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鈍感男子→←幼女子/幼馴染み
ジャスミン
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昼食を終え、教室へ戻ろうとする数人の男子グループ。
だらだらと渡り廊下を歩く途中、小さな物体が飛び込んで来た。
「うわっなに!」
「またかよ、藤堂ー」
「お、莉茉?」
ローツインテールの毛先をなびかせ、ちまっとした小柄な人影が目的の前へ到着。
「きた君、どおして?どおして、りまを避けるのっ!」
「別に、避けてるつもりは無いのだけれど……」
整えられた眉尻を少し下げて、力無く笑うのはきた君と呼ばれた。男子高校生の平均より、上を行くであろう長身の五十嵐 北斗。
名前の北を取り、きた君と親しみを込めて呼ばれる。
そこそこ勉強も出来て、運動神経も抜群。
その体格からのイメージとは反対に、柔和な人柄の良さで男女、学年問わず慕う人が多かった。
そんな彼にも弱点が有る。
眼前……より下の方。
北斗の胸部よりも下程度の身長しかない、小柄な女子。
旋毛しか見えない彼女は藤堂 莉茉。
彼の唯一と言える弱みである。
一緒にいた男子達も何時もの事だと、何処吹く風。
先に戻ると北斗に告げると、ふたりを残し校舎内へ消えて行った。
「莉茉に怒られるのやだな」
大きな右掌を、彼女の頭上に置く。
「あたし、怒ってないもん。きた君が避けるから、理由を聞いてるんだもんっ」
まるで兄妹の様な、微笑ましい光景。
仲睦まじい幼なじみのふたりはこう見えて、同学年であった。
「だって……恥ずかしい」
「だって、好きなんだもん」
「それ、ほんと止めて」
「きた君、大好き」
少しボリュームを上げた幼さの残る声。
彼の着ていたトレーナーの裾を引っ張る小さい手に、一層力が入る。
視線を落とせば、莉茉と瞳同士がばちりと重なってしまった。
「えっ……きた、くん?」
突如、頭から熱を帯びる感覚が北斗を襲う。
視界が少しぼやけて、顔が火照ったようだ。
彼の顔を映し出した丸く大きな瞳で「顔真っ赤だよ!」と慌てる莉茉。
彼女の取り乱す様子に、誰の所為だと苦笑をもらす。
「お前ら、またやってんの?」
何処からか呆れるような、冷めた声が響いた。
「かい君!」
「海斗」
声のする方へ向くと、ふたり同時口にした。
五十嵐 海斗は学園生徒会長であり、北斗とは二卵性の双子。兄にあたる。
「莉茉ちゃんさ、いい加減にしないとウザがれるよ?」
黒く細いフレームの眼鏡が反射で光る。
北斗とは対照的な冷たい印象を与える海斗は、莉茉に向かって口端を上げた。
「ひどーい、かい君!いつも意地悪ばかり!」
北斗と幼なじみである莉茉は当然、海斗とも同じ関係。
海斗の声色が冷めていようと、怯むことはない。
彼女たちにとっては、出会い頭に交わす挨拶のようなもの。
つまり莉茉をからかっているのだ。
「そんな事、海斗に言われたく無いんだけど」
落ち着いた口調の声が割って入る。
「きた君!?」
莉茉の肩に手をかけ、海斗に向き合う。
ほぼ同じ身長の双子が並べば、迫力も倍になる。
彼女からしたら十二分に巨体となる彼等に挟まれ、とても居心地が悪そうだ。
「あのさ北斗、甘やかす以外にする事あるだろ?こじらせてんなよ」
「何言ってんの、海斗」
腕時計を見て、海斗は莉茉の頭を人なですると踵を返した。
「鈍感な奴ほど、手に負えねえってな」
海斗はひらひらと手を振りながら、再び渡り廊下を歩き出す。
善くも悪くも、幼なじみ三人はとても目立つ。
「莉茉、まだ時間あるし……場所変えよっか」
海斗を見送る中、人が集まり始めたのに気付き小さな手を引いて促す。
若干駆け足でたどり着いたのは、中庭を抜けた奥に建つ温室。
観葉植物ばかりのここは意外と穴場なようで、人は見かけなかった。
「きた君、大丈夫?保健室、行く?」
「大丈夫、大丈夫だから」
先程の赤面事件を振り返り、心配する莉茉。
彼女の瞳が視界に入ると、火照る感覚が再びぶり返しそうになるがなんとか堪えた。
「よかったあ」
ふにゃりと崩すように笑うその顔は、北斗のお気に入りである。
昔のままの変わらない笑顔に、彼の顔も緩むのだ。
「ほんと……莉茉には負けるよ」
ベンチに腰を降ろした北斗は、傍らの小さな身体を抱き寄せる。
鼻腔を擽る甘い香りに感化され、壊さないかと緊張しつつ力を入れた。
彼女の鼓動がよくわかる程密着したのは、初めてかもしれない。
「きた君、しないの?」
零れた一言に、身体が強張った瞬間だった。
「なな、なにを」
「キスしたいって、思わないの?」
「えー……と」
恐る恐る聞き返せば、また突拍子も無い単語。
北斗ははて、自分達は恋人関係だっただろうか?
