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第1章
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明けて翌日、朝食を済ませた私と母は庭に出た。
ついに魔法デビューが始まるのだ。
「さあカースちゃん、今日から魔法の練習よ。
と言ってもしばらくカースちゃんがすることはないの。
お母さんがやることに我慢して耐えるだけでいいのよ。」
「がまんするの?」
「そうそう。苦しいけどカースちゃんは天才だから大丈夫よ。
魔法の入口ってね、大きく分けて二つあるの。
一つは自力で地道に自分の魔力を感じること。
もう一つは他人から魔力を感じさせてもらうこと。
今日はお母さんが魔力を感じさせてあげるってわけなの。」
へー、それは手っ取り早くてよさそうだ。
やっぱり母は凄腕なんだろうな。
「わかったー がんばるね」
「返事は押忍と言いなさい。この返事ができない男の子は強くならないわ。分かった?」
「はーい、いや押忍!」
「さすがカースちゃん!きっと男の中の男になるわ!
じゃあさっそく行くわよ!
力を抜いてそこに立つの、苦しいけど倒れたり動いたらだめよ?」
そして母は後ろから私の首に右手を添えて何やら唱えている。
じんわりと母の体温を感じる。
その瞬間、首から段々と何かが体を這い回るように動いていく。
「ぬわっ! ぴょぎゃー!」
変な声が出る。
気持ち悪い、そして痛い!
例えるなら、血管の中を太い蛇が通るような気持ち悪さ。
こんなの無理だ、逃げよう。
そう思ったが痛すぎて動けない、ならば倒れてしまおうとも思ったが、いつの間にか目の前にいたマリーに抱きしめられている。
全然動けない!
耐えるしかないのか?
オディロン兄は羨ましそうに見ている。
羨ましいなら代わってやるぞー!
全身を這い回る蛇が首から上にも回ってきた。
口の中に油でも流しこまれたかのように吐き気もする。
耳には蛇の這いずりと脈動を合わせたかのような音が聞こえる。
こんな状況なのに抱きしめてくれているマリーからはいい匂いがする!
それが余計に吐き気を催す!
目からは涙が溢れ何も見えない。
段々と蛇が太くなっていくように圧迫感が増し、這い回るスピードも上がっていくかのようだ。
私は身動きもとれず頭がイカれたかのような奇声と涎を垂れ流すだけだった。
もう何も考えられない、早く終わってくれ……
「カースちゃん起きて。」
「ううーん、ははうえー」
バシャッ!
突然水をかけられた。
「さあカースちゃん、目は覚めたわよね。途中で気を失ってたのよ。そんなことじゃあだめよ。ちゃんと意識を保って全身を流れる魔力を感じるのよ。
カースちゃんは天才だから大丈夫よ。
さあできるまでやりましょうね。」
何?
意識を保つだと?
そして魔力の流れを感じる?
あの這いずり回るクソ蛇は魔力なのか。
魔力とはあんな風に全身を回るものなのか。
もしかして魔法を使う度にあんな気持ち悪いのに耐えないといけないのか?
「カースちゃん? お返事は?」
「お、押忍、」
「やっばりカースちゃんは天才ね! こんな状態なのにきちんとお返事できるなんて! お母さんは本当に嬉しいわ。
さあどんどん行くわよー。」
それからは地獄だった。
気を失ってはいけないのだが、いつの間にか意識を失い、水をかけられては叩き起こされ、返事をしてはまた気を失い、何回も繰り返した。
おかしい…
世の中の二歳はこんな方法で魔法を習得するのか?
トラウマになったりしないのか?
もっと子供に優しい方法があるのではないか?
昼までわずか二、三時間だが何回これを繰り返したのだろう。
昼食ということで休憩になったが、昼からも同じことをするのだろうか。
地獄の抱擁から解放された私はそのままマリーに抱えられて風呂に入っている。
ずぶ濡れの私をその体で拘束していたのだからマリーもずぶ濡れだ。
マリーも湯船に浸かるのだろうか?
