【完結】幼なじみが気になって仕方がないけど、この想いは墓まで持っていきます。

大竹あやめ

文字の大きさ
28 / 34

5

それから付き合い始めて七年経ち、夏の足音が聞こえ始める頃、博美は幸太が通う大学の近くに引っ越した。

幸太には理由は言わなかったが、いつでも会える距離にいたかったのと、いくら住まいを変えても付きまとう、一通の手紙が博美の不安を煽るからだ。

博美はやはりここへ引っ越しても届いた手紙を眺めて、ため息をつく。

相手には住所など一切教えていないのに、どういうわけか届くのだ。しかも差出人はいつも中の手紙にしか書いていない。

内容は決まって相手の近況。それからこちらの近況を知るためにも会わないかという催促。

四月からずっとこの手紙と付き合いがある博美は、今回も軽く中身を読んでゴミ箱に捨てた。

そこで、インターホンが鳴る。今日は幸太が部屋にくることになっていた。

「はーい」

できるだけ明るい声で出迎えると、幸太がコンビニの袋を持って入ってきた。

「何買ったの?」

「清盛につき合わされた。チョコだけど、食う?」

幸太の口から最近聞かない日はないくらい、馴染んだ名前が挙がる。

そのまま中へ促すと、リビングのソファにぐったりと腰かけた。

「ありがとう……ってことは、一回家へ帰って戻ってきたの? なら今日はナシで良かったのに」

「そんなわけにはいくか。大体、清盛は唐突でしかもわがままだから、一度言い出したら春名が止めるまで止まらないから」

「……あー」

博美は苦笑する。高校で知り合い友達になり、大学も同じ学部に入った清盛は、明るくて、クラスの人気者らしい。

基本世話焼きの幸太が横着な清盛の面倒を見ているうちに、つるむようになったようだ。

そしてその清盛にはご執心の幼馴染がいるらしく、博美は一度会っただけだと言うのに、ものすごくインパクトがある子だったな、と思う。

そして、清盛の話題が出てくると、自然とその春名の話題になるのだ。

「アイツ、また何かいろいろ抱えてやがるんだよなぁ。話せっつっても笑ってありがとう、って言うだけだし。まだ警戒されてるなぁ、俺」

幸太のおせっかいによって救われた身の博美は、彼は純粋に春名を心配しているのは分かっている。

清盛と春名は高校の時に紆余曲折あって付き合い始めたらしいが、どうやら清盛と何かあったらしい。博美としてもその春名の言動は気になっている。

「う~ん、どうしてもギリギリまで溜めちゃう子なんだね。同性に惹かれるなんて、自分で認めるのも怖かっただろし」

「やっぱそうなのか? 博美さんもそういう経験した?」

「……まぁね」

幸太の良いところは、首を突っ込んでも最後まで責任を持つところだ。そして、解決するためなら、他人の意見を際限なく取り入れる。

今はその位置に博美がいることを、博美自身嬉しく思っているのだ。

「そうなんだよなぁ。アイツどんどん溜め込んでくからなぁ。しかもその姿が妙に艶っぽくてキケンだ」

眼鏡を取って目頭を押さえる幸太の隣に座ると、幸太は自然に博美の肩を抱いた。

こういう、さりげないスキンシップが多い幸太だが、博美はなんだか居心地が悪くなってしまう。

何故なら、先月にやはり何気なくこうやってマッタリしていたとき、幸太の口から出た言葉が頭から離れないからだ。

――従兄弟の結婚式に出たんだけどさ、やっぱりああいうの、いいよな。

――デキ婚で式も遅れちゃったけど、子供も可愛かった。

結婚。博美には一生縁がない言葉だ。

そして、幸太はそれを望んでいるのでは、と考えた。

だったら、子供が産めない博美と今すぐにでも別れて、女の子と付き合わせてあげるべきではないのだろうか、と。

元々こちらに引きずり込んでしまったという負い目が博美にはあり、申し訳ないと思いつつもズルズルと今まできている。

「博美さん?」

不意に耳たぶにキスをされて背中が跳ねた。

見ると、少し不満そうな幸太の顔が間近にきている。

「何考えてる?」

「え、いや、その……」

迫ってきた幸太の瞳に欲情の色が見え、博美は反射的に身を引いた。

もう完全に大人の体になった幸太は、セックスもすでに覚えている。一から教えたのは博美だが、少々覚えが良すぎて、最近は博美の方が翻弄されてしまうのがくやしい。

「……ん」

逃がすまいと後頭部を引き寄せられ、唇を吸われる。

一度吸っただけで離れた顔は、直前まで考えていたことの後ろめたさに、直視できなかった。

「ねぇ、ここでしていい?」

「……」

こういう時、幸太のことをずるい、と思う。

断れないのを知っているくせに、とびきり優しい声で博美を包むからだ。

「ねぇ、博美さん」

「……明日も、仕事だから……」

素直に観念するのも悔しくて、拗ねたようになっても、幸太は嫌な顔一つせずに微笑んで押し倒してくる。

「ん、優しくする」

今は、今だけは。

結婚と手紙という単語は忘れよう。

博美は両腕を幸太の首に回すと、とろけるような口づけを受け入れた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

計画的ルームシェアの罠

高木凛
BL
両親の転居をきっかけに、幼馴染の一ノ瀬涼の家に居候することになった湊。 「学生のうちは勉強に専念しろ」なんて正論を吐く涼に反発しながらも、湊は心に決めていた。 しかし湊は知らない。一ノ瀬涼の罠に。 【初回3話は毎日更新! 以降は火・木19時更新予定】

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。