などと自問を始めてしまうほど、クエスチョンマークが脳内で飛び交っていた。
「あたしはずっとずっと、思ってるんだよ」
「莉茉?」
「まだ、わかんない?ずっと好きだって、言ってるのに!きた君なんて、だいっき……っっん」
突然、莉茉の口を塞いだ北斗。
「…っい…つっ」
「っっひゃぃ……」
……塞いだつもりだった。
重なる唇と共にガツンと、痛みの伴う音。
同時に声を上げ、それぞれ自分の口元に手を当てた。
「…っうそ、今のキス?ねえ、きた君どうして?」
どうやら口内、唇は傷付いてはいない。
痛みのせいか少しの沈黙が流れ、切り出したのは莉茉だった。
「だって。莉茉の口から嫌いだなんて言われたら、生きてけない」
「それって、りまが好きってことよね」
顔を覗き込むように身を乗り出した彼女から、顔を反らすように横を向く。
「う……ん、莉茉の好きとまた違う気もする、かなって」
自分の思う"好き"は妹のような、家族愛に近い物だと言い訳じみた説明を始める北斗。
「今、キスしたじゃん。それって、りまの好きと同じじゃないの?」
焦れったい様子の北斗に、苛立ちを隠せない莉茉。
舌足らずの癖に、やたら早口でまくし立てる。
こうなると彼女は止まらない。
「えっ!いや、今のはなんて言うか…っんん?!」
ふにゅりと重なる柔らかい物。
それは莉茉の唇しかない。
自分の勢い任せなやり方と違って、とてもソフトだった。
「……ふはっ」
「り、莉茉?」
「きた君の唇、やーらかい……」
離れた莉茉は目尻を下げて、うっとりと呟く。
「ちょ、まっ……莉茉っ…ん」
「きた君、大好き」
頬に触れた小さな手に、コクリと喉仏が上下に揺れる。
制止も間に合わず、それは再び重なることに。
「俺っ、んう」
俺にも言わせてくれ……。
発言権を封じられた北斗は、可愛いキスの嵐をただただ受け止めていた。
end
だらだらと渡り廊下を歩く途中、小さな物体が飛び込んで来た。
「うわっなに!」
「またかよ、藤堂ー」
「お、莉茉?」
ローツインテールの毛先をなびかせ、ちまっとした小柄な人影が目的の前へ到着。
「きた君、どおして?どおして、りまを避けるのっ!」
「別に、避けてるつもりは無いのだけれど……」
整えられた眉尻を少し下げて、力無く笑うのはきた君と呼ばれた。男子高校生の平均より、上を行くであろう長身の五十嵐 北斗。
名前の北を取り、きた君と親しみを込めて呼ばれる。
そこそこ勉強も出来て、運動神経も抜群。
その体格からのイメージとは反対に、柔和な人柄の良さで男女、学年問わず慕う人が多かった。
そんな彼にも弱点が有る。
眼前……より下の方。
北斗の胸部よりも下程度の身長しかない、小柄な女子。
旋毛しか見えない彼女は藤堂 莉茉。
彼の唯一と言える弱みである。
一緒にいた男子達も何時もの事だと、何処吹く風。
先に戻ると北斗に告げると、ふたりを残し校舎内へ消えて行った。
「莉茉に怒られるのやだな」
大きな右掌を、彼女の頭上に置く。
「あたし、怒ってないもん。きた君が避けるから、理由を聞いてるんだもんっ」
まるで兄妹の様な、微笑ましい光景。
仲睦まじい幼なじみのふたりはこう見えて、同学年であった。
「だって……恥ずかしい」
「だって、好きなんだもん」
「それ、ほんと止めて」
「きた君、大好き」
少しボリュームを上げた幼さの残る声。
彼の着ていたトレーナーの裾を引っ張る小さい手に、一層力が入る。
視線を落とせば、莉茉と瞳同士がばちりと重なってしまった。
「えっ……きた、くん?」
突如、頭から熱を帯びる感覚が北斗を襲う。
視界が少しぼやけて、顔が火照ったようだ。
彼の顔を映し出した丸く大きな瞳で「顔真っ赤だよ!」と慌てる莉茉。
彼女の取り乱す様子に、誰の所為だと苦笑をもらす。
「お前ら、またやってんの?」
何処からか呆れるような、冷めた声が響いた。
「かい君!」
「海斗」
声のする方へ向くと、ふたり同時口にした。
五十嵐 海斗は学園生徒会長であり、北斗とは二卵性の双子。兄にあたる。
「莉茉ちゃんさ、いい加減にしないとウザがれるよ?」
黒く細いフレームの眼鏡が反射で光る。
