《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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161. 想いの強さ

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 厄災との戦いの最中に行方不明になった羽音の探索の為にクレーターの内部を下降していると、正体不明の敵と交戦中の想いの翼を発見する。
 だが既に暴走状態になっており、光の刃を全身から放っている様が確認出来るのだが、暴走してしまうハードルが段々と低くなっているような印象を受けてしまう。 

 「見つけた、が…どうする?」
 
 「決まっています、助けるのです」

 助ける…それはそうなのだが相手の力は未知数であり、また暴走した想いの翼の攻撃に巻き込まれてしまう可能性もあり非情に危険だ。
 だからと言って、このまま様子見をしている訳にもいかないが。
 
 「どの道行くしか無いか」
 
 「急ぎましょう!」
 
 向かっている最中にも戦いを行っているのが視認出来るとして、敵はまるで虫の化け物のようだ。 しかもあの化け物は、距離をとって牽制しつつ火弾によって攻撃しているのだが、これは一体どういう事なのか。

 「…炎かと思ったら次は雷か!」

 「あれはもしかしたら、石の力を利用しているのかもしれません」

 石の力…だとしたら炎は説明が付かないのだが、そういう未知なる石が眠っていたという事だろうか、いずれにしても危険な状態だ。 
 ここには相当量の石が眠っているのだから、それを使っているとなるとまず勝ち目は無い。 実質無限に戦えると言ってもいいだろう。

 (それにしても何という厄介な敵と戦っているんだ…理由はやはり転移晶の為なのか?)

 『何か来る!』

 「!まさか」

 私たちの下降を妨げるようにして横切って行く、そのシルエットには見覚えがある。

 「あれは高速戦闘型! こんな所にも現れるとは」

 案の定というかやはりと言うべきか…私たちの行く手を阻む存在は遠くに消えゆくと見せかけて、切り替えてして襲撃してくる。

 『こちらが狙われた、防御だ!』

 「分かっている!」

 攻撃は盾で防げたものの、衝撃は凄まじく手がしびれてしまう程だ。 だが、何時までも余韻に浸っている暇など無く、体制を整えて雷砲を向けてみるのだが既にその存在は遠く離れてしまっている。
 
 「また切り返してくるか…何処からだ?」

 『待ってくれ、砲撃は危険だ』

 「危険?」

 ここには様々な力の石が埋まっている、そこには焼石のように強い衝撃を与えてはいけない石があり、また未知なる石も存在する。
 そこに雷でもって衝撃を与えるとどんな事が起こるか予測が付かない、と言うよりも爆発し大規模な崩落にでもなったら、転移晶どころでは無くなってしまうのだ。

 「主軸の武器が使えないか、厄介だな」

 「私が行きます! ノーマは羽音を!!」

 「あっ、おい!」

 『私もその方が良いと思う、急ごう』

 言うが早いかキアは追撃を開始し、彼方へと飛び去って行く…こうなってしまっては仕方が無いので向かうとして、下の戦いにとある変化が訪れていたのだがそれはーー

 「あれは不味い!」
 
 

 『これは、これは…大した力ですねぇ』

 「オォォォォォ!!」

 『フ、威力は申し分無いが出鱈目で大振りな攻撃ばかり…ならばこれでどうです!!』

 「!?」

 『喰らいなさい! 絶対零度の凍気を!!』


 降下する速度を速める中で見たものは、口から凍気を吐き出す化け物と直撃を受ける想いの翼…その表体は見る見る内に氷漬けになり、やがては力無く落下して行く。

 「羽音! くっ!!」

 『間に合わなかったか!』

 悔やんでいても始まらない、急ぎ落下して向かおうとすると化け物もまた下降を始める。 恐らくは止めを刺すつもりだろう、このままでは羽音の命が危ない。

 「…先にあの化け物を排除する」

 『その方が良さそうだ、最もすんなりとはいかんだろうが』

 
 『おやおや、今更になってお仲間のご登場ですか…お呼びではありませんよ!』 

 「何!? うわっ!」

 突風に吹かれてしまい押し戻されてしまうのだが、風石の力を持っていること位察しておくべきだった。 迂闊だったと反省していると、遠く壁際に飛ぶ炎の翼を視認する。

 「キア…大分苦戦しているようだが」

 いかに広いとはいえ、天空と違いここクレーター内部では空間に限りがある、にも拘らず相手は壁に激突するリスクもお構い無しに際を飛んでいるのだが、あれを真似するのは至難の業だろう。

