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彼女の素顔 3
「潤くん、あれって潤くんの……」
「うん……でももういいんだ、本音も本性も知れたし」
「大丈夫……?顔色悪いよ」
「ごめん英梨さん、もう帰ろう」
俺と英梨さんがそのまま店を立ち去ろうとしたとき、金髪の男に肩を抱かれて席を立ちこちらに向かって歩いてきた吉野と目が合った。
吉野は俺の姿に気が付くと、大きく目を見開き慌てふためく。
「どうした茉央?早く行こうぜ」
さっきまで話のネタにしていた『御曹司』が俺だと知らない金髪の男は、俺の目の前で吉野を抱き寄せた。
「お似合いだな、吉野」
「あっ……違うの三島くん、これはその……小さい頃から仲のいい友達で……」
吉野は金髪の男の手を振り払って必死で取り繕おうとしている。
この状況でどれだけ言い訳したって無駄だってわからないのかな。
何も言わずに別れてやろうと思っていたけれど、俺も吉野の本音を聞いたことだし、吉野にも俺の本音を聞かせてやるのがスジってもんだろう。
「いまさら言い訳しても無駄だ、全部聞こえてたから。 俺は吉野がしつこいからしかたなく付き合ってやってたけど、吉野のことなんか全然好きじゃないから触りたくもなかっただけ。無理してやんなくて良かったわ。今からその男と行くんだろ?好きなだけやってもらえよ。じゃあな」
俺が店を出て足早に歩いていると、英梨さんが小走りに俺のあとを追いかけて来る。
「潤くん、待って!」
俺を好きだと思ってた女にかげであんなこと言われているところに一緒に居合わせたなんてカッコ悪くて、こんな情けない顔を見られたくなくて、英梨さんの声が聞こえているのに俺はペースを落とすことなく歩き続ける。
「潤くん!」
追いかけてきた英梨さんは俺の腕をつかんだ。
「ごめん、さすがにちょっとカッとなってて……ひとりになって頭冷やしたいんだ。俺は先に帰ってるから、英梨さんはゆっくり帰ってきていいよ」
無理に作り笑いを浮かべてそう言うと、英梨さんは何も言わずにうなずいて手を離した。
本当は英梨さんも俺のことをつまらない男だと思っているから、何も言えなかったのかも知れない。
家に帰るといつもはリビングで一息つくけど、今日はそのまままっすぐ自分の部屋に入った。
エアコンをつけて鞄を床に置き、制服のネクタイを外してベッドに倒れ込む。
昨日の吉野の言葉は全部嘘だったんだと思うと、吉野を傷付けないように精一杯気を遣っていたことがバカらしく思えた。
俺は誰と付き合ってもうまくいったことがないから、好きになってくれた相手に本気で恋をして、彼女を大事にしたいと素直に言える太一が、正直言うと心底うらやましい。
やっぱり実の母親からも愛されなかった俺を本気で好きになってくれる人なんて、いないのかも知れない。
そして愛されることを知らない俺自身も、きっと誰も愛せない。
俺のそういうところが、誰にとってもつまらないんだと思う。
そんな俺に一番嫌気がさしているのは、ほかでもない俺自身だ。
とにかく今はどうしようもなく虚しくて、砂漠みたいにカラカラに渇いた心に、誰でもいいから愛情という名の水を注いで、いっぱいに満たして欲しいと思ってしまう。
俺を好きだと言ってくれるなら、相手は吉野でも他の誰でも良かったんだ。
だから本当のことなんか知りたくなかった。
嘘でもいいから、誰か俺のことを好きだと言って安心させて。
そうすれば俺は明日からも、自分の足で立って歩くことができるはずだから。
「うん……でももういいんだ、本音も本性も知れたし」
「大丈夫……?顔色悪いよ」
「ごめん英梨さん、もう帰ろう」
俺と英梨さんがそのまま店を立ち去ろうとしたとき、金髪の男に肩を抱かれて席を立ちこちらに向かって歩いてきた吉野と目が合った。
吉野は俺の姿に気が付くと、大きく目を見開き慌てふためく。
「どうした茉央?早く行こうぜ」
さっきまで話のネタにしていた『御曹司』が俺だと知らない金髪の男は、俺の目の前で吉野を抱き寄せた。
「お似合いだな、吉野」
「あっ……違うの三島くん、これはその……小さい頃から仲のいい友達で……」
吉野は金髪の男の手を振り払って必死で取り繕おうとしている。
この状況でどれだけ言い訳したって無駄だってわからないのかな。
何も言わずに別れてやろうと思っていたけれど、俺も吉野の本音を聞いたことだし、吉野にも俺の本音を聞かせてやるのがスジってもんだろう。
「いまさら言い訳しても無駄だ、全部聞こえてたから。 俺は吉野がしつこいからしかたなく付き合ってやってたけど、吉野のことなんか全然好きじゃないから触りたくもなかっただけ。無理してやんなくて良かったわ。今からその男と行くんだろ?好きなだけやってもらえよ。じゃあな」
俺が店を出て足早に歩いていると、英梨さんが小走りに俺のあとを追いかけて来る。
「潤くん、待って!」
俺を好きだと思ってた女にかげであんなこと言われているところに一緒に居合わせたなんてカッコ悪くて、こんな情けない顔を見られたくなくて、英梨さんの声が聞こえているのに俺はペースを落とすことなく歩き続ける。
「潤くん!」
追いかけてきた英梨さんは俺の腕をつかんだ。
「ごめん、さすがにちょっとカッとなってて……ひとりになって頭冷やしたいんだ。俺は先に帰ってるから、英梨さんはゆっくり帰ってきていいよ」
無理に作り笑いを浮かべてそう言うと、英梨さんは何も言わずにうなずいて手を離した。
本当は英梨さんも俺のことをつまらない男だと思っているから、何も言えなかったのかも知れない。
家に帰るといつもはリビングで一息つくけど、今日はそのまままっすぐ自分の部屋に入った。
エアコンをつけて鞄を床に置き、制服のネクタイを外してベッドに倒れ込む。
昨日の吉野の言葉は全部嘘だったんだと思うと、吉野を傷付けないように精一杯気を遣っていたことがバカらしく思えた。
俺は誰と付き合ってもうまくいったことがないから、好きになってくれた相手に本気で恋をして、彼女を大事にしたいと素直に言える太一が、正直言うと心底うらやましい。
やっぱり実の母親からも愛されなかった俺を本気で好きになってくれる人なんて、いないのかも知れない。
そして愛されることを知らない俺自身も、きっと誰も愛せない。
俺のそういうところが、誰にとってもつまらないんだと思う。
そんな俺に一番嫌気がさしているのは、ほかでもない俺自身だ。
とにかく今はどうしようもなく虚しくて、砂漠みたいにカラカラに渇いた心に、誰でもいいから愛情という名の水を注いで、いっぱいに満たして欲しいと思ってしまう。
俺を好きだと言ってくれるなら、相手は吉野でも他の誰でも良かったんだ。
だから本当のことなんか知りたくなかった。
嘘でもいいから、誰か俺のことを好きだと言って安心させて。
そうすれば俺は明日からも、自分の足で立って歩くことができるはずだから。
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