【完結】幼なじみが気になって仕方がないけど、この想いは墓まで持っていきます。

大竹あやめ

文字の大きさ
14 / 34

14

「何でまた就職するなんて考えたんだ?」

急いで帰って清盛の家に行くと、案外すんなりと入れてくれた。

ソファーに腰掛け、詰問するような形になってしまったのは、清盛がぶすくれた顔をしていたからだ。

絵美は二階の自室で休んでいるらしく、身体に障るといけないので、小声だ。

「母さんが倒れて……金を稼ぐ奴がいなくなったから」

「絵美さんはもう一週間したら、復帰するって言ってたけど?」

実際絵美の体調不良は大したことはなく、寝不足と疲れが出ただけで、今はむさぼるように眠っているだけだ。

ぼそぼそと歯切れの悪い喋り方をしているのは、拗ねているからのようだ。

「志望大学だって余裕じゃないか、ここまで頑張ったのに、もったいない。絵美さんもキヨには大学行って欲しいって言ってるし、藤本と3人で同じ大学目指してるだろ?」

「…………」

どうせろくなこと考えてないのだろうけど、聞いたらまた殴ってしまいそうだったから聞かないでおく。

しかし、次の清盛の言葉で、何かが切れた。

「……言うこと聞いたら、付き合えよ」

「は?」

あんまりな発言を聞いたせいか、頭の処理が追いつかなかった。

聞きなおすと、開き直ったのか、清盛は大声で叫ぶ。

「だから、言うこと聞いたら俺と付き合えって言ったんだ!」

正直言ってそれとこれとは話が違う。

反射的に立ち上がって悠も負けじと叫んだ。

「バカ! それとコレとは話が違うだろ! もういい!」

絵美さんに聞こえていたかもしれないとか、もっと色んな言葉で罵ってやればよかったとか、清盛がここまでバカだったなんて、とか考えた。

しかし、言ってしまった言葉はなかったことにはできないし、起こってしまったことは仕方がない。













あれから時は過ぎ大晦日の夜。

清盛とは口も聞いてない。冬休みに入る前は、徹底的に避けて一緒に行動しなかったし、藤森にはかなり迷惑をかけたと思う。

休みに入ってしまえば、ご飯係も受験勉強すると言ってなんとか断れば、会わずに済む。

しかし、実際は勉強など手につかず、ごろごろと過ごす日々が続いた。

思ったよりも自分にダメージがあることがショックで、自分の方こそ、清盛に甘えていた部分もあったんだな、と実感する。

そう思ったら、清盛がいないことに少し寂しいと感じる自分がいた。

何だかんだ人嫌いの悠を守ってくれていた清盛。

考えてみればそれは幼いときから変わらず、悠がクラスメイトに暗い奴だと言われていても、側から離れなかった。

「悠ー? 初詣どうするのー?」

階下から母の声がした。

毎年、混む神社には行きたくないので、清盛と穴場の神社に二人でお参りしていたのだ。

でも藤本は海外だし、他に誘えるような人なんていない。

ごろん、とベッドの上で寝返りを打つと、目を閉じた。

『俺が我慢できないの、知ってるだろ?』

そう言ってキスをしたあの瞬間、腰が痺れるような甘い感覚が襲った。

そういう行為が嫌いなはずなのに、清盛だけにはもっと触れて欲しいと思った。

そこでハッと我に返り、自分が恥ずかしい妄想をしていたことに気付く。

「……なにやってんだ、俺」

そう口にしてみるけれど、身体の奥に点いた火は、なかなか消えてくれなかった。

胸の中で勝手に大きくなるそれは、後戻りできないことを悟り、怖くなる。

寂しい、会いたい、自分も好きだと伝えたい。

そんな欲求が押し寄せてきて、溢れて、胸が苦しくなった。今までにない経験で、悠は戸惑う。

「何だよ……これ……」

苦しい苦しい苦しい。

寂しくてこんなにも怖いなんて。

胸を押さえていると、ドアがノックされた。

ドアの向こうで母の声がする。

「悠、キヨくん来たよ? 初詣、行くんでしょ?」

「うそ……」

確か今は絶交中ではなかったか。

今まさに清盛のことを考えていたので、まさか向こうから来てくれるとは思わなかった。

すると、あんなに苦しかった胸が嘘のように楽になり、今度はキュッと締め付けられた。

先程よりも甘い感覚に、またしても悠は戸惑う。

いきなり訪れた清盛を、無視したり、罵って追い帰したりできるはずなのに、反射的に動いた悠は、そんなこと考えもしなかった。

慌てて外で待ってるという清盛のもとへと向かう。

玄関のドアを開けると、ちらちらと雪が降る中、清盛が立っていた。

「バカ、寒いだろっ。中に入ればいいのに」

そう言う悠も、防寒着なんかつけてなかった。

出てきた悠に対して、清盛はへへ、と笑って嬉しそうだ。そして照れたように鼻の頭を掻く。

「……やっぱさ、付き合って?」

今日は大晦日で、もうすぐ日付が変わろうとしている。

それは初詣を意味するのか、恋人になって欲しいというお願いなのか。

どっちの意味? と尋ねると、両方、と返ってきた。

「悠以外と初詣、悠以外の恋人……やっぱりどっちも考えられないからさ」

穏やかな笑みを浮かべた清盛は、いつもより幾分大人びて見えた。

そして、その顔に悠は逆らえるはずもなく、分かった、と答えるのが精一杯だった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

計画的ルームシェアの罠

高木凛
BL
両親の転居をきっかけに、幼馴染の一ノ瀬涼の家に居候することになった湊。 「学生のうちは勉強に専念しろ」なんて正論を吐く涼に反発しながらも、湊は心に決めていた。 しかし湊は知らない。一ノ瀬涼の罠に。 【初回3話は毎日更新! 以降は火・木19時更新予定】

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。