《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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83. 王都バナン(修正1)

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 土煙を上げてこちらへ向かってくる竜に騎乗した団体…徐々にその距離は縮まってくるのだが、誰も動く素振りは見せずに、それらを注視している。
 その反応から察するに敵では無いのだろうが、その姿がはっきりとしてくるとこちらの軍隊然とした装備をしているのが確認出来るので、やはり不安にかられてしまう。 
 
 やがて団体が私たちの直前にまで迫って来ると、先頭の一人が手を挙げて一行は停止する。 あれは止まれの合図なのだろうが、一糸乱れぬ行動から鑑みるに相当な練度の部隊のようだ。
 手を挙げた人物は竜から降りると、バイザーを外して素顔を露わにするのだが、他の隊員と思わしき人物は騎乗したまま微動だにしない。 竜の手綱を引きながら更にこちらに向かって来る人物は以外にも女性…髪の色は黒く、所々白いものが混じっている。 
 それもそのはずで、年齢としては五十台くらいで、顔立ちは綺麗なものの化粧っけが無く、しわも幾らか刻まれているのだが、加齢を隠す事の無いその装いは女性だてらに軍属として長年従事している事を伺わせるのに十分な感じだ。 
 
 「キア殿、ご無事でしたか…」

 「ソネイ隊長、貴女でしたか…そちらも変わらぬようで何よりです」

 キアの事を知っているのであれば、彼女は正王国の人物という訳だ。 感極まった顔をしているが、直ぐにハッとして、私たちの方を向き例の挨拶を行う。

 「申し訳ございません、挨拶が遅れてしまいました。 私は正王国軍所属、対厄災部隊隊長のソネイと申します、以後お見知りおきを」

 「古の故国の王女、黒き死の翼の使い手、理音と申します」

 「私は破邪の大翼の使い手、世良と申します。 戦いの神と言った方が通じますかね?」

 「えっと…特に何も無いんですが、羽音と申します。 よろしくお願いします」

 それぞれに挨拶を済ませると話はソネイさんらがここへ来た経緯と今後の段取りに話が移る。

 「王都の周辺に厄災の反応があったので、もしやと思って向かったのですが当たりでしたね。 最も到着が遅れてしまい、皆さまに負担をかける事になってしまいました。 申し訳ございません」

 ソネイと名乗る人物は深々と頭を下げるが、厄災の狙いは戦鳥の戦士なので、それは仕方の無い事だろう。 むしろ、こうやって迎えに来てくれた事自体こちらが感謝しなければならない。

 「気にする必要はないのです。 しかし、これからどうするのですか?」

 「竜車を用意していますので、皆さまにはそちらにお願いします。 因みにルートとしては地下道を通らせて頂きますので、ご了承ください」

 「地下道?」

 「はい、地上から普通に入るのでは少々目立ちますので…」

 「私たちの事は国民にはナイショか…まあ、悪目立ちする可能性もあるから仕方ないわね」

 「悪目立ち?」

 「国民の全てが私たちを歓迎しているとは余り思えないのよねぇ。 戦いを更に激化させる要因となるかもしれないから、むしろ招かれざる客なのかも…」

 「そんな事って…戦いを終わらせる為にここま来たのに」

 だが、世良さんの言葉にソネイさんの表情はあからさまに雲ってしまう…だが、それも一瞬の事で直ぐに私たちを竜車とやらに案内してくれるのだが、王国の民が内戦の継続を望まないというのも分かる話しではある。
 しかし、私たちは争いを終わらせる為に世界を越えてまでここに来たのだ…それが受け入れられなければ…。

