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飲み過ぎたつらい夜と二日酔いの甘い朝
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ゆうべの緒川支部長を思い出すと、ほんの少し胸が痛んだ。
大嫌いだと思っていた人の意外な一面を見た事で、勘違いしてしまったかも知れない。
甘い声に酔わされて、がらにもなくときめいてしまった。
もしかしたら今度こそ幸せな恋愛ができるかもと、どこかで期待していた自分を嘲笑う。
(バカは私か……。来るかどうかもわからないのに待ってるなんて……)
虚ろな目をして頬杖をつき、涙のようにグラスを伝う水滴を人差し指で拭うと、いつかのつらい恋の記憶が愛美の脳裏に蘇る。
(最初は優しかったのに……そのうち散々頼って、甘えて、たかるだけたかって、知らないうちに女とどっかに消えちゃうんだもんなぁ……。結局、どれだけ待っても帰って来なかった……。みんな最初は優しくても、だんだん本性現してさ……暴言吐いたり殴ったり蹴ったり浮気したり……。それって私が悪いのか……?)
結局、男運の悪い自分にはろくな男が寄り付かないのかも知れないと苦笑いをして、愛美はグラスの水割りを一気に飲み干した。
知らず知らずのうちに溢れた涙が頬を伝う。
(情けないな……。私がどんなに愛したって、誰も本気で愛してなんかくれないのに……。もうじゅうぶん懲りたはずなのに、期待なんかしてバカみたい……)
ゆっくりと立ち上がり、ふらつく足取りでレジへ向かう愛美をマスターが慌てて呼び留めた。
「あれ?愛美ちゃん、帰るの?」
「どうせもう来ないよ。待ってろって自分から言ったくせにいつまで経っても来ない男と付き合うなんて、やっぱ無理だわ」
愛美は涙で頬を濡らしたまま、力なく作り笑いを浮かべる。
「もう少し待ってやってよ」
「ううん、帰る。お勘定して」
バッグから財布を取り出そうとしてふらついた愛美が、ドアを開けて慌てて店に入ってきた男に倒れ込んだ。
愛美はゆっくりと顔を上げて、ぼやけた視界に映るその男の顔に目を凝らす。
(……支部長?)
仕事の後、そのままここに来たのだろう。
愛美の大嫌いな緒川支部長の姿がそこにあった。
「菅谷……遅くなってごめん」
「政弘!間に合って良かった。愛美ちゃん、もう帰るって」
愛美は握りしめた拳で、緒川支部長の胸を思いっきり叩いた。
「離して!!もう帰る!!」
「ごめん……」
「離せってば!」
目に涙を浮かべながら何度も胸を叩く愛美を、緒川支部長は強く抱きしめる。
「すみません先輩、菅谷を連れて帰ります。勘定は……」
「今度でいいから、早く連れて帰ってやりな」
「はーなーせー!!」
緒川支部長はマスターに頭を下げると、酔って暴れる愛美を抱えるようにして店を出た。
店の前に停車していた車の助手席に押し込むようにして愛美を乗せてシートベルトを絞めたあと、運転席に座ってシートベルトを絞め、車のドアをロックして車を走らせた。
愛美は車の中でもひどい悪態をつく。
「どこに連れてく気だー!!今すぐ降ろせー!!おまえなんか嫌いだー!!何が約束だよ!!何が大事にするだよ!!嘘つき!!」
「ごめん……」
「やっぱ無理!自分から誘っといて何時間も待たせる男と付き合うなんて絶対無理だわ!」
「ホントにごめん、悪かった……」
どんなに罵倒されても、緒川支部長は言い訳もせず、ただ申し訳なさそうに謝り続けた。
大声で散々悪態をついていた愛美の声が、次第に力ない涙声に変わっていく。
「好きだなんて言って、優しいふりなんかしないでよ……。どうせあんたも私のこと殴ったり蹴ったり裏切ったりするんでしょ……」
「えっ?!そんなことしないよ!」
「嘘つき……。そのうち私のことなんか捨ててどっか行っちゃうくせに……」
思いもよらぬ言葉に驚いて緒川支部長がチラリと視線を向けると、愛美は聞き取れないほど小さな声で何かを呟いて、涙を流しながらゆっくりと目を閉じた。
信号が赤になり、緒川支部長はゆっくりとブレーキを踏んだ。
助手席では頬にいくつもの涙の筋を作った愛美が眠っている。
緒川支部長は愛美の頭を優しく撫でて、額に口づけた。
「待たせてごめん、菅谷……。好きだよ……」
翌朝。
目覚めた愛美はゆっくりとまぶたを開き、見慣れない天井を見上げた。
ここが一体どこなのか、なぜそんな知らない場所にいるのかさっぱりわからない。
だけど頭が重くて起き上がる気にもなれず、ぼんやりとしたまま寝返りを打つと、視界の隅にソファーで横になって眠っている緒川支部長の姿が映る。
(……え?支部長?!)
