ねもとやどる

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男子生徒←女子生徒

リンデンビバーナム

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「まって……待って!口止め料……貰って良い?」


 無意識に口走っていたらしい。
 自身でも驚いた様子で、慌てて両手を口元に当てた。
 脅迫者である彼女は莢花さやか
 食べるの大好き、性格は少し大雑把な女子生徒。

「やっぱり、そう来るんだ……良いよ。何が望み?」

 脅迫を受けるも、平然として応えた男子生徒。
 友哉ともやは英国系クォーターで、モデル顔負けの日本人離れした顔立ちとスタイル。
 ただその場に立つだけで、周囲の目を引いてしまう魅力を持っていた。

 モテないわけがない。
 かく言う莢花もその一人であった。

 脅迫した本人がふるると左右に頭を震うも、早く言えとばかりに無言で詰め寄る。
 美人の凄みは天成のものなのだろうか。
 何処か迫力が桁違いである。
 莢花は身を縮ませ目線を落とすと、自身が組む両手を見つめた。


「あの、あのね……」


 ――さっきの、二人みたいな事……して欲しい


 ××× ××× ×××

 ほの暗い、此処は旧校舎の中。
 先刻までいた草が覆い茂る外とは違い、肌寒さに身震いした。
 埃まみれの机上に座る彼女の前には、友哉が割るように膝の間に立つ。

「あ、あの……やっぱり…っんん」

「は…っ、も……遅い」

「っふ……んう」

 不安げに見つめる莢花の唇を塞ぐと、二度三度と角度を変えながら啄み、吸い上げる。

「はあはっ……やだっやあーっふぇ…っく」

「そこ……泣くとこじゃないでしょ」

「だっ……て、ひぅっ」

 頬をすり合わせるように密着すると、彼女の耳元へ息を吐く。
 意識が違う方向へ飛んだらしく、泣きやむ莢花。
 再び重なる唇は先刻よりも熱く感じる。

 その間も友哉の手は開襟シャツのボタンを淡々と外していった。

「何?その手、退けてくれないかな。すっごく邪魔」

「だって!だって、キスだけ……って」

「お前さ……、何か勘違いしてない?オレ達のあれは中断したの。キスだけで終るわけないでしょ」

「……え」

「誰かさんが覗きさえしてなければね。オレは今頃、アイツとこうしてたって、事」

「きゃっ!?」

 突然担がれ、すぐに床へ転がされると上がる悲鳴。
 更に白く舞う砂埃が、目と喉を攻撃してくるのだった。

「ケホケホッ…!あのっ…あっ友哉……くん?」

「オレねえ、結構怒ってんの……ストーカーのあんたなら解るよね?」

「私、ストーカーじゃ、ないっっ」

 目の痛みと、咳の二重苦。
 そしてこの不穏な空気。
 莢花は本能的に感じた恐怖から、逃げなければと焦っていた。

「でも、好きだからしたんだよね?ストーキング」

「そ、れは」

 莢花本人の気持ちでは、そんな黒い話では無かった。
 ただ好きな彼を見付けて、追いかけただけ。
 ただの好奇心である。

 パニックからか立ち上がることが叶わず、ズルズルと這いずるように友哉から離れる。

「ああ、逃げないでよ」

「やっ……離して!」

 だがそんな事許すはずもなく、彼女の上へ覆い被さった。


「だからさ、脅迫した責任。とらないと、ね?」


 弧を描いた口許に、射るような瞳のその顔はまるで悪魔。
 いったいどちらが脅迫を受けているのか。

 後悔と絶望に莢花の喉がヒュッと一度、虚しく鳴った。


 end
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