私の精神年齢的には三十歳前後のマリーの裸体はちょうどストライクゾーンだが、今そんな余裕はない。
ぐったりして動かない私をマリーは支えていてくれる。
そうして三十分ぐらい経っただろうか。
体が動くようになってきた。
マリーは私を離し湯船から上がっていった。
形のよいお尻、透き通るような白い背中をこちらに向けたまま出ていった。
と、思ったらすぐに戻ってきた。
今度は大きなタオルを巻いている、くそぅ。
「さあカース坊ちゃん、これを飲んでください。」
そういって牛乳瓶のようなものを差し出した。
色も形もそっくりだ。
中身まで真っ白、これは牛乳なのか?
「一気に全て飲み干してください。」
「うん、のどがカラカラだから飲むよ」
腰に手を当てて一気に流し込む。
ぐぉっ!
まずい!
熊胆のような苦味と薬草のような青臭さが一体となって襲いかかる。
思わず吐き出そうとしたら、マリーに口と鼻を手の平で押さえつけられた。
息ができない。
「全て飲み干してください、と申し上げました。」
飲まないと息ができない!
まずいとか言ってられない!
ギョルッヌッ!
また変な声が出てしまう。
「ぜんぶのんだよ……まずーい」
「お見事です。さすがカース坊ちゃん。
奥様のおっしゃる通り天才なのですね。
かっこいいですよ。」
「へへーそう?」
そんなわけないだろ!
なんでクソまずい汁を飲んだだけで天才なんだよ!
「これなにー?」
「魔力ポーションですよ。現在の坊ちゃんは午前の修行で魔力回路が広がっています。
そこを回復させることで、今後もその回路を維持できるわけです。」
「ふーん わかんないけどつよくなったの?」
「その通りです!やはり天才ですか。」
おかしいな。
マリーはこんなことを言うタイプじゃないだろうに。
そもそも私とはあんまり話したこともないが。
『かしこまりました』
ぐらいしか聞いたことがなかったような。
まあいい、体のダルさもだいぶマシになってきた。
上がって昼ご飯を食べよう。
食欲はないけど。
「カースちゃん、上がったのね。さあお昼御飯にしましょうね。今日は特別メニューなのよ。
たくさん食べてね。」
おお、見た目は豪華で美味しそうだ。
しかしこれはヤバいパターンだな。
きっと薬草とかイモリとかカエルとかゲテモノだらけに違いない。
「はーい、いただきまーす」
食前食後の挨拶は日本と同じだ。
これが上級貴族や王族になると、お祈りレベルで長くなるらしい。
下級貴族でよかった。
ちなみに平民は特に挨拶などないらしい。
あれ?
美味しいぞ?
初めて食べるような贅沢なものばかりだし、フォークが進む。
「カースちゃんは美味しそうに食べるわね。あの後にこんなに食べられるなんてやっぱりカースちゃんは天才なのね。お母さん感激よ。」
そういえばそうだ。
さっきまで食欲なんかなかったのに。
しかし手が止まらない。
「さあ、カースちゃん。デザートよ。
これを食べて午後からも頑張りましょうね。」
これはゼリーか?
プルプルと震えて美味しそうだ。
ぬおっ、弾力がすごいな、フォークを弾くなんて。
仕方ない、皿から直接食べるしかない。
まずくはないな、と言うより味がしない。
そしてやはり弾力がすごい、全力で噛まないと噛み切れそうにない。
噛み切れないゼリーが口いっぱいに広がって、そろそろ顎が疲れてきた。
「カースちゃん、そのスライムゼリーはね、噛まずに飲み込むものなのよ? 噛み切れないものね。」
ん?
スライムゼリー?
スライムから作られたゼリーってことなのか?
仕方ない、母上がそう言うなら飲み込むしかない。
「っヒック!」
また変な声が出てしまった。
さあ、全部食べたぞ。
こうなったらヤケだ。
昼からもやってやる!
