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取り急ぎ結婚した私たちですが、病めるときも健やかなるときも幾久しく全力で愛し合うことを誓います
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病院に着くと、両親は光子おばあちゃんの病室のある入院病棟へ、私と尚史は結婚式の準備で外来病棟へ行くので、正面玄関を入ってすぐのロビーで別れた。
お礼を言って両親を見送ったあと、尚史はロビーのステンドグラスを見上げて、ひとつ大きく息をついた。
「これからここで、モモと結婚式を挙げるんだなぁ……」
「結婚することになったときには、まさか病院のロビーで結婚式を挙げるとは思ってなかったね」
「そうだけど……俺はモモと式挙げられて、おばあちゃんが喜んでくれればどこでもいいや」
「私も」
尚史が私と同じ気持ちでいてくれることが嬉しい。
私たちはいろいろな段階をすっ飛ばして結婚したけれど、幼馴染みとして一緒に過ごした長い時間は、間違いなく私と尚史を強い絆で結んでくれていると思う。
これからは夫婦として確かな愛情を深めていきたい。
私と尚史はロビーを通り抜け、内科の処置室に向かった。
処置室1を尚史が、処置室2を私が支度部屋として使うことになっていて、それぞれの処置室のドアには、新郎様控え室、新婦様控え室と書かれた紙が貼ってある。
ドアの向こうでは貸衣装レンタルショップのスタッフが、私たちの結婚式の支度をするための準備を整えてくれているようだ。
「じゃあ、またあとでな」
「あとでね」
軽く右手をあげて控え室に入って行く尚史を見ていると、仮想カップルをしていたときの別れ際を思い出した。
それまで見たことのなかった尚史の大人っぽい言動とか、体温や息遣いを間近で感じるほどの近い距離に、いちいちドキドキしたっけな。
仮想カップルだったはずが、まさかこの短期間で本物の夫婦になるなんて、あのときは思いもしなかった。
もし私が『結婚する』と言い出さなかったら、私たちはずっと幼馴染みのままだったのかな?
それともやっぱり何かしらのきっかけとか誰かの後押しなんかがあって、付き合ったり結婚したりしていただろうか。
『もしも』の話をいくらしたって、その選択肢を選んだ人生を見ることはできないけれど、いくつもの偶然と、私と尚史の想いが重なって、私は今、この場所に立っているのだと思う。
あんなめちゃくちゃななりゆきではあったけど、私にとって尚史との結婚は必然だったような気もする。
不思議だけど、人生って、なるようになっているのかも知れない。
それからプロのスタイリストの手によってメイクを施され、ウエディングドレスを着せられた私は、大切な人たちの見守る中、尚史と永遠の愛を誓い合った。
リナっちが奏でるエレクトーンの音がロビーに響きわたり、ここが病院であるということを忘れさせる。
ロビーには招待したみんな以外にも、入院患者やお見舞いに訪れていた人たちがたくさん集まり、未熟な私たちの結婚という人生の門出を祝ってくれた。
私たちはロビーのステンドグラスから射し込む暖かく柔らかな陽射しの元で、指輪の交換をして誓いのキスを交わした。
光子おばあちゃんは一番上等な着物を軽く羽織り、車椅子に座って、終始嬉しそうに目を細めながら私たちを見守ってくれた。
祝福の拍手が降り注ぐ中、これでようやく尚史と本物の夫婦になれたような、そんな気がした。
式の最後に、私は手に持っていたブーケを光子おばあちゃんに渡した。
「光子おばあちゃん、たくさん可愛がってくれて、私と尚史を夫婦にしてくれて、本当にありがとう。ずっと大好きだよ」
私がそう言うと、光子おばあちゃんは少し首をかしげたけれど、その次の瞬間、昔と変わらぬ優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「こちらこそありがとう。モモちゃんの花嫁姿、本当に綺麗だったよ。尚史くんと、うんと幸せになんなさいね」
光子おばあちゃんのその一言で私の涙腺は容易く崩壊した。
このさきどれくらいの時間を共に過ごせるかはわからないけれど、もし光子おばあちゃんが天寿をまっとうする日が来ても、私の中には光子おばあちゃんが大切に愛してくれた記憶が残る。
そして光子おばあちゃんにも、昔からの夢だった私と尚史の結婚式の記憶は少しでも残るはずだ。
