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恋する女は女を敵とし、人は誰しも恋をするとバカになる(要するに愛しい君の一番になりたい)
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食事が済んでからリナっちと簡単に打ち合わせをして、1時間ほど経った頃に店を出た。
電車を降りて歩いていると、尚史は通勤鞄と引っ越し挨拶用に買った荷物を右手にまとめて持ち、左手で私の手を握った。
「あんなに頼んだのに、結局オムライスの作り方教えてもらえなかった」
「残念だったね」
「こうなったら、俺は自分で調べて練習して研究を重ねて、絶対にキヨを超えてみせるからな」
すごいやる気だ。
いつも何事にも無気力だったあの尚史と同一人物だとはとても思えない。
キヨがオムライスの作り方を教えてくれなかった理由が、『尚史が俺よりうまく作れるようになるとは思えないけど、念のためな。オムライスに関しては俺がモモっちのナンバーワンだ。これだけは譲らん』だったから、余計に闘争心に火がついたのだろう。
「料理初心者の尚史がプロのキヨに勝とうと思ったら、すっごい大変なんじゃない?それこそレベル1でボスに挑むくらい無謀だと思うよ」
「だからめちゃくちゃ練習してレベル上げて、絶対に勝つ。最後に姫のハートを射止めて結婚するのは勇者だからな」
「いや、もう結婚しとるがな」
尚史がキヨを超えるのに何年かかるかはわからないけど、どんどん腕前が上達していく尚史を見てみたい。
いや、尚史を見守るだけじゃなくて私も頑張らないと。
「俺がもしキヨよりうまくオムライス作れるようになったら、ご褒美くれる?」
「ご褒美って?」
「うーん、そうさな……制服デートとかしてみたい」
ご褒美がまさかのコスプレ?!
しかも制服って……!
尚史にそんな性癖があったとは!
制服萌えならまだしも、無類のJK好きなんてことはないよね?
「なんで制服……?私たちもう27だよ?」
「高校時代、放課後に制服でモモとデートするのが夢だったんだ。叶わなかったけどな」
尚史は夢見る女子みたいに目をキラキラさせている。
中学生のときはよく他の友達も一緒に下校したけれど、高校は別々だったから、放課後にわざわざ待ち合わせて出掛けるようなこともなかった。
同じ高校に通っていたら、一緒に登下校をしたり、帰りに寄り道をして遊んだり、もしかしたら付き合っていたりもしたのかな。
「でも私、高校の制服なんかもう持ってないよ。尚史は持ってるの?」
「あ、そう言えば持ってない。じゃあ制服じゃなくていいや」
それはもはや普通のデートなのでは?
自分も制服を持っていないのに制服デートを提案するなんて、尚史はちょっと抜けていると思う。
制服デートのことを考えると浮かれてバカになってしまったということか?
「それ、ご褒美でもなんでもなくない?」
「モモとデートできるなら俺は嬉しいけど」
「あのね、尚史。私たち夫婦だからね?ご褒美じゃなくても普通にデートすればいいでしょ?」
「あ、それもそうか。でもオムライスは練習する。絶対にモモの好きなオムライスランキングの1位になる」
この調子だと毎日のようにオムライスを食べることになりそうだ。
あまりにもオムライスが続いたら食傷してしまうのではないかと心配になってきた。
「オムライスもいいけど……やっぱり他の料理も食べたいから、私も一緒に練習しようかな。尚史に美味しいもの食べさせてあげられるようになりたいし」
「俺はモモの作ったものならなんでも食う」
「まずくても?」
「モモが作ったものがまずいわけないだろ。すっげぇ失敗したとしても、俺にとってはモモが作ってくれたってだけで一番うまいんだよ」
尚史は私が作った料理なんてポテトサラダしか食べたことないのに、得意気な顔をしてそう言った。
うん……やっぱりバカだ。
だけどバカになるくらい私のことを好きでいてくれる尚史を、心から愛しいと思う。
電車を降りて歩いていると、尚史は通勤鞄と引っ越し挨拶用に買った荷物を右手にまとめて持ち、左手で私の手を握った。
「あんなに頼んだのに、結局オムライスの作り方教えてもらえなかった」
「残念だったね」
「こうなったら、俺は自分で調べて練習して研究を重ねて、絶対にキヨを超えてみせるからな」
すごいやる気だ。
いつも何事にも無気力だったあの尚史と同一人物だとはとても思えない。
キヨがオムライスの作り方を教えてくれなかった理由が、『尚史が俺よりうまく作れるようになるとは思えないけど、念のためな。オムライスに関しては俺がモモっちのナンバーワンだ。これだけは譲らん』だったから、余計に闘争心に火がついたのだろう。
「料理初心者の尚史がプロのキヨに勝とうと思ったら、すっごい大変なんじゃない?それこそレベル1でボスに挑むくらい無謀だと思うよ」
「だからめちゃくちゃ練習してレベル上げて、絶対に勝つ。最後に姫のハートを射止めて結婚するのは勇者だからな」
「いや、もう結婚しとるがな」
尚史がキヨを超えるのに何年かかるかはわからないけど、どんどん腕前が上達していく尚史を見てみたい。
いや、尚史を見守るだけじゃなくて私も頑張らないと。
「俺がもしキヨよりうまくオムライス作れるようになったら、ご褒美くれる?」
「ご褒美って?」
「うーん、そうさな……制服デートとかしてみたい」
ご褒美がまさかのコスプレ?!
しかも制服って……!
尚史にそんな性癖があったとは!
制服萌えならまだしも、無類のJK好きなんてことはないよね?
「なんで制服……?私たちもう27だよ?」
「高校時代、放課後に制服でモモとデートするのが夢だったんだ。叶わなかったけどな」
尚史は夢見る女子みたいに目をキラキラさせている。
中学生のときはよく他の友達も一緒に下校したけれど、高校は別々だったから、放課後にわざわざ待ち合わせて出掛けるようなこともなかった。
同じ高校に通っていたら、一緒に登下校をしたり、帰りに寄り道をして遊んだり、もしかしたら付き合っていたりもしたのかな。
「でも私、高校の制服なんかもう持ってないよ。尚史は持ってるの?」
「あ、そう言えば持ってない。じゃあ制服じゃなくていいや」
それはもはや普通のデートなのでは?
自分も制服を持っていないのに制服デートを提案するなんて、尚史はちょっと抜けていると思う。
制服デートのことを考えると浮かれてバカになってしまったということか?
「それ、ご褒美でもなんでもなくない?」
「モモとデートできるなら俺は嬉しいけど」
「あのね、尚史。私たち夫婦だからね?ご褒美じゃなくても普通にデートすればいいでしょ?」
「あ、それもそうか。でもオムライスは練習する。絶対にモモの好きなオムライスランキングの1位になる」
この調子だと毎日のようにオムライスを食べることになりそうだ。
あまりにもオムライスが続いたら食傷してしまうのではないかと心配になってきた。
「オムライスもいいけど……やっぱり他の料理も食べたいから、私も一緒に練習しようかな。尚史に美味しいもの食べさせてあげられるようになりたいし」
「俺はモモの作ったものならなんでも食う」
「まずくても?」
「モモが作ったものがまずいわけないだろ。すっげぇ失敗したとしても、俺にとってはモモが作ってくれたってだけで一番うまいんだよ」
尚史は私が作った料理なんてポテトサラダしか食べたことないのに、得意気な顔をしてそう言った。
うん……やっぱりバカだ。
だけどバカになるくらい私のことを好きでいてくれる尚史を、心から愛しいと思う。
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