天から二物も三物も与えられ過ぎた俺がダンジョンで青春を取り戻す

黒丸

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切り替えの早さが生死を分ける

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「ほらもう皆さん、いい加減にしてください。宗助くんのこといじりすぎですよ」

「は~い」

 加奈さん優しい。でも一緒に聞いてたんですね。

「ごめんなさい、宗助くん。私も一緒に盗み聞きしてしまって」

「あ、いや、いいですよ」

「ふふっ、でもずいぶん元気がでましたね。よかった」

「あ、そういえば、そうですね」

 意識してなかったけど、なんか心が軽くなった。誰かに話すってすごいんだな。

「加奈ちゃんは宗助くんに優しいよねぇ~」

「それはそうですよ。私の担当ですし、4つも下なんですし」

「んふぅ~。そうかぁ」

 加奈さん23なんだ! けっこう年上なんだなぁ。

「失礼ですが、ひとつ宜しいでしょうか」

 うわっ、びっくりした。

 声の方を見ると、少し暗い、陰のある女性。例に漏れず綺麗な人なんだけど。

 見かけてはいたけど、まだ話したことない職員さんだ。

「秋月さん。はじめまして。職員の黒木怜と申します」

「あ、はい。はじめまして」

 なんか雰囲気のある人だ。この人の声で空気が変わったような気がする。

「私のことは、気軽に”お姉ちゃん”と呼んでください。私も”宗ちゃん”と呼びますので」

「なんで!?」

 真のつっこみ。

 うん、変な人だった。

「わかりました。……お姉ちゃん」

「はい、宗ちゃん」

「宗助くん!?」

 いや、乗った方が面白いかと思って。

「困りました。思ったより恥ずかしいですね」

「呼ばせといて照れんのかよぉ!」

 俺も恥ずかしいです。いや、それはいいとして。

「それで、ひとつってなんですか?」

「はい、宗ちゃんの話を聞いて、私も失恋、終わってしまったというのに疑問を感じまして」

 あ、引っ張るんですね。じゃあ俺も引っ張ろう。

「お姉ちゃん、疑問というのは?」

「ふひっ。……失礼しました。遠距離が嫌だと言うのなら終わりですが、普通に連絡をとればいいのではないですか?」

「ああ~っ!」

 え、なに、真。どうしたの?

「でも、どうやって。ムーには手紙だって遅れませんよ」

「連れてきた本人が、そこにいらっしゃいますよ」

「あ」

 俺を含めた全員の視線が中武さんに集まる。

「とれるよー」

 とれるよじゃねえよ!

「なんで言わなかったあああ!」

 敬語も忘れて中武さんへ詰め寄る。

「ごめんごめん。なんか言い出しづらくってさ。あんな、ねぇ、最後の別れみたいなの見せられたらさ」

「ああああああっ!」

 そうだった、この人に見られてた。

 あまりの恥ずかしさに、頭を抱えて座り込んでしまう。

「え、すっごい気になる。どんなだったんですか?」

「中武さん……、詳しい話を……」

「待って待って待って、やめてください!」

 慌てて立ち上がろうとすると、わしっと肩を押さえられる。

「宗ちゃん。ここまで話したんですから、諦めるしかありませんよ?」

 真上から、お姉ちゃんこと黒木さんの声。

「宗助くん。ちょっと大人しくしててね」

 真、なんか今日こわいんだけど。

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「思い出……」

 してたけど、俺もしようとしてたけど。

「あれでよかったのか聞いても、これでいいんです、だし」

 俺もいいと思ってたけどぉ。

「だから、手紙くらいなら預かるよとは言い出しにくかったんだよ。ごめんね」

 沈黙。さっきまで騒いでたのが嘘のように誰も喋らない。

 すいませーんと、カウンターから呼ぶ声が聞こえる。

「あっ! わたし行ってくるね!」

 櫻子さんが逃げるようにカウンターへ向かう。

「おね……黒木さん……」

「申し訳ありません。秋月さん。思ったより終わってましたね」

「うわああああぁぁあ」


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