黒猫クロの孤高のグルメ

西山公亮

文字の大きさ
1 / 1

黒猫クロの孤高のグルメ牧場編

しおりを挟む


 朝日が差し込む小さな部屋で、俺は目を覚ました。頭の中で森高千里の「渡良瀬橋」がリフレインしている。「♪花畑…」、そうか、今日は牧場に行く日だった。

 俺は阿倍野平成、職業はグルメライター。そして、クロは俺の相棒…というか、いつも勝手に付いてくる黒猫だ。こいつはグルメで、食にはうるさい。

「クロ、行くぞ」

 そう声をかけると、クロはベッドの下から伸びをして、ニャアと鳴いた。

 牧場に着くと、広大な緑の草原と、牛たちの穏やかな鳴き声が迎えてくれた。俺は牛の様子を見ながら、クロは牧場を自由に歩き回っている。

 昼時、牧場主の奥さんが作ってくれたお弁当を広げた。

「わぁ、美味しそう!今日は牛肉と野菜の炒め物ですね!」

 俺は笑顔で箸を伸ばす。すると、クロが俺の足元でニャーニャー鳴き始めた。

「なんだクロ?お腹空いたのか?」

 お弁当のおかずを少し分けてやると、クロは匂いを嗅いでプイッと顔を背けた。

「なんだよ、気に入らないのか?」

 クロは牧草地の方へスタスタと歩いていく。仕方なく、俺はクロの後を追いかけた。

 クロが立ち止まったのは、クローバーの花畑だった。花畑には、ミツバチたちが飛び交っている。

「まさか…お前、蜂蜜が食べたいのか?」

 クロは、得意げにニャアと鳴いた。

「…わかったわかった」

 俺は苦笑しながら、牧場主の奥さんに事情を説明し、蜂蜜を少し分けてもらった。

 クロは、蜂蜜を舐めながら満足そうに目を細めている。

「お前なぁ…グルメにもほどがあるぞ」

 俺は呆れながらも、クロの可愛い仕草に笑みがこぼれた。

 広大な牧草地、新鮮な空気、美味しい料理、そしてクロとの珍道中。

 今日もまた、忘れられない一日になった。

 …それにしても、クロのグルメな舌にはいつも驚かされる。次はどんなものを要求してくるのやら。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...