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第1章

211 下級貴族の造反

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あれから一週間ほど経った日の昼休み。
異変が起こった。バルテレモンちゃんの取り巻き組がいない。
正確には教室にはいるのだが、取り巻いてない。彼らだけで固まってお弁当を食べている。仲違いでもしたのだろうか。

「テシッタール君どうしたの? 一緒に食べないの?」

「お構いなく。僕達は下級貴族なので僕達だけで食べます。」

媚びを含んだ彼女の声に対して、拒絶を含んだ彼の声。

「貴様、フランの好意を無視すると言うのか。いい度胸ではないか。」

アジャーニ君は行動が早いな。効果があるかどうかは別だろうけど。

「う、うるさい! ま、マーティンに文句があるならじ、自分でやればいいんだ!」

おや、反逆か。呼び捨ては気に入らないけど震える声で一生懸命なところは好感が持てる。

「貴様! カリツォーニ様に向かってよくも!」

護衛一号君も張り切ってるな。
二号君とイボンヌちゃんは動きなしか。

「あわ、う、うるさいうるさい! 僕らはもう関係ないんだー! 巻き込んでくるなー!」
「放っておいてよ!」
「自分でやれー」
「カース君にビビってるくせに」
「何で私がこんなことしないといけないの!」

おお、民衆の反乱か。意外とやるもんだ。
ちなみに今日のエルネスト君のお弁当もスパイシーな肉が入っていた。香りからして食欲をそそる。前回とは違う味付けだが美味しい!

「ふん! 後悔するなよ? 」

お、諦めたのか?
イボンヌちゃんがアジャーニ君の耳元で何か囁いている。ご機嫌取りかな?

一号君はこちらを睨んでいるが、二号君はやはりイボンヌちゃんを睨んでいるようだ。




そして放課後、例のウォーターバッグが気に入った私とスティード君は校庭で特訓中だ。
実際はただ殴る蹴るってだけだが。

そこに珍しくグランツ君がやって来た。

「カース君、今回はごめんなさい。なんとなく流されてバルテレモン様達と一緒にいたらこんなことをしてしまって。本当にごめんなさい!」

「分かってるよ。やらされてたんだよね。普通逆らえないよ。気にしてないから。」

「僕にできることなんか何もないとは思うけど、償いをしたいんだ。何か言ってくれないかな……」

「うーん、そもそも気にしてないから償うこともないんだよね。でもまあせっかくだし、僕は金貸しだからお金で償ってもらおうか。」

「お金、僕は平民だし金貨なんてないよ……」

「いやいやそんなにいらないよ。今持ってるだけでいいよ。」

「それなら……」

グランツ君は懐から銅貨を四枚取り出した。

「はい毎度。ではこれで償い終了ってことで。もしお金に困ったら言ってね。貸すから。」

「ありがとう。カース君はこんなに優しいのに僕は何てことを……」

一組に唯一残った平民。
二組から努力して一組に上がってきて、落ちることなくずっと一組にいるグランツ君。友達付き合いをすることはなさそうだけど、困ってたら助けてあげるかも知れない。
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