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第1章

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サンドラちゃんの凱旋だ。
弱冠三年生にして学問部門で優勝。つまり辺境一の頭脳と言っていいだろう。
五年生二人もそれぞれ優勝したらしい。
さすがクタナツ男。

クタナツから優勝者が出たのは去年以来だ。つまり珍しくない。
いや、三年生が学問部門で優勝したことがすごいのだ。前例はないはず。

そして三人は全校生徒の前で表彰されていた。
サンドラちゃんはこんな大勢の前なのに堂々としててえらいな。



「ただいま。カース君のおかげで優勝できたわ。試験官の先生も驚いてたわよ。どこで覚えたのか聞かれたから、クタナツには変人学者がいるんですって答えておいたわ。」

「何なに? カースがまた何かやったの?
さあ吐きなさい!」

「おかえり、優勝おめでとう。役に立ってよかったよ。アレックスちゃんも気になるなら教えるよ?」

「べ、別に気になってなんか、でも教えてくれるんなら教えてもらうんだから。」

「よーし、じゃあ今日の放課後は居残りだね。張り切って勉強しようか。」

「え? 勉強? サンドラちゃんどういうこと?」

「うふふ、アレックスちゃんも一緒に算数のお勉強ね。カース君の算数は難しいのよ。頑張りましょ。」

「放課後に勉強するの? すごいね!
僕は帰るけどね。でも狼ごっこをするなら言ってよね。」
セルジュ君はマイペースだなぁ。

「僕も興味はあるけど帰るよ。帰ってプールで素振りをするからね。」
スティード君、もう冬のど真ん中だよ?
せめてお湯にしておこうよ。



そして放課後。

「さあてアレックスちゃん。算数の時間だよ。九九はもうバッチリだよね?
では七の段を言ってくれる?」

「ふふふ、簡単よ。七一が七………」


「よし、バッチリだね。では九の段を上から言ってみて?」

「う、上から?
ええと、九九=八十八、九八=七十二、九七=六十三…………」

「いいスピードだったね! いいよいいよー。でも惜しい、九十引く九は?」

「八十一……」

「そう、だから九九は八十一だね。
よし、では九九はもうできるね。
サンドラちゃんには退屈だろうけど、割り算から行ってみよう。
例えば足し算は式を逆から辿れば引き算にできるよね?
12+5=17だと、17-5=12
って具合だね。
これはかけ算も同じなのね。
7×6=42 だよね。では、42÷6=は?」

「え、ええと七?」

「その通り! 素晴らしいね! 理解が早い! さすがアレックスちゃん最高!
ではこの問題を解いてみようか。」

「うん! やってみる!」

「ではこの間にサンドラちゃん。
120と180と264の最小公倍数と最大公約数を求めてみよう。」

こんな感じで正解すれば褒めまくり、間違えても褒めまくりで授業を進めていった。
今回アレックスちゃんは余りのある割り算までできるようになった。
覚えが早い!

サンドラちゃんはもちろん正解だった。
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