《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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147. 天地鳴動(後編)

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 ついに現れた厄災の本体…異形の姿で持って立ちはだかる全ての元凶を、戦鳥の戦士たちは打ち破る事が出来るのだろうか。

 
 「当てる!」

 引き金を振り絞ると「ドウッ」という音と共に一条の光の帯が厄災たちを貫いて行く、肩に担ぐ様はノーマの雷砲のようだがあれよりコンパクトではあるものの、威力としては申し分ない。
 これは所謂、バズーカ砲という物になるのだろう。

 「まだまだ!」

 威力の割りには速射性能が高いのが有り難いが、何せ周りは厄災だらけ…舟はすっかり囲まれてしまったが、これも作戦の内、いやこれが作戦と呼べるかどうかは分からない。
 
 (本体が出て来た、それは即ち厄災が際限無く生み出させるということ…長期戦になれば私たちは圧倒的に不利になる、だから短期決戦を仕掛けると決めたんだ)

 舟と共に強引に突っ込み、十分に近づいた上で主砲をゼロ距離で放ち、それと同時にコアを破壊する。 切り札とも呼べる武装が備わっていたのが幸いだが、連射が出来る代物ではないのでチャンスは一回きり…だが、絶対に成功させねばならない、出来なければ敗北してしまうのはこちら側になってしまうのだ。

 「邪魔よ!」

 一たび放てば数十体を巻き込むほど強力だが、それでも厄災の数が減ったようには見受けられない。 やはりこれまでとは完全に規模が違う、皆も舟の周辺で応戦しているが永遠に戦えるわけでは無い。
 
 (キリがないな、早く終わらせなきゃ…あ、ヒナさんの方に敵が!)

 

 『…ミサイル多数接近』
 
 「回避はしない、防御に徹する」

 『御意』

 (舟も応戦しているにも関わらず、まるで減った気がしない…防衛の為に先陣に立ったが何時まで持つか)

 全てが着弾しても何とか凌げる、そう思った時一陣の閃光がミサイルを薙ぎ払った。

 「羽音…あの距離から全て撃ち落としたというの?」

 『想いの翼のサポートもあるでしょうが、それでも大したものです…通信を繋げます』

 「ヒナさん大丈夫ですか?」
 
 「大丈夫よ、有難う」

 「出来る限り援護します」

 「…ええ、宜しく頼むわ」

 彼女の戦士としての成長が著しい、やはり宿命の子の名は伊達では無い。 この戦い、やはり勝利のカギとなるのは彼女の秘められた力となるだろう。
 

 「…下方へ回った敵が多いわね」
 
 「ここは私に任せてあちらへ」

 「ええ、出来れば世良の援護もお願いしたいわね」

 「こちらの目途が付けば直ぐに行こう」

 「頼みましたよ、雷帝…」

 
 「雷帝、か」

 『何か分不相応な気が…』

 「まあいいさ…そらっ!」

 雷撃を広範囲に放てば有象無象など物の数では無い、しかし一帯の個体を一掃しても直ぐに補充されるのは、あの黒い表体から次々と厄災が出現しているから…アレを何とかしなければならないのだが、四肢を持つ形状をしながらもその頭部に当たる部分は特に形状が安定せずに、様々な生物を象っている。

 「醜悪だな、赤子の頭部か」

 『その前は聖獣の…何と許し難い』

 これはもしや挑発なのだろうか、だがそうなると厄災には何らかの意思が働いているのかもしれない。 いや、これまでの戦いで明確な意思を持った個体が現れた試しは無いのだが…そう、どちらかと言えば細菌のようにただ増殖の為だけに活動しているような、そんな存在でしかないと考えてしまう。
 
 「と、考察している場合では無いな」
 
 直ぐに先ほどと同じ位の数に戻ってしまうのだから、このまま戦っていても勝ち目は薄いだろう、早く手筈の通りにしなければならないのだが、援護も含めて今少し時間が掛かりそうだ…。

 
 「…また囲まれたわね」

 『いい加減コイツらとの戦いも飽きてきたな…』

 「腐れ縁と言うヤツかしらね」

 『さっさと切りたい御縁だな』
 
 矢を放ちながら接近して来る変異体の攻撃を躱し、小手を放つとコアを貫きあっさりと爆散する。 今の所地上部隊が出現していないのを鑑みるに、こちらの高度では攻撃が届かないからという事なのだろう。