北斗とは対照的な冷たい印象を与える海斗は、莉茉に向かって口端を上げた。
「ひどーい、かい君!いつも意地悪ばかり!」
北斗と幼なじみである莉茉は当然、海斗とも同じ関係。
海斗の声色が冷めていようと、怯むことはない。
彼女たちにとっては、出会い頭に交わす挨拶のようなもの。
つまり莉茉をからかっているのだ。
「そんな事、海斗に言われたく無いんだけど」
落ち着いた口調の声が割って入る。
「きた君!?」
莉茉の肩に手をかけ、海斗に向き合う。
ほぼ同じ身長の双子が並べば、迫力も倍になる。
彼女からしたら十二分に巨体となる彼等に挟まれ、とても居心地が悪そうだ。
「あのさ北斗、甘やかす以外にする事あるだろ?こじらせてんなよ」
「何言ってんの、海斗」
腕時計を見て、海斗は莉茉の頭を人なですると踵を返した。
「鈍感な奴ほど、手に負えねえってな」
海斗はひらひらと手を振りながら、再び渡り廊下を歩き出す。
善くも悪くも、幼なじみ三人はとても目立つ。
「莉茉、まだ時間あるし……場所変えよっか」
海斗を見送る中、人が集まり始めたのに気付き小さな手を引いて促す。
若干駆け足でたどり着いたのは、中庭を抜けた奥に建つ温室。
観葉植物ばかりのここは意外と穴場なようで、人は見かけなかった。
「きた君、大丈夫?保健室、行く?」
「大丈夫、大丈夫だから」
先程の赤面事件を振り返り、心配する莉茉。
彼女の瞳が視界に入ると、火照る感覚が再びぶり返しそうになるがなんとか堪えた。
「よかったあ」
ふにゃりと崩すように笑うその顔は、北斗のお気に入りである。
昔のままの変わらない笑顔に、彼の顔も緩むのだ。
「ほんと……莉茉には負けるよ」
ベンチに腰を降ろした北斗は、傍らの小さな身体を抱き寄せる。
鼻腔を擽る甘い香りに感化され、壊さないかと緊張しつつ力を入れた。
彼女の鼓動がよくわかる程密着したのは、初めてかもしれない。
「きた君、しないの?」
零れた一言に、身体が強張った瞬間だった。
「なな、なにを」
「キスしたいって、思わないの?」
「えー……と」
恐る恐る聞き返せば、また突拍子も無い単語。
北斗ははて、自分達は恋人関係だっただろうか?
などと自問を始めてしまうほど、クエスチョンマークが脳内で飛び交っていた。
「あたしはずっとずっと、思ってるんだよ」
「莉茉?」
「まだ、わかんない?ずっと好きだって、言ってるのに!きた君なんて、だいっき……っっん」
突然、莉茉の口を塞いだ北斗。
「…っい…つっ」
「っっひゃぃ……」
……塞いだつもりだった。
重なる唇と共にガツンと、痛みの伴う音。
同時に声を上げ、それぞれ自分の口元に手を当てた。
「…っうそ、今のキス?ねえ、きた君どうして?」
どうやら口内、唇は傷付いてはいない。
痛みのせいか少しの沈黙が流れ、切り出したのは莉茉だった。
「だって。莉茉の口から嫌いだなんて言われたら、生きてけない」
「それって、りまが好きってことよね」
顔を覗き込むように身を乗り出した彼女から、顔を反らすように横を向く。
「う……ん、莉茉の好きとまた違う気もする、かなって」
自分の思う"好き"は妹のような、家族愛に近い物だと言い訳じみた説明を始める北斗。
「今、キスしたじゃん。それって、りまの好きと同じじゃないの?」
焦れったい様子の北斗に、苛立ちを隠せない莉茉。
舌足らずの癖に、やたら早口でまくし立てる。
こうなると彼女は止まらない。
「えっ!いや、今のはなんて言うか…っんん?!」
ふにゅりと重なる柔らかい物。
それは莉茉の唇しかない。
自分の勢い任せなやり方と違って、とてもソフトだった。
「……ふはっ」
「り、莉茉?」
「きた君の唇、やーらかい……」
離れた莉茉は目尻を下げて、うっとりと呟く。
「ちょ、まっ……莉茉っ…ん」
「きた君、大好き」
頬に触れた小さな手に、コクリと喉仏が上下に揺れる。
制止も間に合わず、それは再び重なることに。
「俺っ、んう」
俺にも言わせてくれ……。
発言権を封じられた北斗は、可愛いキスの嵐をただただ受け止めていた。
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