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43 秘事納め ★
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それから時が過ぎ、大晦日の夜。
祐輔は蓮香の家で何となくテレビを流し見しながら、彼と寛いでいた。
あれから、荷解きも全て終えて遺品も整理した。柳が特に大切にしていたものだけ残し、あとは処分か会社で使うことにしたら、色んな社員から「これ使いやすい!」と好評を受け、蓮香は嬉しそうにしていた。
けれど蓮香が女性が苦手だということがバレ、どうして分かったんだと聞いてみれば、祐輔と付き合っていると聞いてピンときた、と女性社員たちが言っていた。やはりほんの僅かな変化にも気付く女性には敵わないな、と祐輔は思う。しかも彼女らは、蓮香と芳川との関係を聞いて、「あれは付き合っちゃダメなやつだよ」と慰めていて、蓮香は複雑そうな顔をしていたけれど。
年末年始の休みに入ってから、蓮香はどことなく元気がない。理由は分かっているから祐輔も何も言わないけれど、少し心配だ。
「貴徳」
ソファーに並んで座った彼を見ると、彼は眉を下げている。やっぱり、少し感傷的になっていたらしい。
「泣いていいぞ?」
「……大丈夫です……」
そう言って、彼は抱きついてきた。
「この時期だった、っていつも思うんですよね……」
一人の大晦日が辛かった、と蓮香はため息をつく。
前に進むと決めたものの、傷が癒えた訳じゃない。無理するな、と頭を撫でると彼は「んー」と甘えた声で体重をかけてきた。
「……っ、ちょっと?」
「祐輔さん、ヤリ納めしましょ?」
「何だよヤリ納めって……」
そんな身も蓋もない、と祐輔は首筋に顔を埋めた蓮香の頭を撫でる。熱い舌が首を這う感触に身を震わせながら、あることに気付いて蓮香の頭を持ち上げた。
「……泣き虫」
「だって……」
好きなひとに、来年も一緒に過ごしましょうね、って初めて言えると思ったら、と蓮香は鼻を啜る。
そんなことにすら感動してしまうほど、蓮香は大きく傷付いていた。だから、その感情も祐輔は受け入れる。
「……別れない限り、俺は貴徳のそばにいるよ。だから来い。……いっぱい甘やかしてやる」
「……別れない限りとか言わないでくださいよぉ~」
うわーん、とわざとらしい泣き声を上げた蓮香は、再び祐輔の首に吸い付いてきた。祐輔は笑いながらされるがままになり、この先を想像して身体が熱くなる。
唇がふやけるのではと思うほどキスをし、冬のヒヤリとした空気もものともしないほど身体が熱くなった頃、蓮香は祐輔の服を脱がしにかかる。スウェットのズボンを少し脱がせたところで、彼の動きが止まった。
その理由を祐輔は知っている。けれどあえて尋ねてみるのだ。
「どうした?」
「祐輔さん、これ……」
蓮香の視線は祐輔の下半身に注がれている。祐輔はこれ? とボクサーパンツのゴムに指を掛けた。
「どうだ? こういうのは好きか?」
祐輔が穿いていた下着は、黒の透けた素材でできたものだった。しかもピッタリと肌に食い込んで、祐輔の勃ち上がった陰茎の形や色がうっすらと分かるようになっている。
「……」
蓮香は無言で、薄い布を押し上げている祐輔の怒張を撫でた。ひく、と肩を震わせると、蓮香も同じように肩を震わせる。
「エロ過ぎて、危うくイキそうになりました」
祐輔は笑った。ほら、来い、と両手を広げて彼を抱きしめると、またさらに身体の熱が上がっていく。
そして互いにその存在を確かめるように、ひとつになった。すると蓮香は、幸せ過ぎて失うのが怖いと言いながら、祐輔を穿つ。
大丈夫、今は怖いかもしれないけれど、俺を信じろ。そう言って目尻を拭うと、彼は泣き笑いしながら果てた。
「……っ、祐輔さんっ」
湿った肌が、熱い身体が愛おしい。大丈夫、信じられるようになるまで俺は努力するし、待つから、と背中を撫でる。
それから何度も繋がっては蓮香の不安を取り除き、力尽きた頃には日付も変わって新年になっていた。
あけましておめでとう、とぐったりしながら言うと、蓮香は息を切らしながら繋がったままくたりと倒れてくる。その重み、体温が嬉しい。
「あけましておめでとうございます……今年も……」
彼が言葉に詰まる。トラウマが邪魔して言えないのだと思うと、慰めてやりたいと思うのだ。
だから、祐輔は彼の頭を撫でながらその言葉を継ぐ。
「今年もよろしく。来年も、再来年も」
「……っ、はい……っ」
蓮香の傷が癒えるまで、自分は彼のそばにいて支えよう。
そして傷が癒えたあと、それでも彼がまだそばにいたいと願ってくれるなら、とことん付き合おう。もちろん、別れ話が出ないように、自分も努力はするつもりだ。