 「射撃で援護出来れば良いのだろうが…」

 『危険だ、不死の翼もそれが出来れば苦労は無いだろう』

 キアの方も気にはなるが先ずは羽音だ、しかし問題はこちらの武器が制限される中あの強敵と如何にして戦うかだ…。

 (考えている暇も無いか、行かねば何も始まらない)

 

 「う…」

 『羽音、しっかりするんだ…』

 「ぐっ…」

 全身が冷たく酷く痛む…また暴走してしまったのだが、凍気を浴びせられた時に一瞬意識を取り戻した。 だが、凍りついてしまうと直ぐにまた意識を失って落下してしまったのだ。
 
 「体が…動かない」
 
 起き上がる為に体を動かそうとすると「パキッ」という音と共に関節がやや動くとして、それ以上は痛みと寒さが相まって、とてもでは無いが立つ事など叶わない。 
 このままでは非常に不味い、直に女王が着てしまうのだから立ち上がって体制を整え無ければならないのだが…。
 
 「ダメ、立てないよ…」
 
 『このままでは低体温症になってしまう…危険な状態だ』

 「やっぱりもう無理だ」


 『おやおや、もうお終いですか』

 女王は悠々と降下してやがては地面に降り立つ、このままではやられてしまうと思いつつ、もう体を動かす気力も残ってはいない。 
 
 『さあ、立ちなさい…まだ勝負は終わっていません』

 「無理だよ、もう立てない」

 『立てない? 何を甘えた事を…このままでは死んでしまうのですよ?』

 「でも、無理なものは無理…」

 『ハァ、弱い弱すぎる…よくそれで災禍と戦おうなどど思った物です』

 弱い、そうだ私は弱く簡単に折れてしまった…これでは皆に合わせる顔が無いがもう無理なのだ。

 (私は強く無い、それは何故だろう?)

 答えは簡単だ、私は皆のように辛い経験を乗り越えた事など無い。 家族の、両親の庇護の元に不自由無く暮らして来たのだ。
 大切な人を、家族を失う悲しみ…ばあばを亡くした時は悲しかったが、それが何だと言うのだろう。 キアやノーマは家族だけでなく故郷も失っているのだ。
 
 それに私がどんな苦労をしてきたと言うのだろうか…勉強や習い事が面倒くさい、小遣いがもっと欲しいなど些末な事ばかりだ。 
 世良さんは家族と離れ離れになり、異世界で戦い抜いてきたというのに。

 ヒナさんはいつ終わるともしれない輪廻転生に身を投じた。 ひいばあは家族も故郷も失い、慣れぬ異世界で生きて行く事を決意したのだ。
 
 (それに比べて私は…)

 
 『戦意を完全に消失したか…ならばせめて苦しくないようひと思いに止めを刺しましょう』

 女王の右手から伸びる光の刃、私はあれで命を奪われてしまうのかと思うと不思議と嫌な感じはしない。 もう感覚がマヒしてしまったのだろうか。

 『羽音しっかりするんだ、ここで終わってどうする』

 「それは分かっているけど、私は弱いからどうしようもないよ」
 
 『…弱ければここで終わってもいいのかい?』

 「……」

 
 『これで終わりです、結局貴女は悲しみの連鎖を断ち切れないかった』

 「悲しみの連鎖…」

 『災禍が存在する限り、世界の悲しみは終わらない…貴女は何も学ばなかったのですか?』

 「私は…そうだ、学び知る事」

 私は知っている、皆の悲しみ苦しみ怒り…いや、それは戦鳥に選ばれた者だけでは無い。 このままでは二つの世界に蔓延してしまうのだ。
 
 『それを止められるのは、キミだけだ』

 「私だけ…私がやらねば」

 思い出した、あの時想いの翼との契約で願った事をーー

 
 「……想いの翼よ、私に力を貸して!!」

 『何!? 光が凍気を溶かして行く!』

 そう…今ようやく分かった、この力の使い方がーー

 「本当の勝負はこれからよ! 私は、絶対に負けない!!」
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