。一人は青い瞳で、もう一人はこげ茶色の目で、戦う意志は失っていませんでした。でも、傷を負うにつれて、にごっていきます。
「あなたたちが傷つく必要はないんです、だから、逃げて!」
首筋に感じる冷たさは、氷を当てられているかのようでした。
首に一筋、自分の血が流れるのを感じました。熱いので、見えなくても、わかりました。白いブラウスのえりに染みて、じわり広がっているのでしょう。これだけの傷で痛いのに、目の前の彼らはどれだけの痛みにたえているのでしょう。そう思うと、涙があふれてきました。
「でも、」
と声をあげたソルトに、またもシルヴェーヌが火の玉を落とします。
オリーブは傷ついた二人をこれ以上見ることが出来ませんでした。目をそらします。
「私ならもういいです。いいんです、死ぬ覚悟ならとうに出来ていました。」
あふれた涙はこぼれて、オリーブのほおを伝います。
「できるか。」
爆発が、洞窟をゆらしました。その音に負けないよう、ソルトは叫びました。
「君をおいて行くなんてできるか!」
彼はいつだって、難しく考えることは出来ません。ただ、目の前で誰かが傷ついているのなら、
「だって俺は、君を助けに来たんだから!」
自分が助ける。それだけです。
「一緒にあの村まで帰ろう。」
オリーブは首を横に振りました。ソルトは、本当は言葉をつむぐのも苦しいのですが、それを感じさせないように微笑みかけました。
「君のおじいさんも、村の人もみんな悲しんでた。君が帰って来て欲しいって…!」
「でも、でも、」
両手をしばられているため、涙をぬぐうことも出来ません。ほおをぬらしながら、彼女は思います。自分が村に帰ることで、また村を壊されやしないだろうか。誰かが傷つくのなんて見たくありません。目の前の二人だって、自分が人質にならなければ傷つかずにすんだのです。悲しくて涙が止まりません。
「あああ!」
突然、ガナッシュが叫びました。彼もまた難しいことは嫌いです。
「あんたはどうしたいんだ?」
「私、は、」
「他の人のこととか俺たちのこととか考えんな!」
横でソルトも、首を縦に振ります。
「あんたはどうしたい?死にたいのか?それとも、生きたいのか?」
オリーブは目をふせました。
「…生きたい。」
守りたかった人達がいる。守りたかった村の生活。
「こんなところで、死にたくなんかない…。」
そこに自分も居たい。生きたい。最後の方は音にならずに消えていきましたが、その言葉は彼らにちゃんと届きました。ソルトはオリーブに微笑みかけます。
「オリーブさん。絶対助けるから。」
「ほう。動けないくせにそんなことを言うのか?」
ずっと黙っていたシルヴェーヌが口を開くと、さらに重力が増しました。オリーブはたまらず二人から顔をそむけます。
「大丈夫。俺は、負けないよ。」
とソルトが言うと、
「俺だって…。」
ガナッシュだって負けてはいられません。
「オリーブさん、安心して。俺たちは大丈夫。」
「…多分。」
大きなため息をついたシルヴェーヌは
「しつこいのう。火じゃなくて氷にしてみるか。」
そう言って、一度まぶたを閉じ、開きます。するどい氷の刃が出現しソルトとガナッシュに突き刺さりました。あちこちから血がにじみます。
「傷が…。」
オリーブが息をのみ、つぶやきます。涙でゆがむ視界でも、その赤はあざやかに映ります。
「大丈夫!」
とソルトが言いました。
「た、多分…。」
とガナッシュが言いました。
「オリーブさん。」
呼ばれて、オリーブがソルトの方を向きます。
「俺はあきらめない。君は絶対助ける。だから、君もあきらめないで。」
彼女は涙がこぼれて何も言えませんでした。しかし、小さくうなずきました。
「やめて…。」
声がふるえて、音になりません。息を大きく吸って、もう一度、
「お願い、もうやめて!」
オリーブは叫びました。今度はちゃんと音になりました。目の前の二人と、目が合いました。首に近づけられた扇が、触れました。その冷たい感触を感じました。