 「羽音、行きましょう?」

 「えっ? あ、はい」

 世良さんに促されて竜車に乗り込むのだが、馬車とは違い恐竜が引いている他は何も変わらない…はずは無く、人が乗り込む例の場所は武骨な箱といった感じで、何と窓には鉄格子まで付いている…これではまるで、護送車なのだが、これがこちらの要人用の車になるのだろう。
 中に入ればそこそこに広くフカフカの座席にひんやりとした室内は外とは違い、快適そのものだ。 六人掛けなのでゆったりと座れるのだが、私は世良さんと向かい合って座りひいばあはその隣で、キアと向かい合っている。
 座る位置が決まれば、窓越しにキアが外に合図を送るので、それを確認したソネイさんの号令で竜車は動き出す。 
 周囲を囲むように隊員は配置されているのだが、やはり一糸乱れぬ動きには感心せずにはいられない。 正面に目をやれば、車を引く竜を操る隊員の背中が見えるので、暫く注視していると時折、他の隊員に指や手を動かして指示を与えているのが確認出来る。 恐らく配置を調整しているのだろうが、隊員の方からの合図もあるので、最後尾にいるソネイさんからの指示もあるのだろう。
 

 「王都に入るまで、どれくらい掛かるんでしょう?」

 「そうですね…地下道を通るのであれば、二時間ほどで着けると思います」

 「王都バナンか、どんな所なのかしら?」

 「…少なくとも、これまで訪れたどの都市よりも発展しています。 ラウ王国最大の都市になりますので」

 「へーっ…ん? 真王国よりも発展しているの?」

 「はっきり言って比べものになりませんよ」

 「そうなの?」

 正王国は比較的最近になって創られた都市であり、当時の建築技術の粋を集めて開発が行われた。 しかも、それだけでは無い、本来なら真王国へ納められるはずだった税や他国からの輸入品の殆どが正王国へと流れていった…。
 ひとえに、地理的に正王国が輸入ルート上に築かれた為であり、中央へ反発した多くの者たちはこぞって正王国へ税を納め、次第に国力として真王国を上回るようになったのだ。

 「奢れるものも久しからず、ね…」

 (ひいばあ…)

 「そうなのねぇ…こう言っては何だけど正直、再建されたラウ城を一目みたかったわね」

 「城自体はそれは立派なものですよ。 それこそ、アスレア王の肝いりですから」

 「…大分様変わりしているでしょうね」

 「そうでも無いです。 僅かながらではありますが、残っていた資料を基にかつての姿を可能な限り再現していますので…」

 かつて、ひいばあが王女として暮らしていた城が完全に再現された訳もでも無いのだろうが、世良さんと共にラウ城がそのようになっているかの興味が尽きないのは間違いない。 しかし、私たちが向かうのはを根城にする勢力と敵対する王国なのだ。
 
 そうこう思慮を巡らせている内に窓の外の景色は暗闇に取って代わる。 どうやら地下道とやらに入ったようだが、直ぐに明かりが灯されるのでそれなりに明るく長いトンネルに入ったような感覚だ。 このタイミングで隊列も細長くなるのだが、地下道と言うだけあって道幅は狭く竜車の側面を走る事は難しい故にこのような隊列になる。

 「この明かりは確か…光石こうせき、でしたか」

 「そう、光源として使われるから割とメジャーな石よね」

 光石は太陽の光を取り込んで発光すると言われているのだが、太陽光を蓄える事が出来るので、光源としてはかなり優秀だと感じる。 しかもこの石は、取り込んだ光を他の石にも伝える事が出来るので、ケーブルのようなもので繋げれば、屋外に設置した石の光を他の石に送る事が可能なのだ。
 
 大きな施設では、石は天井一面に張り付けられているのだが、もう一つ変わった特性があり、光を取り込めない夜になると、発光せずにガラスのように透明になってしまうのだという。 故に連動している室内の明かりもまた外の景色を取り込んでしまうのだが、スザンで就寝時に満天の星空を見れたのはこのような理屈からだ。

 「すごいなぁ、流石異世界だよね…」

 ここにはまだまだ知らないこの世界の理がある。 だが、そのような話ばかりをしては居られない…王都に徐々に近づいているのだが、果たしてそこで待ち受けるものとは一体何なのだろうか……。
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