愛したい、愛されたい ─心を満たしてくれた君へ─

櫻井音衣

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裏切りの真実 2

土田さんが仕事を終えて帰ったあと、俺は何時間もリビングのソファーに力なく横たわって天井を見上げていた。
『プライベートなことだから本当は話すべきじゃないのだけど、ここだけの話ということで』と前置きをして、土田さんは食事の支度をしながら英梨さんのことを話してくれた。

土田さんの話によると、英梨さんの実家は小さな工務店を営んでいて、英梨さんも短大を卒業後は一緒に働き両親を助けていたそうだ。
しかし数年前に経営が傾いて倒産の危機に陥ったとき、取引先の社長が息子と結婚してくれるなら両親の会社を援助すると英梨さんに言ったらしい。
両親のためにその人と結婚することを決めた英梨さんは、せめて少しの間だけでも自分の好きなことをしたいと言って、まさき家事代行サービスに勤め始めた。
婚約者はとてもいい人で英梨さんを大事にしてくれたようだけど、英梨さんはいつも、「ずっと親の言う通りにしてきたけど、せめて一度くらいは大恋愛もしてみたかったし、結婚相手くらいは自分で決めたかった」と言っていたそうだ。
英梨さんは10月に結婚することになり、「結婚するギリギリまで働いていたい」と言って9月末で退職することを決めたのは、俺と出会うより少し前の7月に入ってすぐだったらしい。

土田さんの話を要約すると、英梨さんは俺と出会う前にはすでに親のために結婚することが決まっていたんだ。
英梨さんは婚約者を裏切り、俺を好きだと言って関係を持った。
そして俺には本当のことは何も言わず黙って姿を消し、俺のことも裏切って、きっと何食わぬ顔をして好きでもない男と結婚するんだろう。
もしかしたら俺を好きだと言っていたのも、一時の気の迷いとか、愛を知らないかわいそうな子どもを放っておけなかったとか、望まぬ結婚の前の最後の恋愛ごっこのつもりだったのかも知れない。
なんにせよ、俺だけを心の底から愛してくれる人なんて、どこにもいないということだ。


それからの俺は英梨さんのことを忘れようと勉強に没頭し、10月の下旬には無事に志望校の推薦入試に合格した。
目標を失った途端、からっぽでつまらない俺の毎日は虚しくなって、友達と遊んでいてもバレー部に顔を出して後輩に混ざって練習していても、とにかく何をしても楽しいとは思えなかった。
彼女でも作ったらどうかと友達が女の子を紹介してくれようともしたけれど、とてもそんな気にはなれなかった。
紹介を断りきれずに俺を好きだと言う他校の女子と付き合い出しても、前と同じでまったく本気になどなれず、短期間で相手に別れを切り出されて終わった。
そんなことを繰り返しているうちに、無理して人と関わって楽しんでいるふりをすることにも疲れてきて、学校に行く以外は家に引きこもるようになった。



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