不要な見張りは何を見る?

白慨 揶揄

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出会い斡旋 反組織

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 それから数日。 
 実際に会って話したことで、僕の中でメヤさんは【黒】が確定した。エガミに言っていたことを僕にも伝え、泣き落とそうとする。
 だが、僕はエガミと違って純粋な学生じゃない。人々の悪意を向けられ続けた【不要な見張り人】だ。だから、僕はそうしった感情には少しばかり敏感だ。
 彼女の言葉と表情には、僕を騙そうとする悪意しかなかった。

 後は証拠を集めてエガミに突きつけるだけ。
 そのために、姉であるカノンちゃんに協力を仰いだ。

「それにしても、よくも平然と男の人を騙せるんですね。私は考えられないですよ」
「僕もだよ」

 メヤの追跡は至ってシンプルだった。【出会い斡旋所】に出勤し、男を連れて酒場に言って金額を払わせる。
 毎日がその繰り返しだった。
【不要な見張り人】とどっちが問題なのか、全王国民に問いたいが、僕にそんな権力はないし、比べる人もいないだろう。

 そして、調べていく中でメヤさんが誰が本命なのか。
 それを手に入れることが出来た。
 メヤさんの本命。
 それは客じゃなかった。
 僕の好みを聞いてきたあの色男だった。

 男たちを騙して稼いだ金を別の男に貢ぐ。
 まさしく、弱肉強食と呼べるだろう。
 大金を受け取った色男は、札束で団扇を作りながら2人で宿屋に消えていった。そこで何が行われるのか、高校生のカノンでも想像がつくようだ。

「許せない!」

 カノンの怒りが頂点に達したようだ。
 その場で乗り込もうとする彼女を押さえ、僕は次の手を考える。ここでローマンに頼っても良いが、それでは僕もカノンちゃんも気が晴れなかった。
 僕とカノンちゃんは【出会い斡旋所】を摘発することを決めた。
 そうと決まれば話は早い。
 もともと証拠を抑えるために【念写】を持つカノンちゃんがいた。その証拠を紙に念写し国中にバラまけばいいだけのこと。

 僕たちの策は狙い通りに騒ぎになった。
 そして、そのことが問題になったのか、王国兵が【出会い斡旋所】を封鎖し、関係者たちを捕えたのだった。
 摘発自体は想像よりも順調だった。
 だが、僕たちの想像を大きく超えた出来事があった。
 それはエガミの落ち込みようだ。
 毎日、仕事に明け暮れていたエガミは、仕事も学校も行かず家に閉じこもる結果となった。明るい性格から直ぐに立ち直ると思ったのだが、一か月立っても変わらずじまい。
 それどころか、食事もロクに取らずに体重だけが減っていた。

「どうしよう……」

 証拠を集めれば良かっただけの摘発とは違い、なにをすればいいのかすら分からなかった。
 立ち直るのは本人の責任。
 無責任な言葉は、本人の心をより苦しめるだけだ。
 そのことを散々、言葉を掛けてようやく僕たちは気付いた。

 テツが言う。

「あれだけ好きなお前を騙していたんだ。こんな良い奴に振り向かないなんて、あいつは絶対後悔するぜ」
「いや、どうでもいいから、騙してたんだろ? そんな奴が後悔するかよ」
「あ、ああ、確かにな」

 綺麗な返り討ちを浴びてカノンちゃんに慰められていた。
 次に立ち上がったのはバクシン。

「世の中、人間は沢山おるじゃろう。いつまでも、1人を追い続けるなよ」
「なら、ナミネと別れられるか?」
「……無理じゃのぉ」


 自信満々に励ましに向かったシンバクは数秒で引き返してきた。
 戦闘では心強いがこういった場面では、驚くほど心細かった。

 次に励ましに向かったのはベル。

「散々、貢いだ挙句、なにも残らないまま凹んでるね。なんて、愚かな男なのかしら。ここまで愚かだと笑いを通り越して、淡い恋に同情するわね。人にしか自分を見いだせない何て哀れな男なの。淡くて哀れな笑いもの――」
「頼むから、ベルは何もいわないでくれ!」

 流石に僕が止めた。
 どんな励ましの言葉も聞かなかったエガミを救ったのはローマンだった。

「今後とも、同じようなことを組織は始めると思うんだ。だから、一度、落ち着いたこのタイミングで、ちゃんとした【出会いの場】を国が管理しようと思う。その管理に君に関わって欲しいんだ」
「俺に……?」
「うん。その痛みを知った君なら、自分の利益よりも他人の恋を優先させられるでしょ」
「でも、こんな俺でいいのかな?」
「そんな君だから必要なんだ。力を貸してくれるかな?」
「俺、俺、やってみるよ!」

 エガミを救ったのは恋の慰めでなく使命だった。
 やる気に満ちたエガミは学校にも通い、放課後は王国で【出会いの場】に向けて準備に明け暮れる。
 それは貢ぐために稼いでいた時よりも、更に楽しそうだった。

「因みになんだけど、ソウちゃんもやってみる気はないかな?」
「僕なんか、やれるわけないでしょ。恋とか絶対向いてないから」
「うん。だよね。取り敢えず誘ってみたけど、すぐに言わなきゃ良かったって後悔してもん」
「……」

 僕はローマンに傷つけられた心を癒すために花屋にへとやってきた。
 色彩豊かな花々ですら、上を向いている花と下を向く花がある。
 ならば、意思がある人間は余計その時の感情で向く場所は代わる。
 そんなことを思っているとふと、一つの花が目に入った。
 紫の花弁が両手を広げてお辞儀しているような形状をしていた。花の名を見る。
 カキツバタというらしい。
 見惚れる僕に花屋の店長が言う。

「カキツバタの花言葉は「幸せは必ず来る」ですよ」

 僕はエガミの仕事が落ち着いたらそれを送ろうと心に決めた。
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