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第139話
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静粛な降誕祭の一日が終われば特にやることもなく……
心身が訛らないよう鍛錬を熟したり、その延長で菫青石を依代に顕現させた水妖らと暖炉の近くで寛いだり、悠々自適な生活を送っていると年が明けた。
それから数日を挟み、世間が動き出してから少し経った頃、寝床へ潜り込んできた侵入者が二人、若干の違和感を覚えて室内が薄暗い時間帯に目覚めてしまう。
(…… 何時ぞやのようにリィナの方は先客がいて、渋々諦めたという構図だな)
何が契機となるか不明であれども感情の昂振りに伴い、夜這いを仕掛けてくる半人造の少女と、寒い夜に暖を求めて毛布へ忍び込む人狼娘の “鉢合わせ” は以前もあったので、寝ぼけた頭で凡その憶測を付ける。
種族特性で基礎体温高めなウルリカを湯たんぽ代わりに片腕で抱き締め、微睡ながら二度寝の誘惑に流されて屈服し掛けるが、本日の朝食当番で教会絡みの所用もあるらしいフィアが出掛けに顔を覗かせたら、また仲間外れだと怒り兼ねない。
澄まし顔の裏で私怨を募らせる性格なのは重々承知のため、緩りと身体の躯幹を立てて、現状からの脱出を試みると片腕に柔らかいものが当たった。
「んぅ、ぐっもに、ダーリン」
僅かな衝撃で目覚めた少女が呟き、蠱惑的な半裸の上半身を起こしたかと思えば、右拳を寝室の天井へ突き上げて、大きくしなやかな伸びを打つ。
その勢いで微動した綺麗な双丘に視線が向くのは、悲しい生き物の性だ。
「ふわぅ… 眠い、もっかい寝よう」
「年頃の淑女が欠伸を晒すな、自室に帰れ」
目端に滲んだ涙を指先で擦り拭い、厚手の毛布やブランケットなど被り直そうとするリイナを留め、指先に繊細さの宿る手を引いて一緒に別室まで付き添う。
まだ完全に覚醒しておらず、足取りの覚束ない彼女を送り届けて自室に戻った後、保護対象故に色々と容認されているウルリカはベッドへ残置したまま身なりを整え、良い香りのする厨房へ行くと司祭の娘が爽やかな笑顔で出迎えてくれた。
「おはよう御座います、ジェオ君」
「あぁ、今日の朝餉は麦パンと… 昨日の牡蠣か?」
「~~♪ 水揚げ四日後の夕方、わりと新鮮な地元産を良い値段で買えましたからね、スープに入れるのを取っておいたのですよぅ」
つまり五日目の朝だが、殻付きの牡蠣は水のない状況であろうと、その程度は冬場なら生き長らえており、火を通して喰う分には問題ない。
ただ、王都でも海産物を扱うコルテーゼ商会の売り手が恐縮して、随分と畏まっていた姿を省みれば、利益抜きの価格で卸してくれたのでは? という疑念も生じた。
あそこは跡取り息子のうち、長男が疫病に見舞われた独立都市イルファで活動する支援団の会計監査役、三男は製紙事業の金庫番と縁が深いため、末端の従業員にまで領主嫡男の面が割れていたりする。
「起きて早々、悩みごとですか、懺悔なら私が寝物語に聞きますよ?」
「いや、些事に過ぎない、気にしないでくれ」
お玉片手に専属なのでと豊満な胸を張り、艶やかに微笑んだエプロン姿のフィアへ断りを入れて、厨房内の食器棚よりカトラリーケースや深めの皿を取り出す。
自然な流れで配膳の準備を終えて、食器に盛られた二人分の料理を居間兼食堂まで運び、早朝から教会へ向かう彼女と早めの食事を済ませた。
心身が訛らないよう鍛錬を熟したり、その延長で菫青石を依代に顕現させた水妖らと暖炉の近くで寛いだり、悠々自適な生活を送っていると年が明けた。
それから数日を挟み、世間が動き出してから少し経った頃、寝床へ潜り込んできた侵入者が二人、若干の違和感を覚えて室内が薄暗い時間帯に目覚めてしまう。
(…… 何時ぞやのようにリィナの方は先客がいて、渋々諦めたという構図だな)
何が契機となるか不明であれども感情の昂振りに伴い、夜這いを仕掛けてくる半人造の少女と、寒い夜に暖を求めて毛布へ忍び込む人狼娘の “鉢合わせ” は以前もあったので、寝ぼけた頭で凡その憶測を付ける。
種族特性で基礎体温高めなウルリカを湯たんぽ代わりに片腕で抱き締め、微睡ながら二度寝の誘惑に流されて屈服し掛けるが、本日の朝食当番で教会絡みの所用もあるらしいフィアが出掛けに顔を覗かせたら、また仲間外れだと怒り兼ねない。
澄まし顔の裏で私怨を募らせる性格なのは重々承知のため、緩りと身体の躯幹を立てて、現状からの脱出を試みると片腕に柔らかいものが当たった。
「んぅ、ぐっもに、ダーリン」
僅かな衝撃で目覚めた少女が呟き、蠱惑的な半裸の上半身を起こしたかと思えば、右拳を寝室の天井へ突き上げて、大きくしなやかな伸びを打つ。
その勢いで微動した綺麗な双丘に視線が向くのは、悲しい生き物の性だ。
「ふわぅ… 眠い、もっかい寝よう」
「年頃の淑女が欠伸を晒すな、自室に帰れ」
目端に滲んだ涙を指先で擦り拭い、厚手の毛布やブランケットなど被り直そうとするリイナを留め、指先に繊細さの宿る手を引いて一緒に別室まで付き添う。
まだ完全に覚醒しておらず、足取りの覚束ない彼女を送り届けて自室に戻った後、保護対象故に色々と容認されているウルリカはベッドへ残置したまま身なりを整え、良い香りのする厨房へ行くと司祭の娘が爽やかな笑顔で出迎えてくれた。
「おはよう御座います、ジェオ君」
「あぁ、今日の朝餉は麦パンと… 昨日の牡蠣か?」
「~~♪ 水揚げ四日後の夕方、わりと新鮮な地元産を良い値段で買えましたからね、スープに入れるのを取っておいたのですよぅ」
つまり五日目の朝だが、殻付きの牡蠣は水のない状況であろうと、その程度は冬場なら生き長らえており、火を通して喰う分には問題ない。
ただ、王都でも海産物を扱うコルテーゼ商会の売り手が恐縮して、随分と畏まっていた姿を省みれば、利益抜きの価格で卸してくれたのでは? という疑念も生じた。
あそこは跡取り息子のうち、長男が疫病に見舞われた独立都市イルファで活動する支援団の会計監査役、三男は製紙事業の金庫番と縁が深いため、末端の従業員にまで領主嫡男の面が割れていたりする。
「起きて早々、悩みごとですか、懺悔なら私が寝物語に聞きますよ?」
「いや、些事に過ぎない、気にしないでくれ」
お玉片手に専属なのでと豊満な胸を張り、艶やかに微笑んだエプロン姿のフィアへ断りを入れて、厨房内の食器棚よりカトラリーケースや深めの皿を取り出す。
自然な流れで配膳の準備を終えて、食器に盛られた二人分の料理を居間兼食堂まで運び、早朝から教会へ向かう彼女と早めの食事を済ませた。
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