【完結】高校生活、思ってたのと違うんですけど。

大竹あやめ

文字の大きさ
33 / 43

33

しおりを挟む
「何だかんだで、お前ら上手くいってんだな」

哲朗が純一と司を交互に見て呟いた。

課題が終わって、夏休み絶賛満喫中の純一たちは、毎日純一の家で漫画を読んだり、近くのプールに出掛けたりしている。

「は? 上手くいってるって何だよ?」

純一は照れを隠すために、ぶっきらぼうな言い方をする。やっぱり、恋愛関係の話にはなかなか慣れない。

「そのままだろ。でも、まぁ足繁あししげく通えるよな。交通費もバカにならないだろ」

「そうなんだよ。たまには俺が行くって言っても、オーケーしてくれなくてさ」

この間のデートではないけれど、金銭的に不公平感があることに、純一は不満を持っている。

そうでなくても、司にはご飯やおやつで色々作ってきてもらっているし、このままではしてもらってばかりで落ち着かない。

「……もしかしてだけど、司、純一の家の方が落ち着くから来てるのか?」

純一の言葉で色々想像したらしい哲朗が、漫画を読んでいた司に聞く。

「そうだな。家ではなかなか本が読めないから」

司はどうやら、本を読むために純一の家に来ているらしい。それなら、二人の家の間にある図書館でも良さそうな気もするけど、と純一は言った。

「バカだなぁ、二人きりってのが良いんじゃないか。あ、今日俺おじゃま虫だ」

一人で突っ込んで笑う哲朗。意外にも、司がそんな事はない、と否定した。

「哲朗の話は興味深い。純一の事も聞けるし」

相変わらず真顔で言う司。純一は恥ずかしくて顔が熱くなり、哲朗は成程、と納得していた。そして哲朗は、純一の話、もっと聞きたいか? と言う。

「……純一はモテるだろう?」

「はぁ? 俺モテたことないよ?」

司は確認のようなニュアンスで質問した。身に覚えのない純一は、声を上げる。

「そうだな、モテるな。生粋の弟キャラだ」

「哲朗まで……確かに姉ちゃんはいるけどっ」

純一がそう言うと、哲朗が「こういう所だよな?」と純一を指差す。

「お姉さんは、似てるのか?」

何故か司は、純一のお姉さんに興味を持ったらしい。

「そっくりだよな? 童顔だけど、あっちは性格きっついぞ。歳が離れてるから、今は家を出てていないけど」

「……成程」

司は何故か妙に納得していた。

「ちょっと哲朗、何で姉ちゃんの事をお前が説明してんだよっ」

「お前、どうせお姉さんの事、鬼だとか悪魔だとか言うだろ。それじゃ分からん」

図星だった純一は、言葉が出なくなった。

「こういうところが気に入ってるんだろ?」

「ああ」

そして純一には分からない会話をしている二人に、何だかムカつく。じゃあ司の事も聞いてやれ、と純一は家族について聞いてみた。

「そう言うお前は兄弟いるのかよ?」

「俺はいない。一人っ子だ」

(……はい、会話終了!)

純一はそう思ったけど、哲朗が後の会話を繋いだ。

「へぇ、意外だな。落ち着いてるから、弟か妹がいるかと思った」

純一は、終わったと思った話が続けられる事に、少し悔しさを覚える。

「じゃあ家には、両親と司の三人? ペットとか飼ってたりする?」

司は目を伏せた。

「俺が物心つく前に離婚しているから、父親と二人暮しだ。ペットは飼っていない」

純一は初めて、司のパーソナルな話を聞いた事に気付く。

「え? じゃあ普段家に一人なのか?」

純一が聞く。家の人がいないなら、遊びに行っても良いような気もするけど、と思った。

「いや、父親が家で仕事をしている時もあるから。……邪魔はされたくない」

成程それなら、家に遊びに行くのはやめた方がいいか、と純一は納得する。

しかし、哲朗は違う所に引っかかったらしい、更に質問した。

「邪魔されたくない? 逆じゃないのか?」

「……」

司は黙る。都合の良い時だけ無口になる、司得意のスルー技術だ、無視ともいう。

しかし哲朗は気にした風ではなく、さらに考察を続けている。

「俺の親父はサラリーマンだから会社で仕事してるけど、家で仕事ならフリーランスで何かやってる人か? でも、リモートワークも増えてきてるしなぁ」

「何で哲朗がそこまで気にするんだよ」

純一は、そこまで考える頭が無かったというのに、哲朗の方が司の情報を聞き出せている。何だか悔しい。

「だって、お前の話と合わせると、司の家は金持ちで、ピアノを習わせていたし、着ている服はハイブランドで、本を際限なく与えてあげられる財源がある。しかも離婚してるなら、親父さんが一人でやってるんだろ? しかもフリーランスで。これでも司の家の事、気にならないのか?」

