黒猫クロの孤高のグルメマタタビ編

西山公亮

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黒猫クロの孤高のグルメマタタビ編

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黒猫クロの孤高のグルメ マタタビ編

「あ、あれはまさか…!」

作家の阿倍野平成は、愛猫クロを抱いて入った贖罪売り場で、赤い丸い物を見つけた瞬間、ピンと来た。それは、猫が恍惚状態になることで有名な「マタタビの実」だったのだ。

クロの様子がおかしい。普段はクールな黒猫なのに、瞳孔は開き、地面に背中を付けてぐるぐる回り始めた。まるでダンスをしているようだ。

「にゃあ、にゃあ…」

クロはうっとりとした表情で、身体を地面に擦り付け、喉をゴロゴロと鳴らしている。まるで天にも昇る心地良さそうだ。

「あら?どうしましょう…」

慌てて駆け寄ってきた店員は、困った顔で言った。

「あの…猫ちゃん、マタタビに反応しちゃったみたいですね。うちのお店、ペット同伴OKなんですけど、マタタビはちょっと…」

「あ、いえ、すみません!」

阿倍野は平謝りした。クロはといえば、マタタビの実に夢中で、阿倍野の声も聞こえていないようだ。

「しょうがないわね。ちょっと待っててください。」

店員はそう言うと、店の奥へ消えた。しばらくして、戻ってきた店員の手には、小さな猫用のおもちゃがあった。

「これ、よかったらどうぞ。猫ちゃん、これで遊んでくれるといいわね。」

「ありがとうございます!」

阿倍野は、おもちゃを受け取ると、クロに近づけた。すると、クロはマタタビの実から目を離し、おもちゃに飛びついた。

「よかった…」

阿倍野は安堵のため息をついた。クロは新しいおもちゃに夢中になり、マタタビのことはすっかり忘れてしまったようだ。

「それにしても、クロったら…」

阿倍野は、おもちゃで遊ぶクロを見ながら、苦笑した。マタタビに我を忘れる姿は、まるで別人…いや、別猫のようだった。

「まあ、たまにはいいか。」

阿倍野はそう呟くと、クロを抱き上げて贖罪売り場を後にした。クロは、満足そうに喉を鳴らしていた。
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