「よく全部食べたわね。さすがカースちゃん。どこまでお母さんを喜ばせてくれるの。さあ頑張りましょうね!」
「はい、ごちそうざまでじた。午後からもがんばります」
第二ラウンド開始だ。
ついに魔法デビューが始まるのだ。
「さあカースちゃん、今日から魔法の練習よ。
と言ってもしばらくカースちゃんがすることはないの。
お母さんがやることに我慢して耐えるだけでいいのよ。」
「がまんするの?」
「そうそう。苦しいけどカースちゃんは天才だから大丈夫よ。
魔法の入口ってね、大きく分けて二つあるの。
一つは自力で地道に自分の魔力を感じること。
もう一つは他人から魔力を感じさせてもらうこと。
今日はお母さんが魔力を感じさせてあげるってわけなの。」
へー、それは手っ取り早くてよさそうだ。
やっぱり母は凄腕なんだろうな。
「わかったー がんばるね」
「返事は押忍と言いなさい。この返事ができない男の子は強くならないわ。分かった?」
「はーい、いや押忍!」
「さすがカースちゃん!きっと男の中の男になるわ!
じゃあさっそく行くわよ!
力を抜いてそこに立つの、苦しいけど倒れたり動いたらだめよ?」
そして母は後ろから私の首に右手を添えて何やら唱えている。
じんわりと母の体温を感じる。
その瞬間、首から段々と何かが体を這い回るように動いていく。
「ぬわっ! ぴょぎゃー!」
変な声が出る。
気持ち悪い、そして痛い!
例えるなら、血管の中を太い蛇が通るような気持ち悪さ。
こんなの無理だ、逃げよう。
そう思ったが痛すぎて動けない、ならば倒れてしまおうとも思ったが、いつの間にか目の前にいたマリーに抱きしめられている。
全然動けない!
耐えるしかないのか?
オディロン兄は羨ましそうに見ている。
羨ましいなら代わってやるぞー!
全身を這い回る蛇が首から上にも回ってきた。
口の中に油でも流しこまれたかのように吐き気もする。
耳には蛇の這いずりと脈動を合わせたかのような音が聞こえる。
こんな状況なのに抱きしめてくれているマリーからはいい匂いがする!
それが余計に吐き気を催す!
目からは涙が溢れ何も見えない。
段々と蛇が太くなっていくように圧迫感が増し、這い回るスピードも上がっていくかのようだ。
私は身動きもとれず頭がイカれたかのような奇声と涎を垂れ流すだけだった。
もう何も考えられない、早く終わってくれ……
「カースちゃん起きて。」
「ううーん、ははうえー」
バシャッ!
突然水をかけられた。
「さあカースちゃん、目は覚めたわよね。途中で気を失ってたのよ。そんなことじゃあだめよ。ちゃんと意識を保って全身を流れる魔力を感じるのよ。
カースちゃんは天才だから大丈夫よ。
さあできるまでやりましょうね。」
何?
意識を保つだと?
そして魔力の流れを感じる?
あの這いずり回るクソ蛇は魔力なのか。
魔力とはあんな風に全身を回るものなのか。
もしかして魔法を使う度にあんな気持ち悪いのに耐えないといけないのか?
「カースちゃん? お返事は?」
「お、押忍、」
「やっばりカースちゃんは天才ね! こんな状態なのにきちんとお返事できるなんて! お母さんは本当に嬉しいわ。
さあどんどん行くわよー。」
それからは地獄だった。
気を失ってはいけないのだが、いつの間にか意識を失い、水をかけられては叩き起こされ、返事をしてはまた気を失い、何回も繰り返した。
おかしい…
世の中の二歳はこんな方法で魔法を習得するのか?
トラウマになったりしないのか?
もっと子供に優しい方法があるのではないか?
昼までわずか二、三時間だが何回これを繰り返したのだろう。
昼食ということで休憩になったが、昼からも同じことをするのだろうか。
地獄の抱擁から解放された私はそのままマリーに抱えられて風呂に入っている。
ずぶ濡れの私をその体で拘束していたのだからマリーもずぶ濡れだ。
マリーも湯船に浸かるのだろうか?
