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サプライズはビックリさせてなんぼですが、予期せぬカミングアウトは歓迎しません
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「ありがと。頼もしいね、リナっちは」
「何言ってるんですか、私は何があってもモモ先輩の味方ですからね!行きましょう!」
私がリナっちと一緒に席に戻っても、水野さんはこちらを気にする様子もなく、キヨと兄者と共に高校時代の思い出話に夢中になっていた。
尚史は相変わらず黙ったままだ。
「一体なんのために来たんだか……。一言『おめでとう』って言ったんだから、もう帰ればいいのに」
私の隣でリナっちが忌々しそうに呟く。
「まあまあ……。気持ちはわかるけど、ここは抑えて、リナっち」
「そうですね。元はと言えば余計な客を連れてきたのは兄だから、帰ったら兄をボコボコにします」
なんて怖い妹だ!
この兄妹は普段から妹の方が強いのかも知れない。
リナっちは念を送るかのように兄者をにらみつけているけれど、当の兄者はまったく気付いていないらしい。
「せっかくだから飲もう、リナっち」
「飲みましょう!」
お互いのグラスにビールを注いで飲み始めると、水野さんが初めて私たちの方を向いた。
その顔に笑みを浮かべてはいるけれど、なんとなく挑戦的な視線を感じる。
もしかしてとは思ってたけど、水野さんって尚史の元カノなのでは?
高校時代に二人が付き合っていたのであれば、キヨも兄者ももちろん知っているだろうし、兄者もこんなめでたい席に尚史の元カノを連れて来ようとは思わないだろう。
とすると、尚史と水野さんは大学も同じだったと言っていたから、二人は大学時代に付き合っていて、名古屋の大学に進学してそのまま就職した兄者はそれを知らなかったとか?
もちろんこれは私の憶測だけど、イヤな予感ほど当たるものだし、これが事実なら、さっきからずっと拭えない違和感の説明がつく。
だけどもしそうだとしても、過去は過去だ。
尚史は誰と付き合っても相手のペースに合わせようとせず長続きしなかったと言っていたし、水野さんもきっとそのうちの一人で、何度か二人で食事をしたとか、大学構内で行動を共にしていたとか、それくらいの関係なんだろう。
……と、思いたい。
「それにしても、あのヒサが結婚したとはね。トシから聞いてビックリしたわ」
あのってどういう意味?
高校時代の尚史は、それほど将来結婚しなさそうなキャラだったんだろうか?
「高校時代に『死ぬほど好きだ』って言ってた女の子が相手だって聞いて、納得はしたけどね」
納得はした?
そこは普通に納得したで良くない?
「まさか本当に、ずっと片想いしてた幼馴染みと結婚しちゃうなんて、ヒサって気が長いのね。そこまでいくと怖いくらい」
水野さんはさっきからなんだか妙に引っ掛かる言い方をする。
この人酔ってんのかな?
それともシラフで私にケンカ売ってる?
もしかしてそれが目的でここに来たってわけじゃないよね?
少々苛立ちはするけれど、ここで私が『ケンカ売ってんのかゴルァ!』などとキレてしまったら最悪だ。
気にしない、気にしない。
私は自分にそう言い聞かせながら、ひきつった作り笑いを浮かべてビールを飲んだ。
リナっちはさっきから歯を食い縛り、膝の上で拳を握りしめ、肩を小刻みに震わせている。
これはヤバイ。
どうやらリナっちの忍耐が限界に近付いているようだ。
「何言ってるんですか、私は何があってもモモ先輩の味方ですからね!行きましょう!」
私がリナっちと一緒に席に戻っても、水野さんはこちらを気にする様子もなく、キヨと兄者と共に高校時代の思い出話に夢中になっていた。
尚史は相変わらず黙ったままだ。
「一体なんのために来たんだか……。一言『おめでとう』って言ったんだから、もう帰ればいいのに」
私の隣でリナっちが忌々しそうに呟く。
「まあまあ……。気持ちはわかるけど、ここは抑えて、リナっち」
「そうですね。元はと言えば余計な客を連れてきたのは兄だから、帰ったら兄をボコボコにします」
なんて怖い妹だ!
この兄妹は普段から妹の方が強いのかも知れない。
リナっちは念を送るかのように兄者をにらみつけているけれど、当の兄者はまったく気付いていないらしい。
「せっかくだから飲もう、リナっち」
「飲みましょう!」
お互いのグラスにビールを注いで飲み始めると、水野さんが初めて私たちの方を向いた。
その顔に笑みを浮かべてはいるけれど、なんとなく挑戦的な視線を感じる。
もしかしてとは思ってたけど、水野さんって尚史の元カノなのでは?
高校時代に二人が付き合っていたのであれば、キヨも兄者ももちろん知っているだろうし、兄者もこんなめでたい席に尚史の元カノを連れて来ようとは思わないだろう。
とすると、尚史と水野さんは大学も同じだったと言っていたから、二人は大学時代に付き合っていて、名古屋の大学に進学してそのまま就職した兄者はそれを知らなかったとか?
もちろんこれは私の憶測だけど、イヤな予感ほど当たるものだし、これが事実なら、さっきからずっと拭えない違和感の説明がつく。
だけどもしそうだとしても、過去は過去だ。
尚史は誰と付き合っても相手のペースに合わせようとせず長続きしなかったと言っていたし、水野さんもきっとそのうちの一人で、何度か二人で食事をしたとか、大学構内で行動を共にしていたとか、それくらいの関係なんだろう。
……と、思いたい。
「それにしても、あのヒサが結婚したとはね。トシから聞いてビックリしたわ」
あのってどういう意味?
高校時代の尚史は、それほど将来結婚しなさそうなキャラだったんだろうか?
「高校時代に『死ぬほど好きだ』って言ってた女の子が相手だって聞いて、納得はしたけどね」
納得はした?
そこは普通に納得したで良くない?
「まさか本当に、ずっと片想いしてた幼馴染みと結婚しちゃうなんて、ヒサって気が長いのね。そこまでいくと怖いくらい」
水野さんはさっきからなんだか妙に引っ掛かる言い方をする。
この人酔ってんのかな?
それともシラフで私にケンカ売ってる?
もしかしてそれが目的でここに来たってわけじゃないよね?
少々苛立ちはするけれど、ここで私が『ケンカ売ってんのかゴルァ!』などとキレてしまったら最悪だ。
気にしない、気にしない。
私は自分にそう言い聞かせながら、ひきつった作り笑いを浮かべてビールを飲んだ。
リナっちはさっきから歯を食い縛り、膝の上で拳を握りしめ、肩を小刻みに震わせている。
これはヤバイ。
どうやらリナっちの忍耐が限界に近付いているようだ。
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