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第1章

190 蟻の巣捜索ミッション

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代官はすでにクタナツに戻っている。
この度の事件は根が深い。慎重かつ大胆に捜査しなければならないからだ。

「やはり実行犯どもの証言はあてにならんか。」

「はい。完全に使い捨てですね。」

「奴等から追うのは無理か。となると方針を変えるしかないな。そもそもこの度の事件、完全にクタナツに喧嘩を売っている。そう考えると犯人はヤコビ二派しかいない。」

「ヤコビ二派……ですか?」

「ああ、アジャーニ公爵家の跡目は私の父でほぼ決まりだ。しかしそうなっては困る親戚もいる。それがヤコビ二派だ。」

「なるほど。そやつらが怪しいと。」

「うむ。内部では其奴らを犯人だと断定して捜査にあたってくれ。間違っていたとしても気にすることはない。私が責任を取れば済むだけの話だ。頼むぞ。」

「御意。全力を尽くします。」

どうやら王都の権力争いがこのような辺境にまで飛び火したらしい。厄介な話である。



一方ギルドでは。

「代官府から依頼だ。蟻の巣を特定し全滅させよ、だとよ。簡単に言ってくれるぜぇ。」

「しかし組合長、今後のことを考えますとやるしかないのでは?」

「当たり前だ。やるに決まってんだろ。この手の依頼が得意な奴等と言えば……」

「やはり『ブリークメイヤー』ですかね。でも彼等は一ヶ月以上前にヘルデザ砂漠に行ったきりです。」

「探せればそれでいい。全滅させるなんてここの奴等なら簡単なことだ。いないか?」

「いっそのこと通常依頼で出してしまいましょう。第一発見パーティーだけでなく報告が数時間差であれば報酬を出しましょう。無論、そこに蟻の巣があればの話ですが。」

「いいだろう。蟻の巣を見つけたらワシも行くからなぁ。ぶっ潰してやるぜぇ……」

「組合長……」

こうしてグリーディアントの巣の捜索依頼が出された。発見して報告し正しかったら金貨二十枚。一流の冒険者なら普通と言える報酬だ。ただしこれは二流、三流の冒険者から見ると破格なため我先にとクタナツを飛び出す冒険者も少なくなかった。

さて、本日のカースは……
アレクサンドリーネと害虫退治に興じていた。退治と言うよりは捕獲だ。ただ殺すだけでは報酬が貰えないのだから。
残念ながら倒した獲物がギルドカードに自動で記録されるようなシステムはない。

憎い蟻を探しに行きたい気持ちはあったが、面倒なことはしたくない気持ちもある。だから普段通り、簡単な依頼をデート気分でこなすのだった。
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