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第1章

210 フランソワーズ・ド・バルテレモン

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「一体どうなっている! 全く効果がないではないか!」

カリツォーニがバルテレモンに向かって怒鳴っている。

「そのように怒鳴らないでくださいな。カリツォーニ様らしくありませんわ。カリツォーニ様は天上人なのですからゆるりとお待ちくださいませ。」

バルテレモンはカリツォーニの膝に手を乗せながら甘い声で囁く。
その反対側ではイボンヌがカリツォーニの腕に手を回してしな垂れ掛かっている。こんな九歳がいるとは。

ここはカリツォーニの自室。ソファーにもたれ掛かりティータイムを楽しんでいた。

「イボンヌよ。お前はどう思う?」

「私の意見など何も。カリツォーニ様がやりたいようにやるのが一番だと思います。何故なら王都で勉強された英才なのですから。」

「ふふ、分かっている。お前の言う通りだ。」

バルテレモンは内心面白くなかった。

手駒を使っているのは自分。指示をしているのも自分。なのに可愛がられるのはイボンヌ。
自分も可愛いがられてない訳ではないが、イボンヌほどではない。顔も身分もスタイルも成績も、全て自分の方が上。秘密の個人魔法だってある。
それなのになぜこんな地味な黒髪女が……

それもこれもあのカース達のせいだ。
あいつらはいつも自分達だけは別格って顔をしている。別格なのはアレクサンドリーネだけのくせに。それを勘違いしてるだけの下級貴族……
あの女もあの女だ。昼休みの教室でこれ見よがしに膝枕なんて、あいつ程度の男を狙う女なんていない。無意味な牽制しやがって。
この私が一組の中心でないなんておかしい。私でなくアレクサンドリーネに集まる男なんて頭がどうかしてる……

そんなことを考えていた。



一方、イボンヌは一体どんなことを考えているのだろうか。
貴族社会は恐ろしい。
そこで生きる女はもっと恐ろしい……
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