私の精神年齢的には三十歳前後のマリーの裸体はちょうどストライクゾーンだが、今そんな余裕はない。
ぐったりして動かない私をマリーは支えていてくれる。
そうして三十分ぐらい経っただろうか。
体が動くようになってきた。
マリーは私を離し湯船から上がっていった。
形のよいお尻、透き通るような白い背中をこちらに向けたまま出ていった。
と、思ったらすぐに戻ってきた。
今度は大きなタオルを巻いている、くそぅ。
「さあカース坊ちゃん、これを飲んでください。」
そういって牛乳瓶のようなものを差し出した。
色も形もそっくりだ。
中身まで真っ白、これは牛乳なのか?
「一気に全て飲み干してください。」
「うん、のどがカラカラだから飲むよ」
腰に手を当てて一気に流し込む。
ぐぉっ!
まずい!
熊胆のような苦味と薬草のような青臭さが一体となって襲いかかる。
思わず吐き出そうとしたら、マリーに口と鼻を手の平で押さえつけられた。
息ができない。
「全て飲み干してください、と申し上げました。」
飲まないと息ができない!
まずいとか言ってられない!
ギョルッヌッ!
また変な声が出てしまう。
「ぜんぶのんだよ……まずーい」
「お見事です。さすがカース坊ちゃん。
奥様のおっしゃる通り天才なのですね。
かっこいいですよ。」
「へへーそう?」
そんなわけないだろ!
なんでクソまずい汁を飲んだだけで天才なんだよ!
「これなにー?」
「魔力ポーションですよ。現在の坊ちゃんは午前の修行で魔力回路が広がっています。
そこを回復させることで、今後もその回路を維持できるわけです。」
「ふーん わかんないけどつよくなったの?」
「その通りです!やはり天才ですか。」
おかしいな。
マリーはこんなことを言うタイプじゃないだろうに。
そもそも私とはあんまり話したこともないが。
『かしこまりました』
ぐらいしか聞いたことがなかったような。
まあいい、体のダルさもだいぶマシになってきた。
上がって昼ご飯を食べよう。
食欲はないけど。
「カースちゃん、上がったのね。さあお昼御飯にしましょうね。今日は特別メニューなのよ。
たくさん食べてね。」
おお、見た目は豪華で美味しそうだ。
しかしこれはヤバいパターンだな。
きっと薬草とかイモリとかカエルとかゲテモノだらけに違いない。
「はーい、いただきまーす」
食前食後の挨拶は日本と同じだ。
これが上級貴族や王族になると、お祈りレベルで長くなるらしい。
下級貴族でよかった。
ちなみに平民は特に挨拶などないらしい。
あれ?
美味しいぞ?
初めて食べるような贅沢なものばかりだし、フォークが進む。
「カースちゃんは美味しそうに食べるわね。あの後にこんなに食べられるなんてやっぱりカースちゃんは天才なのね。お母さん感激よ。」
そういえばそうだ。
さっきまで食欲なんかなかったのに。
しかし手が止まらない。
「さあ、カースちゃん。デザートよ。
これを食べて午後からも頑張りましょうね。」
これはゼリーか?
プルプルと震えて美味しそうだ。
ぬおっ、弾力がすごいな、フォークを弾くなんて。
仕方ない、皿から直接食べるしかない。
まずくはないな、と言うより味がしない。
そしてやはり弾力がすごい、全力で噛まないと噛み切れそうにない。
噛み切れないゼリーが口いっぱいに広がって、そろそろ顎が疲れてきた。
「カースちゃん、そのスライムゼリーはね、噛まずに飲み込むものなのよ? 噛み切れないものね。」
ん?
スライムゼリー?
スライムから作られたゼリーってことなのか?
仕方ない、母上がそう言うなら飲み込むしかない。
「っヒック!」
また変な声が出てしまった。
さあ、全部食べたぞ。
こうなったらヤケだ。
昼からもやってやる!
「よく全部食べたわね。さすがカースちゃん。どこまでお母さんを喜ばせてくれるの。さあ頑張りましょうね!」
「はい、ごちそうざまでじた。午後からもがんばります」
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