天から二物も三物も与えられ過ぎた俺がダンジョンで青春を取り戻す

黒丸

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興梠さんの心配

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甲斐君に手を振って駆け足でダンジョン入り口前に向かう。
家のものよりずっと大きな四角いコンクリートと鉄扉。その前に興梠さんと中武さんが立っている。
「おはようございます!来ました。」
「おはよう、秋月くん。」
「おはようございます。ごめんなさい、名指しで呼び出してしまって。」
ぺこりと頭を下げる興梠さん。カウンター越しじゃないのは初めてだ。
「大丈夫です。何かあったんですか?」
「いやね、大したことじゃないんだけど。作戦前の説明の時に、秋月くんにも前に立ってもらおうと思って。」
ええ!?
「いや、それはちょっと…。」
「うん、そう言うとは思ったんだけどね。これは本当に大事なことなんだ。」
「大事、ですか?」
「そう。今日の作戦の中心は秋月くんだ。ようはここに集まった探索者全員が君に命を預けるわけだよ。」
それは確かに…。
「それなのに作戦の中心人物が自分達の中にこそこそと紛れてたらどう思う?あまりいい気分はしないよね。」
そうかな、そうかもしれない。
「やっぱり全員の前に堂々と立ってたほうが気持ちいいと思わないかな?」
「あの、やめてください室長。」
「おっと。」
興梠さんの制止がはいる。
「秋月さんも。簡単に丸め込まれたらダメですよ?」
「すいません…。」
たしかに丸め込まれそうだった。危ない。
「でもですね、秋月さん。」
「はい。」
「今日、一番頑張るのは秋月さんなんだって、最初に見せておくのは大事だと思うんです。」
「…そういうものでしょうか。」
「そういうものです。きっと秋月さんにとってプラスになりますから。年上の助言は聞いておくべきですよ?」
んんん。そこまで言われてしまうと断れない。
でも年上か。興梠さんっていくつなんだろう。
「わかりました。興梠さんを信じます。」
にっこりと笑う興梠さん。なんか少しドキドキする。
「まってまって、僕が言ったことも間違ってないからね?」
中武さんが何か言っている。確かに間違ってないけど、やり方があくどいんですよ。
「それじゃあ、秋月さん。私は戻らないといけないので。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
頭を下げると、近づいてきた興梠さんが、そっと俺の手を取る。
「うぇっ?」
柔らかくて小さな手。
興梠さんの顔を見ると真剣な顔で俺を見つめている。
「秋月さん。どうか無理をせずに頑張ってください。危ないときは逃げてもいいんですからね。」
「あ…、はい。」
顔が熱い。ぜったい真っ赤になってる。
「約束です。それじゃ室長、あとはお願いします。」
はいはい、という中武さんの返事を聞いて、興梠さんが走り去っていった。
フォーム綺麗だな。
「じゃ、そろそろ集まるだろうから準備しようか。」
今のやり取りに突っ込まないのは、この人なりの優しさなんだろうか。
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