そう思って祐輔は蓮香の後頭部を支えて引き寄せると、また動き始めた彼の背中に、爪を立てた。
本編 [完]
祐輔は蓮香の家で何となくテレビを流し見しながら、彼と寛いでいた。
あれから、荷解きも全て終えて遺品も整理した。柳が特に大切にしていたものだけ残し、あとは処分か会社で使うことにしたら、色んな社員から「これ使いやすい!」と好評を受け、蓮香は嬉しそうにしていた。
けれど蓮香が女性が苦手だということがバレ、どうして分かったんだと聞いてみれば、祐輔と付き合っていると聞いてピンときた、と女性社員たちが言っていた。やはりほんの僅かな変化にも気付く女性には敵わないな、と祐輔は思う。しかも彼女らは、蓮香と芳川との関係を聞いて、「あれは付き合っちゃダメなやつだよ」と慰めていて、蓮香は複雑そうな顔をしていたけれど。
年末年始の休みに入ってから、蓮香はどことなく元気がない。理由は分かっているから祐輔も何も言わないけれど、少し心配だ。
「貴徳」
ソファーに並んで座った彼を見ると、彼は眉を下げている。やっぱり、少し感傷的になっていたらしい。
「泣いていいぞ?」
「……大丈夫です……」
そう言って、彼は抱きついてきた。
「この時期だった、っていつも思うんですよね……」
一人の大晦日が辛かった、と蓮香はため息をつく。
前に進むと決めたものの、傷が癒えた訳じゃない。無理するな、と頭を撫でると彼は「んー」と甘えた声で体重をかけてきた。
「……っ、ちょっと?」
「祐輔さん、ヤリ納めしましょ?」
「何だよヤリ納めって……」
そんな身も蓋もない、と祐輔は首筋に顔を埋めた蓮香の頭を撫でる。熱い舌が首を這う感触に身を震わせながら、あることに気付いて蓮香の頭を持ち上げた。
「……泣き虫」
「だって……」
好きなひとに、来年も一緒に過ごしましょうね、って初めて言えると思ったら、と蓮香は鼻を啜る。
そんなことにすら感動してしまうほど、蓮香は大きく傷付いていた。だから、その感情も祐輔は受け入れる。
「……別れない限り、俺は貴徳のそばにいるよ。だから来い。……いっぱい甘やかしてやる」
「……別れない限りとか言わないでくださいよぉ~」
うわーん、とわざとらしい泣き声を上げた蓮香は、再び祐輔の首に吸い付いてきた。祐輔は笑いながらされるがままになり、この先を想像して身体が熱くなる。
唇がふやけるのではと思うほどキスをし、冬のヒヤリとした空気もものともしないほど身体が熱くなった頃、蓮香は祐輔の服を脱がしにかかる。スウェットのズボンを少し脱がせたところで、彼の動きが止まった。
その理由を祐輔は知っている。けれどあえて尋ねてみるのだ。
「どうした?」
「祐輔さん、これ……」
蓮香の視線は祐輔の下半身に注がれている。祐輔はこれ? とボクサーパンツのゴムに指を掛けた。
「どうだ? こういうのは好きか?」
祐輔が穿いていた下着は、黒の透けた素材でできたものだった。しかもピッタリと肌に食い込んで、祐輔の勃ち上がった陰茎の形や色がうっすらと分かるようになっている。
「……」
蓮香は無言で、薄い布を押し上げている祐輔の怒張を撫でた。ひく、と肩を震わせると、蓮香も同じように肩を震わせる。
「エロ過ぎて、危うくイキそうになりました」
祐輔は笑った。ほら、来い、と両手を広げて彼を抱きしめると、またさらに身体の熱が上がっていく。
そして互いにその存在を確かめるように、ひとつになった。すると蓮香は、幸せ過ぎて失うのが怖いと言いながら、祐輔を穿つ。
大丈夫、今は怖いかもしれないけれど、俺を信じろ。そう言って目尻を拭うと、彼は泣き笑いしながら果てた。
「……っ、祐輔さんっ」
湿った肌が、熱い身体が愛おしい。大丈夫、信じられるようになるまで俺は努力するし、待つから、と背中を撫でる。
それから何度も繋がっては蓮香の不安を取り除き、力尽きた頃には日付も変わって新年になっていた。
あけましておめでとう、とぐったりしながら言うと、蓮香は息を切らしながら繋がったままくたりと倒れてくる。その重み、体温が嬉しい。
「あけましておめでとうございます……今年も……」
彼が言葉に詰まる。トラウマが邪魔して言えないのだと思うと、慰めてやりたいと思うのだ。
だから、祐輔は彼の頭を撫でながらその言葉を継ぐ。
「今年もよろしく。来年も、再来年も」
「……っ、はい……っ」
蓮香の傷が癒えるまで、自分は彼のそばにいて支えよう。
そして傷が癒えたあと、それでも彼がまだそばにいたいと願ってくれるなら、とことん付き合おう。もちろん、別れ話が出ないように、自分も努力はするつもりだ。
そう思って祐輔は蓮香の後頭部を支えて引き寄せると、また動き始めた彼の背中に、爪を立てた。
本編 [完]
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