いつか来るであろうその日を悔いなく迎えられるように、光子おばあちゃんとの間に残されたわずかな時を、これまで以上に大事にしよう。
私は光子おばあちゃんからたくさんの愛情と、大切な人と共に歩む未来をもらったのだから。
お礼を言って両親を見送ったあと、尚史はロビーのステンドグラスを見上げて、ひとつ大きく息をついた。
「これからここで、モモと結婚式を挙げるんだなぁ……」
「結婚することになったときには、まさか病院のロビーで結婚式を挙げるとは思ってなかったね」
「そうだけど……俺はモモと式挙げられて、おばあちゃんが喜んでくれればどこでもいいや」
「私も」
尚史が私と同じ気持ちでいてくれることが嬉しい。
私たちはいろいろな段階をすっ飛ばして結婚したけれど、幼馴染みとして一緒に過ごした長い時間は、間違いなく私と尚史を強い絆で結んでくれていると思う。
これからは夫婦として確かな愛情を深めていきたい。
私と尚史はロビーを通り抜け、内科の処置室に向かった。
処置室1を尚史が、処置室2を私が支度部屋として使うことになっていて、それぞれの処置室のドアには、新郎様控え室、新婦様控え室と書かれた紙が貼ってある。
ドアの向こうでは貸衣装レンタルショップのスタッフが、私たちの結婚式の支度をするための準備を整えてくれているようだ。
「じゃあ、またあとでな」
「あとでね」
軽く右手をあげて控え室に入って行く尚史を見ていると、仮想カップルをしていたときの別れ際を思い出した。
それまで見たことのなかった尚史の大人っぽい言動とか、体温や息遣いを間近で感じるほどの近い距離に、いちいちドキドキしたっけな。
仮想カップルだったはずが、まさかこの短期間で本物の夫婦になるなんて、あのときは思いもしなかった。
もし私が『結婚する』と言い出さなかったら、私たちはずっと幼馴染みのままだったのかな?
それともやっぱり何かしらのきっかけとか誰かの後押しなんかがあって、付き合ったり結婚したりしていただろうか。
『もしも』の話をいくらしたって、その選択肢を選んだ人生を見ることはできないけれど、いくつもの偶然と、私と尚史の想いが重なって、私は今、この場所に立っているのだと思う。
あんなめちゃくちゃななりゆきではあったけど、私にとって尚史との結婚は必然だったような気もする。
不思議だけど、人生って、なるようになっているのかも知れない。
それからプロのスタイリストの手によってメイクを施され、ウエディングドレスを着せられた私は、大切な人たちの見守る中、尚史と永遠の愛を誓い合った。
リナっちが奏でるエレクトーンの音がロビーに響きわたり、ここが病院であるということを忘れさせる。
ロビーには招待したみんな以外にも、入院患者やお見舞いに訪れていた人たちがたくさん集まり、未熟な私たちの結婚という人生の門出を祝ってくれた。
私たちはロビーのステンドグラスから射し込む暖かく柔らかな陽射しの元で、指輪の交換をして誓いのキスを交わした。
光子おばあちゃんは一番上等な着物を軽く羽織り、車椅子に座って、終始嬉しそうに目を細めながら私たちを見守ってくれた。
祝福の拍手が降り注ぐ中、これでようやく尚史と本物の夫婦になれたような、そんな気がした。
式の最後に、私は手に持っていたブーケを光子おばあちゃんに渡した。
「光子おばあちゃん、たくさん可愛がってくれて、私と尚史を夫婦にしてくれて、本当にありがとう。ずっと大好きだよ」
私がそう言うと、光子おばあちゃんは少し首をかしげたけれど、その次の瞬間、昔と変わらぬ優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「こちらこそありがとう。モモちゃんの花嫁姿、本当に綺麗だったよ。尚史くんと、うんと幸せになんなさいね」
光子おばあちゃんのその一言で私の涙腺は容易く崩壊した。
このさきどれくらいの時間を共に過ごせるかはわからないけれど、もし光子おばあちゃんが天寿をまっとうする日が来ても、私の中には光子おばあちゃんが大切に愛してくれた記憶が残る。
そして光子おばあちゃんにも、昔からの夢だった私と尚史の結婚式の記憶は少しでも残るはずだ。
いつか来るであろうその日を悔いなく迎えられるように、光子おばあちゃんとの間に残されたわずかな時を、これまで以上に大事にしよう。
私は光子おばあちゃんからたくさんの愛情と、大切な人と共に歩む未来をもらったのだから。
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