 「これは、チャンスじゃないかしら?」

 『このまま行ければそうかもしれんが、相手も必死だろう…』

 「そうね、それにちょっと気になる事があるのよね…」


 
 「炎よ焼き尽くせ!!」

 翼から炎を噴き上げながら羽ばたかせれば、辺りの敵は消し炭になるとして瞬く間に本体から出現して来るので、一向に数は減らない。 
 これは皆もそう思っているだろうがもう一つ気になる事がある、それは…
 
 『両サイドからの敵が少ない』

 「舟の上部と下部に集中しているのです…どちらかと言えば上の方が多い」

 舟の四方を護る為に左舷に付いたのだが、いささか拍子抜けした感じだ。 だが、サイドからの攻撃が無いのは何かしらの作戦なのだろうか、だとしたらどういう意図があるのだろう?

 「作戦…厄災が?」

 『ム! もしや…』

 

 『羽音、舟から離れている…いや、舟の高度が下がっているな』

 「え? どうして」

 『その通りだ、上からの攻撃が激しい為舟の高度を下げつつ前進している』
 
 「管理者? でも、それじゃ…」
 
 『地上部隊を繰り出せる高度になる前に辿り着かねばなるまい』

 確かに舟の上部に敵は集中しているだろう、故に両サイトからの攻撃は殆ど無いのだが、私たちは防衛の為に四方に散らばってしまった。
 もしかしたら、これは悪手だったかもしれない。 現に舟の高度は下がり続けているのだから、こちらも取り急ぎ散らばる翼を集めなければならないのだ。

 「誰か、上の防衛に回れませんか?」

 「私が行くわ」

 「ひいばあ?」

 「こちらもある程度捌いたら向かうのです」

 「うん、お願い」

 ひいばあとキアが来てくれるが、それで事態が好転するかと言えば分からない。 何せ舟の高度を戻さなければならないのだから、それこそ一掃する位の戦力が必要だろう。
 
 「後少しなのに」

 『何だ? 厄災の表体が…』

 「何?」
 
 本体の表面が激しく波を打ちうねっている、やがてうねりは波紋となって、そこから黒い物体が無数に飛び出してくるのだが…。

 「くっ! 回避」

 とても防御する気にもなれないのだが、舟の羽に黒い物体が触れたその瞬間羽は黒ずみ剝がれ落ちてしまう、まるで腐り落ちてしまったかのようだ。

 「羽が…」

 『ムウ、羽の再生にエネルギーを回せば推力が落ちてしまうな』

 「どうしよう、どうすれば…」

 羽は舟にとって攻防一体の武器であり必要不可欠な物だ、このまま失い続けて良いものでは決してないのだが、さりとて推力が落ちてしまえばいつまで経っても本体にはたどり着けない。
 ならば羽を失ったままで良いのか、ダメだ厄災の攻撃に船体が晒されてしまえば轟沈してしまう恐れがある。

 「何か良い方法が…ん?」

 本体の頭部にあるコア、まるで一つ目のようでこちらを睨んでいるようにも見えるとして、その視線は私に向かっているように感じる。
 違う、感じるでは無くてそうなのだ、それは何故だろう?

 「私が厄災に仇名す存在だから…そうだ!!」

 『どうしたんだい?』

 「高度を上げて、舟から離れる」
 
 『今離れては危険だが…』

 「それが狙いよ」

 
 「理音殿あれを!」

 「羽音? 舟を離れてはダメよ!」

 「私が厄災を引き付けるから、ひいばあ達はそのまま行って!」

 「危険よ!」

 「でもそうしなければ舟が持たない…私なら大丈夫だから、お願い! 行って!!」

 「羽音殿…」

 「…分かった、頼むわよ」

 「理音殿? 良いのですか」

 「あの子の言う通り、このままではじり貧よ。 この戦い、何としても勝たねば」

 「そう、ですね…行きましょう」

 
 高度を上げ舟の上空へ来るとそれに呼応するかの如く、厄災も上空へと上って来る。 次々と生み出される個体もそうなのだから、余程私の事が目障りなのだろう、だがそれが敗北の要因となるのだ。

 『完全包囲か…』

 「これでいいの、さあ私が相手よ!」

 この戦い必ず勝利する、絶対に負けられないのだから…。
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