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第1章

213 用具室裏の出来事

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体育の授業が終わり、みんなが帰り始める。
アレクは少しだけ心配そうな顔をしている。
サンドラちゃんは見世物を見る目でこちらを見ている。
スティード君とセルジュ君は興味なさそうだ。

私は用具室裏に行く。誰もいない。
はっ、まさか! 待ちぼうけさせて後日笑い者にするパターンか!?

待つこと五分。
足音が聞こえる。

「ごめんなさい! 待たせちゃいました!来てくれてありがとうございますぅ!」

青い髪でショートカット。服装からすると貴族か? 平凡な顔をしている。身長、体重とも平均ぐらいか。

「うん、五分ぐらい待ったよ。」

「ごめんなさーい! 私っていつもこうで……今日は朝から頑張ろうって思ってて絶対言おうって思っててカース様に会えると思ったら胸がドキドキしておかしくなりそうで気絶しそうなのにカース様って超かっこいいから気絶したらもったいないから頑張って意識を保ってよーって思ってるのにやっぱり本物を目の前にしたら胸のトキメキが止まらないからもうどうにでもしてって気持ちになりそうだからこの気持ちを届けたいんですがどうしたら分かってもらえるか分からないから取り敢えず手紙を書いてみたんですが来てくれたってことはあの女より私を選んだってことですよね!」

「チェンジ……」

まさかこんなパターンは想定してなかった。これはどんなパターンなんだ? 思わずチェンジと言ってしまったが。

「ありがとうございますぅチェンジとは古い言葉で変化を意味しますよねってことはあの女から私に鞍替えするって意味ですよね嬉しいですぅこれからずっと一緒にいましょうねカース様子供は何人欲しいですか私は六人欲しいですから夫にはそれなりの地位にいて欲しいんですけどカース様ならきっと大丈夫ですよね私しっかり支えますから安心して仕事してください式はいつにしますか?」

だめだこいつ。早く何とかしないと。

「じゃあ式の日程だけど、お互い隠し事をしないって約束できる? やっぱり夫婦になるからには隠し事はだめだよね。」

「私カース様に隠し事なんかしてませんわだから何でも聞いてください何でもお教えしますわ私もカース様のことを色々聞いてもいいですよね式はどこで挙げますか?」

「じゃあ聞くね。はいかいいえで答えてね。隠し事をしないって約束、できる?」

「はい約束しますっわぉ、今の魔力は何ですかさすがカース様痺れますわ……」

はぁ、やっと魔法が効いた。

「君の本当の名前は?」

「分かりませんわ」

「じゃあみんなからは何と呼ばれてる?」

「ジェーン」

「所属と職業は?」

「何のことか分からないですわ」

「ここに何しに来た?」

「ターゲットを殺しにですわ」

「お前の仕事は何をすることだ?」

「指定されたターゲットを殺すことですわ」

まさかの殺し屋?
しかも自分が殺し屋だと分かってない?
自分の組織も知らない?
だめだこりゃ、私の手に負えない。父上に頼もう。『浮身』『風壁』

とりあえず浮かせて空気の壁に閉じ込めておいた。
このまま帰ろう。少し怪しいけどいいだろう。『隠形』




自宅まで飛んで帰った。
母上もいる。
さあどうしてくれようか。
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