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第1章
163 エルネストの相談
しおりを挟む「エルネスト君、珍しいね。どうしたの?」
本当に珍しい。上級貴族のエルネスト・ド・デュボア君から話しかけてくるとは。
「カース君とアレクサンドリーネ様のことなんだ。お二人は好き合ってるんだよね。どうやって身分の差を乗り越えたか教えてもらえないかな。」
「え! もう知られてるの!? たった二日前の話だよ!?」
嘘だろ! 私の告白がもう知られてるのか?
ならばアレックスちゃんが母親に話して、そこから広まったとか!?
「二日前? 何かあったの? お二人が好き合ってるのは見れば分かることじゃない? アレクサンドル家にも訪問したらしいし。どうやったのかを参考にしたいんだ。」
あぁ、なるほど。告白が知られた訳じゃないのか。しかし身分の差を乗り越えた……のか?
実際には何もしていない。
正直に伝えて信じてもらえるだろうか。
「本当は恥ずかしいからすごく言いたくないんだ。でも本気の相談だよね。だから言うよ。」
「う、うん。お願い。」
「そもそも乗り越えてなんかいないよ。アレックスちゃんのお父上には『君との将来は認められない』って言われたしね。
そしてアレックスちゃんには『僕らの身分差はどうにもならない、だからやりたいようにやろう』って言ってある。」
「あの騎士長様にそんなことを言われたのかい!? それでもアレクサンドリーネ様にそう言ったなんて! 君はすごいね!」
「他にも恥ずかしいことをいくつか言ってしまったけど、これ以上は勘弁してね。
イボンヌちゃんとのことだよね? やっぱり身分差で困ってるの?」
イボンヌちゃんは下級貴族だもんな。上級貴族と下級貴族の差って下級貴族と平民以上に違うもんな。
アレックスちゃんの両親に会ってしまったせいでバッチリ納得できてしまう。
「そうなんだ。僕は彼女が好きだ。彼女も多分僕のことを好いてくれていると思う。でもどうしたらいいか分からないんだ。誰にも言えなくて困ってたんだけどカース君なら何か助けてくれそうな気がしてさ。」
こいつは重い。
拐って逃げろなんて言えないし……
そうだ!
「うーん、参考になるか分からないけど、パスカル君のお姉さん、ベレンガリアさんがいるじゃない? あの人ってすごい貴族との結婚が嫌で飛び出したんだよね? そして立派に冒険者として胸を張って生きてると思うんだ。
エルネスト君は昔、家を継げないって言ってたよね。状況に変化はある?」
「いや、ないよ。僕がデュボア家を継ぐことはないよ。
そうか、ベレンガリアお姉さんか……あの人は強く美しい、憧れの女性だったよ。」
おお、初恋ってやつか。
相手は親友のお姉さん、青春だな。
「先のことをロクに考えてない僕が言うのもおかしいけど、そんな選択もあるかもね。ベレンガリアさんもクタナツにいることだし。」
しかし本当にいいのか?
私が見たところ、イボンヌちゃんは……
「カース君、ありがとう! 参考になったよ。もう一度しっかり考えてみる! やっぱりカース君はすごいよ。」
適当なことを言ってるだけなのに……
上級貴族って騙されやすいのか?
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