「お願いします。逃げてください。私なんかにかまわず早く逃げて!」
知らない男性でした。一人は青い瞳で、もう一人はこげ茶色の目で、戦う意志は失っていませんでした。でも、傷を負うにつれて、にごっていきます。
「あなたたちが傷つく必要はないんです、だから、逃げて!」
首筋に感じる冷たさは、氷を当てられているかのようでした。
首に一筋、自分の血が流れるのを感じました。熱いので、見えなくても、わかりました。白いブラウスのえりに染みて、じわり広がっているのでしょう。これだけの傷で痛いのに、目の前の彼らはどれだけの痛みにたえているのでしょう。そう思うと、涙があふれてきました。
「でも、」
と声をあげたソルトに、またもシルヴェーヌが火の玉を落とします。
オリーブは傷ついた二人をこれ以上見ることが出来ませんでした。目をそらします。
「私ならもういいです。いいんです、死ぬ覚悟ならとうに出来ていました。」
あふれた涙はこぼれて、オリーブのほおを伝います。
「できるか。」
爆発が、洞窟をゆらしました。その音に負けないよう、ソルトは叫びました。
「君をおいて行くなんてできるか!」
彼はいつだって、難しく考えることは出来ません。ただ、目の前で誰かが傷ついているのなら、
「だって俺は、君を助けに来たんだから!」
自分が助ける。それだけです。
「一緒にあの村まで帰ろう。」
オリーブは首を横に振りました。ソルトは、本当は言葉をつむぐのも苦しいのですが、それを感じさせないように微笑みかけました。
「君のおじいさんも、村の人もみんな悲しんでた。君が帰って来て欲しいって…!」
「でも、でも、」
両手をしばられているため、涙をぬぐうことも出来ません。ほおをぬらしながら、彼女は思います。自分が村に帰ることで、また村を壊されやしないだろうか。誰かが傷つくのなんて見たくありません。目の前の二人だって、自分が人質にならなければ傷つかずにすんだのです。悲しくて涙が止まりません。
「あああ!」
突然、ガナッシュが叫びました。彼もまた難しいことは嫌いです。
「あんたはどうしたいんだ?」
「私、は、」
「他の人のこととか俺たちのこととか考えんな!」
横でソルトも、首を縦に振ります。
「あんたはどうしたい?死にたいのか?それとも、生きたいのか?」
オリーブは目をふせました。
「…生きたい。」
守りたかった人達がいる。守りたかった村の生活。
「こんなところで、死にたくなんかない…。」
そこに自分も居たい。生きたい。最後の方は音にならずに消えていきましたが、その言葉は彼らにちゃんと届きました。ソルトはオリーブに微笑みかけます。
「オリーブさん。絶対助けるから。」
「ほう。動けないくせにそんなことを言うのか?」
ずっと黙っていたシルヴェーヌが口を開くと、さらに重力が増しました。オリーブはたまらず二人から顔をそむけます。
「大丈夫。俺は、負けないよ。」
とソルトが言うと、
「俺だって…。」
ガナッシュだって負けてはいられません。
「オリーブさん、安心して。俺たちは大丈夫。」
「…多分。」
大きなため息をついたシルヴェーヌは
「しつこいのう。火じゃなくて氷にしてみるか。」
そう言って、一度まぶたを閉じ、開きます。するどい氷の刃が出現しソルトとガナッシュに突き刺さりました。あちこちから血がにじみます。
「傷が…。」
オリーブが息をのみ、つぶやきます。涙でゆがむ視界でも、その赤はあざやかに映ります。
「大丈夫!」
とソルトが言いました。
「た、多分…。」
とガナッシュが言いました。
「オリーブさん。」
呼ばれて、オリーブがソルトの方を向きます。
「俺はあきらめない。君は絶対助ける。だから、君もあきらめないで。」
彼女は涙がこぼれて何も言えませんでした。しかし、小さくうなずきました。
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