「確かにそうだけど……」

純一はチラリと司を見た。彼は会話に興味が無いのか漫画を読んでいるけれど、何だか詮索しているようで気が引ける。

「なぁ、司のお父さんって、何してる人?」

純一は直球で聞いてみる。哲朗が、バカ、考えるのが楽しいんじゃん、と突っ込んだ。

「……………………父親の話はしたくない」

いつもの表情、いつものトーンで司は話したように聞こえた。けれど結構な間があったので、迷った挙句の判断なのだろう、と純一は感じる。

「ほら哲朗、この話は止めよう?」

哲朗も同じ考えのようだった。じゃあ、と哲朗は仕切り直したように、声のトーンを上げる。

「司自身のことを掘り下げよう」

「おま、結局詮索じゃないか」

「だって、純一の事はある程度知ってるし、俺は司の事を、純一の話からしか知らないしな」

えー? と純一は眉を下げる。この好奇心旺盛な哲朗は、火がついたら止まらない。

「純一のどういうところに惹かれたんだ?」

「ちょ……っ!」

何を聞くんだ、と純一は慌てる。

「哲朗の言う通り、弟みたいなところだな。俺の作った料理を美味しそうに食べてるところとか、いつも可愛いと思って見ている」

「……っ」

いつも一文しか話さない司が、珍しく長く話す。何でこういう時だけ、と純一は恥ずかしくて言葉が出ない。

「だってよ、純一。愛されてるじゃないか」

哲朗がニヤニヤしながら純一を見てくる。こいつ、絶対からかってる、と純一は哲朗を睨んだ。

「そ、そう言えば、司は誕生日いつなんだ? 俺はもう過ぎちゃったから今更なんだけど」

こうなれば無理矢理話を変えるしかない。純一は無い頭で考えて、質問を捻り出す。

「誕生日過ぎたのか?」

「そう、こいつこう見えて四月二日なの。学年で誰よりも早く歳を取るんだよな?」

「こう見えてってどういう事だよっ」

司はそうか、と呟いた。

「俺は十二月二十四日だ」

「よりによってクリスマスイブ!」

純一は思わず声を上げる。

「あ、いや、祝うにはもってこいの日だなって……」

さすがに少しバカにしたような感じになってしまったので、慌てて純一は取り繕った。

「そうだな。今年は楽しく過ごしたい」

珍しく司が笑った。驚いた純一はじっと司を見てしまう。哲朗も同じだったようで、純一と顔を見合わせる。

「……司って実はモテるだろ?」

「あ! この間も湊の妹に告白されてたよ」

「……興味が無いから全て断っている」

「あ、なんかムカつくな」

純一が言うと、哲朗も同じく、と頷いた。

「じゃあもしもだよ? 湊が告白してきたら考えるか?」

「タイプじゃない」

相手が男子なら、と純一は思って言ったけれど、即答だった。

「え、なに司って元からそっちの人?」

「ああ」

純一は時々思うけれど、司の肝の座りようはすごいなと思う。自分ならカミングアウトすらできないだろう。

「そう思ってるってことは、きっかけになるような事があったんだよな?」

そしてまた、哲朗の好奇心が動き出した。でも、司は嫌がってる様子はない。

「そうだな……気になるのは全て男の人だったから、そう思っているだけなのかもしれない」

「……なるほどねー」

哲朗はもっと根掘り葉掘り聞くと思いきや、意外にあっさりと話を終わらせた。

「あれ? 意外とあっさり終わらせたな」

純一が聞くと、哲朗は苦笑する。

「いや……あとはお前が聞け」

何でお前が知らない事を、俺が興味本位で聞かなきゃいけないんだ、と哲朗は立ち上がった。

「じゃまた来るわ。司、楽しかった、ありがとな」

「こちらこそ」

哲朗が帰ると、沈黙が降りる。

「えっと……司、俺何か話した方が良いか?」

沈黙にいたたまれなくなった純一がそう聞くと、司はいや、と読んでいた漫画を閉じた。

「純一とは、一緒にいられるだけでいい。哲朗が話が上手いだけだ、気にするな」

今しがた、哲朗に言われた事を気にしたと思われたのか、司はそう言って隣に座る。

「……抱きしめて良いか?」

「この流れで何でそうなるんだよ」

純一は突っ込むけれど、司は気にしていないようだ、無言で返事を待っている。

「悪いが今日はそろそろ帰らないと。だから……」

「ちょっと待て、だからの意味が分からん」

「早く」

いつもは有無を言わさずキスやハグをしてくるクセに、今日に限って純一が動くまで待っている。司の視線が痛くて、純一は立ち上がった。

「はい……早く来いよ」

純一は視線を泳がせながら、両腕を広げた。

司は純一を抱きしめると、離れ際に頬にキスをする。

「……っ」

「また明日。じゃあな」

司が部屋から去っていくと、純一は熱くなった頬を抑えた。

「ったく、油断も隙もないな、あいつは」

純一が恋人として司に触れられるのは、いつになることやら。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

処理中です...