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第31話
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陽光の当り具合で銀糸の髪色にも見える彼女の持論は正鵠を射ており、実戦の場で幾度も同一の存在と相まみえるのは珍しい。
さらに補足しておくと、人に個性や特質があるように同系種の魔物であっても、大なり小なりの個体差は存在する。
「勿論、過度の配慮で自縄自縛になるのは頂けない」
「むぅ、結局はどっちなのよ?」
「ほどよく先手を取るくらいが良いのかもな」
肝要なのは匙加減だとリィナに答え、事の発端であるクレアに目配せすると、微妙な表情で相槌を返してくれた。
鋭敏な感性こそが近接戦闘に於ける不可欠な素養という、自身の経験則は相変わらず、ここでも理解を得られないようだ。
致し方ないと割り切って、いつの間にか木陰で転寝していたサイアスの元まで忍び寄り、目覚まし代わりに渾身の一撃を叩き込む。
一切の躊躇なく、最短最速で振り落とした鉄鞘は独特な魔法障壁に当たり、指向性を帯びた小爆発に弾かれて盛大な音を鳴らした。
「もう少し穏便に起こせないのか、不肖の弟子め」
「昨日、普通に起こしたら、腕挫十字固めを仕掛けてきただろう!」
隙あらば不意討ちしてくる我が師に怒声をぶつけた事で、びくりと反応した三人娘の訝しげな視線を背に受けながらも、次の街に向けての第一歩を踏み出す。
後日、大きな問題もなく目的地である迎撃都市ディオルに到着したのだが……
直前で土砂降りの雨に見舞われた俺は風邪を患い、宿屋の一室で病に伏していた。
「ぐぬぅ、あの両生類ども、絶対に許すまじ」
「ダーリン、まだ年齢的に身長低いし、頭から泥被ってたね」
雨天に浮かれてバシャバシャと飛び跳ね、あたり構わず泥水を撒き散らした体高1メートル越えの巨大蛙《がえる》どもに怨嗟の声など漏らしつつ、先程から遠慮なく人の髪を弄んでいたリィナにも矛先を向ける。
「…… 鍵を掛けずに寝落ちした非は認めよう。ただ、勝手に男部屋へ入ってきて、ベッドにまで潜り込むのはどうかと思うぞ」
「ふふっ、そう言うと思って、サイアスさんの許可をもらっているわ! 気を利かせてくれたのか、席を外しているけど… あと私の添い寝、嬉しくない?」
悪戯っぽく微笑んだ薄着の娘はしなやかな四肢を絡め、こちらの身体を優しく蔽うように抱き締めてきた。
隣のパン屋が焼き窯の熱で沸かす朝風呂を利用したらしく、オリーブ油と植物灰を混ぜた石鹼の香りに加えて、ほんのりとバゲットの匂いまで漂ってくる。
「起き抜けで空腹なのもあって、食指を刺激されるな」
「ん… 食べちゃう、ちゃんと責任取るなら良いよ?」
「違う、そっちの話じゃない! 朝から胸を押し付けてくるな!!」
旅装で寝具を汚さないように宿屋が用意した衣服は薄いため、弾力性に富んだ柔らかい双丘の感触を余さず伝えてくるものの、下手に欲情したら何を言われるか、分かったものではない。
「むぅ、無駄に身持ちが硬いわね……」
不服そうに耳元で囁いたリィナは俺の手を取り、まだ発育の余地がありそうな、少女らしい乳房の片方に添えさせる。
少し沈むような感覚と人肌の温度に触発され、ほぼ無意識に握り込んでしまうが、小さく漏れた彼女の嬌声で我に返り、慌てて手を離した。
さらに補足しておくと、人に個性や特質があるように同系種の魔物であっても、大なり小なりの個体差は存在する。
「勿論、過度の配慮で自縄自縛になるのは頂けない」
「むぅ、結局はどっちなのよ?」
「ほどよく先手を取るくらいが良いのかもな」
肝要なのは匙加減だとリィナに答え、事の発端であるクレアに目配せすると、微妙な表情で相槌を返してくれた。
鋭敏な感性こそが近接戦闘に於ける不可欠な素養という、自身の経験則は相変わらず、ここでも理解を得られないようだ。
致し方ないと割り切って、いつの間にか木陰で転寝していたサイアスの元まで忍び寄り、目覚まし代わりに渾身の一撃を叩き込む。
一切の躊躇なく、最短最速で振り落とした鉄鞘は独特な魔法障壁に当たり、指向性を帯びた小爆発に弾かれて盛大な音を鳴らした。
「もう少し穏便に起こせないのか、不肖の弟子め」
「昨日、普通に起こしたら、腕挫十字固めを仕掛けてきただろう!」
隙あらば不意討ちしてくる我が師に怒声をぶつけた事で、びくりと反応した三人娘の訝しげな視線を背に受けながらも、次の街に向けての第一歩を踏み出す。
後日、大きな問題もなく目的地である迎撃都市ディオルに到着したのだが……
直前で土砂降りの雨に見舞われた俺は風邪を患い、宿屋の一室で病に伏していた。
「ぐぬぅ、あの両生類ども、絶対に許すまじ」
「ダーリン、まだ年齢的に身長低いし、頭から泥被ってたね」
雨天に浮かれてバシャバシャと飛び跳ね、あたり構わず泥水を撒き散らした体高1メートル越えの巨大蛙《がえる》どもに怨嗟の声など漏らしつつ、先程から遠慮なく人の髪を弄んでいたリィナにも矛先を向ける。
「…… 鍵を掛けずに寝落ちした非は認めよう。ただ、勝手に男部屋へ入ってきて、ベッドにまで潜り込むのはどうかと思うぞ」
「ふふっ、そう言うと思って、サイアスさんの許可をもらっているわ! 気を利かせてくれたのか、席を外しているけど… あと私の添い寝、嬉しくない?」
悪戯っぽく微笑んだ薄着の娘はしなやかな四肢を絡め、こちらの身体を優しく蔽うように抱き締めてきた。
隣のパン屋が焼き窯の熱で沸かす朝風呂を利用したらしく、オリーブ油と植物灰を混ぜた石鹼の香りに加えて、ほんのりとバゲットの匂いまで漂ってくる。
「起き抜けで空腹なのもあって、食指を刺激されるな」
「ん… 食べちゃう、ちゃんと責任取るなら良いよ?」
「違う、そっちの話じゃない! 朝から胸を押し付けてくるな!!」
旅装で寝具を汚さないように宿屋が用意した衣服は薄いため、弾力性に富んだ柔らかい双丘の感触を余さず伝えてくるものの、下手に欲情したら何を言われるか、分かったものではない。
「むぅ、無駄に身持ちが硬いわね……」
不服そうに耳元で囁いたリィナは俺の手を取り、まだ発育の余地がありそうな、少女らしい乳房の片方に添えさせる。
少し沈むような感覚と人肌の温度に触発され、ほぼ無意識に握り込んでしまうが、小さく漏れた彼女の嬌声で我に返り、慌てて手を離した。
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