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2 魔界のスイカ割り
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「これが海かぁ! ねぇニコ、すごく広いねぇ!」
ショウ様は抱いた息子に、嬉しそうに語りかけた。
私たちは休暇を頂いて、魔界の海に来ております。ここはプライベートビーチですので、他には誰もいません。私もショウ様も水着を着て、海を満喫する準備は万端です。
ショウ様は初めて見た海に、感嘆していらっしゃいました。元々外へ出るのがお嫌いなショウ様ですが、ニコが生まれてからは、積極的に外の世界へと足を運んでいらっしゃいます。
魔界の海はそれはそれは綺麗で、太陽の光をキラキラと反射しています。これぞ夏、と言いたいところですが、魔界の気候は一年中温暖ですので、人間界、特に東方の島国の夏ほど暑くはありません。
──で、なぜ私たちが海に来たかと申しますと、ショウ様がスイカ割りをしたいと仰ったのです。また人間界の文化に触れたいと、そしてニコにも体験して欲しい、とのことですが、ニコはまだ一歳にもなっていません。今日のことを覚えているか、疑問は残りますが家族サービスです。私も楽しみましょう。
私たちは、早速用意させたビーチパラソルの下でくつろぐ。風が潮の香りを乗せて吹きました。気持ちが良いですね。
「ところでショウ様」
「なに?」
「スイカ割りとは、一体どのようなものです?」
魔界にはスイカというものはありません。準備は任せてというショウ様に、全面的にお任せしてしまいましたが、ショウ様はスイカを持っている様子もない。
「目隠しして、棒を持って、周りのひとの声を頼りにその棒でスイカを叩き割るの」
「はあ……。では、私がショウ様の声を頼りにスイカを割る、ということですか」
「そう。ほら、あそこにスイカを用意したよ」
ショウ様は細い指で砂浜を指す。そこにはスイカ……ではなく、魔族の頭が置いてあった。
「あの、ショウ様? 私が聞いた話では、スイカは叩き割ったのち、食べると言うことですが、あれは……」
「ああ、本物が用意できなかったから、代用したの」
中身は赤いから問題無いでしょ、と仰るショウ様。そういう問題でしょうか? 確かに、皮膚の色が緑色になっていて、色だけは似ているような気もしますが。
「ショウ様、せっかく水着も着たのですし、海で泳ぎましょう」
「やだ。スイカ割りする」
「ほら、ニコにも海水を触らせてあげましょうよ」
「ニコは肌が弱いからダメ」
このわがまま王子は、どうしてもスイカ割りをしたいようです。ですが、あれはスイカではありませんし、かち割るところをニコに見せる訳にもいきません。
「ん? ニコはどこに?」
「あれっ? ……ああっ!」
こともあろうに我が子は、ショウ様が用意したスイカ……もとい魔族の頭の元へ這って行っていました。
「うー」
「ニコ! ばっちい! 手を離しなさいっ!」
頭の髪の毛を引っ張る我が子に、私は慌ててニコをそこから離す。
自分は魔族を殺すことに抵抗は無いはずなのに、我が子に生首を触らせるのには抵抗があります。これは一体どういった心理なのでしょう?
「あはは! ニコは将来大物になるかも?」
ショウ様、笑い事ではありません。私はため息をつくと、ニコもキャッキャと機嫌良く笑った。
はぁ、この場面で笑うとは、なかなかの強者ですね。
私は温かく柔らかな我が子の将来を、心配したのだった。
(終)
ショウ様は抱いた息子に、嬉しそうに語りかけた。
私たちは休暇を頂いて、魔界の海に来ております。ここはプライベートビーチですので、他には誰もいません。私もショウ様も水着を着て、海を満喫する準備は万端です。
ショウ様は初めて見た海に、感嘆していらっしゃいました。元々外へ出るのがお嫌いなショウ様ですが、ニコが生まれてからは、積極的に外の世界へと足を運んでいらっしゃいます。
魔界の海はそれはそれは綺麗で、太陽の光をキラキラと反射しています。これぞ夏、と言いたいところですが、魔界の気候は一年中温暖ですので、人間界、特に東方の島国の夏ほど暑くはありません。
──で、なぜ私たちが海に来たかと申しますと、ショウ様がスイカ割りをしたいと仰ったのです。また人間界の文化に触れたいと、そしてニコにも体験して欲しい、とのことですが、ニコはまだ一歳にもなっていません。今日のことを覚えているか、疑問は残りますが家族サービスです。私も楽しみましょう。
私たちは、早速用意させたビーチパラソルの下でくつろぐ。風が潮の香りを乗せて吹きました。気持ちが良いですね。
「ところでショウ様」
「なに?」
「スイカ割りとは、一体どのようなものです?」
魔界にはスイカというものはありません。準備は任せてというショウ様に、全面的にお任せしてしまいましたが、ショウ様はスイカを持っている様子もない。
「目隠しして、棒を持って、周りのひとの声を頼りにその棒でスイカを叩き割るの」
「はあ……。では、私がショウ様の声を頼りにスイカを割る、ということですか」
「そう。ほら、あそこにスイカを用意したよ」
ショウ様は細い指で砂浜を指す。そこにはスイカ……ではなく、魔族の頭が置いてあった。
「あの、ショウ様? 私が聞いた話では、スイカは叩き割ったのち、食べると言うことですが、あれは……」
「ああ、本物が用意できなかったから、代用したの」
中身は赤いから問題無いでしょ、と仰るショウ様。そういう問題でしょうか? 確かに、皮膚の色が緑色になっていて、色だけは似ているような気もしますが。
「ショウ様、せっかく水着も着たのですし、海で泳ぎましょう」
「やだ。スイカ割りする」
「ほら、ニコにも海水を触らせてあげましょうよ」
「ニコは肌が弱いからダメ」
このわがまま王子は、どうしてもスイカ割りをしたいようです。ですが、あれはスイカではありませんし、かち割るところをニコに見せる訳にもいきません。
「ん? ニコはどこに?」
「あれっ? ……ああっ!」
こともあろうに我が子は、ショウ様が用意したスイカ……もとい魔族の頭の元へ這って行っていました。
「うー」
「ニコ! ばっちい! 手を離しなさいっ!」
頭の髪の毛を引っ張る我が子に、私は慌ててニコをそこから離す。
自分は魔族を殺すことに抵抗は無いはずなのに、我が子に生首を触らせるのには抵抗があります。これは一体どういった心理なのでしょう?
「あはは! ニコは将来大物になるかも?」
ショウ様、笑い事ではありません。私はため息をつくと、ニコもキャッキャと機嫌良く笑った。
はぁ、この場面で笑うとは、なかなかの強者ですね。
私は温かく柔らかな我が子の将来を、心配したのだった。
(終)
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そ、そのスイカはーww
ミドリさんありがとう!
ええ、色だけは合ってますwww
本日、お邪魔させていただきました。
感想欄を拝見していたら、とても嬉しい情報がありまして。来週末が、今から待ち遠しいです……っ。
柚木さん、いつもありがとうございます"(∩>ω<∩)"
ええ、来週末もこのタグ企画の為のショートショートを公開するつもりです(*´∀`*)
嬉しいお言葉ありがとうございます、宜しければまたお越しください。お待ちしておりますね⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
あー!すぐに終わってしまった🥺
他にもありますか⁉︎(੭ ˃̣̣̥ ω˂̣̣̥)੭ु⁾⁾✨❤️❤️❤️
蓮恭さんありがと!
来週末もショートショート上げる予定だよー!✨