愛美は慌てて起き上がろうとした。
しかし体に力が入らず、意思に反してグラグラと不安定に揺れる。
「えぇっ……何これ……?」
大嫌いだと思っていた人の意外な一面を見た事で、勘違いしてしまったかも知れない。
甘い声に酔わされて、がらにもなくときめいてしまった。
もしかしたら今度こそ幸せな恋愛ができるかもと、どこかで期待していた自分を嘲笑う。
(バカは私か……。来るかどうかもわからないのに待ってるなんて……)
虚ろな目をして頬杖をつき、涙のようにグラスを伝う水滴を人差し指で拭うと、いつかのつらい恋の記憶が愛美の脳裏に蘇る。
(最初は優しかったのに……そのうち散々頼って、甘えて、たかるだけたかって、知らないうちに女とどっかに消えちゃうんだもんなぁ……。結局、どれだけ待っても帰って来なかった……。みんな最初は優しくても、だんだん本性現してさ……暴言吐いたり殴ったり蹴ったり浮気したり……。それって私が悪いのか……?)
結局、男運の悪い自分にはろくな男が寄り付かないのかも知れないと苦笑いをして、愛美はグラスの水割りを一気に飲み干した。
知らず知らずのうちに溢れた涙が頬を伝う。
(情けないな……。私がどんなに愛したって、誰も本気で愛してなんかくれないのに……。もうじゅうぶん懲りたはずなのに、期待なんかしてバカみたい……)
ゆっくりと立ち上がり、ふらつく足取りでレジへ向かう愛美をマスターが慌てて呼び留めた。
「あれ?愛美ちゃん、帰るの?」
「どうせもう来ないよ。待ってろって自分から言ったくせにいつまで経っても来ない男と付き合うなんて、やっぱ無理だわ」
愛美は涙で頬を濡らしたまま、力なく作り笑いを浮かべる。
「もう少し待ってやってよ」
「ううん、帰る。お勘定して」
バッグから財布を取り出そうとしてふらついた愛美が、ドアを開けて慌てて店に入ってきた男に倒れ込んだ。
愛美はゆっくりと顔を上げて、ぼやけた視界に映るその男の顔に目を凝らす。
(……支部長?)
仕事の後、そのままここに来たのだろう。
愛美の大嫌いな緒川支部長の姿がそこにあった。
「菅谷……遅くなってごめん」
「政弘!間に合って良かった。愛美ちゃん、もう帰るって」
愛美は握りしめた拳で、緒川支部長の胸を思いっきり叩いた。
「離して!!もう帰る!!」
「ごめん……」
「離せってば!」
目に涙を浮かべながら何度も胸を叩く愛美を、緒川支部長は強く抱きしめる。
「すみません先輩、菅谷を連れて帰ります。勘定は……」
「今度でいいから、早く連れて帰ってやりな」
「はーなーせー!!」
緒川支部長はマスターに頭を下げると、酔って暴れる愛美を抱えるようにして店を出た。
店の前に停車していた車の助手席に押し込むようにして愛美を乗せてシートベルトを絞めたあと、運転席に座ってシートベルトを絞め、車のドアをロックして車を走らせた。
愛美は車の中でもひどい悪態をつく。
「どこに連れてく気だー!!今すぐ降ろせー!!おまえなんか嫌いだー!!何が約束だよ!!何が大事にするだよ!!嘘つき!!」
「ごめん……」
「やっぱ無理!自分から誘っといて何時間も待たせる男と付き合うなんて絶対無理だわ!」
「ホントにごめん、悪かった……」
どんなに罵倒されても、緒川支部長は言い訳もせず、ただ申し訳なさそうに謝り続けた。
大声で散々悪態をついていた愛美の声が、次第に力ない涙声に変わっていく。
「好きだなんて言って、優しいふりなんかしないでよ……。どうせあんたも私のこと殴ったり蹴ったり裏切ったりするんでしょ……」
「えっ?!そんなことしないよ!」
「嘘つき……。そのうち私のことなんか捨ててどっか行っちゃうくせに……」
思いもよらぬ言葉に驚いて緒川支部長がチラリと視線を向けると、愛美は聞き取れないほど小さな声で何かを呟いて、涙を流しながらゆっくりと目を閉じた。
信号が赤になり、緒川支部長はゆっくりとブレーキを踏んだ。
助手席では頬にいくつもの涙の筋を作った愛美が眠っている。
緒川支部長は愛美の頭を優しく撫でて、額に口づけた。
「待たせてごめん、菅谷……。好きだよ……」
翌朝。
目覚めた愛美はゆっくりとまぶたを開き、見慣れない天井を見上げた。
ここが一体どこなのか、なぜそんな知らない場所にいるのかさっぱりわからない。
だけど頭が重くて起き上がる気にもなれず、ぼんやりとしたまま寝返りを打つと、視界の隅にソファーで横になって眠っている緒川支部長の姿が映る。
(……え?支部長?!)
愛美は慌てて起き上がろうとした。
しかし体に力が入らず、意思に反してグラグラと不安定に揺れる。
「えぇっ……何これ……?」
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