【完結】幼なじみが気になって仕方がないけど、この想いは墓まで持っていきます。

大竹あやめ

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「悠!」

慌てて来たらしい清盛は、息を切らしながら部屋に入ってくる。

「こらキヨ、人の家だぞ」

無遠慮にズカズカと入ってきた清盛を悠はたしなめると、本人に代わって坂田に謝った。

坂田は気にした様子もなく、ニコニコと、これが春名くんの彼氏かぁ、と呟いている。

「お前、何話してたんだよ?」

今度は藤本の胸ぐらを掴み、間近で睨みつけていた。落ち着かないのはいつものことだが、忙しい人だ、と笑えてくる。

「あれほどその手の話するなって言っただろ? ごまかしても悠の顔色見れば分かるぞ」

この性悪眼鏡、と清盛は毒づく。

「だって、その話しないと、お前ら先に進まないじゃないか。面白くない。それに、いつもお前は行き当たりばったりの付き合いしかやってこなかったんだ、たまには真面目に付き合ってみろ」

約束が違うじゃないか、と清盛は訴えているが、大方、藤本にうまく乗せられて、悠との仲を取り持ってやるとか言われ、うなずいてしまったみたいだ。

しかし、藤本もお互い様だ、とため息混じりに呟いた。

「お前がここに来るのは避けたかったんだよ……ああもう、取り敢えず座れ」

「そうだよキヨ、人の家で何やってるんだ、恥ずかしい」

悠の言葉は最後まではっきり発音されなかったのは、途中で坂田がクスクスと笑い出したからだ。

「初めまして清盛くん、俺は坂田博美と言います。いつも幸太がお世話になってます」

納得いかない顔をしている清盛に、坂田は穏やかに話しかけた。

悠の隣に座った清盛はローテーブルの下で、手を握ってくる。

ビックリして清盛を見たが、彼は何ともない顔をして、坂田に挨拶をしていた。

冷えた手が温まっていくのを感じて、どうりで顔色が悪いのを見破られたわけだ、と思う。

「で、何でうちの悠が、ここにお邪魔してるか聞きたいんですけど」

明らかにケンカ腰の清盛に対して、それすらも微笑ましそうに笑っている坂田。

「男同士で付き合うことになって不安も多いだろうから、同じ立場の先輩として、役に立てれば、って話をしたところだよ」

そう坂田が言ったとき、部屋の隅でそっぽを向いていた藤本が舌打ちをした。

どういうことだ? と清盛は数秒固まり、そして「あーっ!」と叫ぶ。

「お前、だからいくら彼女紹介しろって言っても拒否したのかぁ!」

「清盛、声でかい」

藤本と坂田が付き合っていることに気付いた清盛は、すべて合点がいったらしく、大声で騒ぎ出した。

「なんだ、こんな美人と付き合ってるなら、隠すことなんてないのに、なぁ、悠?」

「そんな天然で人の彼氏を褒める奴に、紹介なんかするか。それに、お前はいくら自慢の恋人でも、もう少しいちゃつくのを控えろ」

いつもより多く、藤本の応酬がくるのは、清盛にここぞと言いたいことがあるほかに、照れも混ざっているようだ。

その証拠に、嬉しそうに藤本を見つめる坂田は、笑っている。

「あの、坂田さん……」

騒がしく言い合いをする二人を放っておいて、悠は坂田に声を掛ける。

博美でいいよ、と返ってきた返事は、さらに嬉しそうだった。

他の二人がうるさいので、自然と内緒話するよ
うな距離になる。

「博美さん、ありがとうございます。やっぱりそういうことに関しては苦手ですけど、キヨとなら大丈夫な気がします」

「そう? やっぱりおせっかいだったかな」

俺は二人の問題だから、そっとしておいたらって言ったんだけどね、と坂田は苦笑した。

彼の話によると、藤本にとって悠は恋愛感情抜きで可愛がっているらしく、いわばアイドルのようなものだという。

近所のおばちゃんが、自分の息子のように可愛がる心境、と坂田は妙な例えをしたが、世話好きの藤本なら分かる気がする、と悠も笑った。

その笑顔を見た坂田はさらに、「ああ、本当に君は素敵な子だね」と言うから、悠は赤面して何も言えなくなってしまった。
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