7 / 39
第2-1話 畑の復活
しおりを挟む
森から、街に帰る道のりは1人の時よりも速かった。と、いうのも、フルムさんは馬車を使っており、僕も一緒にお供させて貰ったからだ。
なにから何まで感謝しかない。
今後、一切、僕はフルムさんに逆らうことは出来ないな。
あっという間に僕は畑に帰ってきた。
泥水の溜まる畑は何度見ても気分を重くする。
「あら、あなたは中々立派なゴミ処理場を持ってるわね。ひょっとして、結構、良い所の子なのかしら?」
フルムさんへの恩で溺れていた僕に対して、畑を見たフルムさんの第一声がそれだった。
サァー。
一瞬で恩が引いていった。
「……」
確かに。
確かに、今、僕の畑はフレアに荒らされて、とてもじゃないが、作物が育てられる状況じゃない。
でも、だからってゴミ処理場はないんじゃないか……?
「ここが僕の畑です」
「……ごめんなさい。また、癖が出てしまったわね」
「今のは本気でしたよね!?」
失言を『癖』に擦り付けたフルムさんは、しゃがんで土に手を触れる。土に紛れていた作物の葉に気付いたのか、そっと摘まみ持ち上げた。
「それにしても、酷いことするわね。フレアも……」
酷いこと言うのはあなたですけどね。
そう言いたくなったが、こうして畑を戻すために寄ってくれたのだ。
なんとか堪えて別の言葉を口にした。
「本当に、【陽】属性で元に戻るんでしょうか?」
「さあ? そればかりは、試してみないとね。でも、私の傷は治ったのだから、少なくとも人に作用することは間違いないわね」
フルムさんは摘まんでいた葉を離して、再び地面に手を触れた。身体を流れる【魔力】に意識を集中させ、【陽】の属性に変換させる。
「【回復《キュア》】」
指先から橙色をした光が地面を伝い、枯れた葉と身に流れ込んでいく。
「う、うそ……」
光を浴びた野菜を掴んで僕は驚愕する。
さっきまでの身が削れ、痛んでいたのが嘘のようだ。まるで、今、採れたばかりの瑞々しさを誇っていた。
野菜だけじゃない。土もそうだ。水で濡れ、泥となっていたのだが、程よく乾き、僕が手入れしていた状態に回復していた。
これでまた――野菜が作れる!!
「ありがとうございます!! 本当に、本当になんと言っていいか!!」
畑が無ければ、作物が育てられずに、その間は無収入だ。
叔父さんは、駄目になった野菜を自分たちで食せばいい。そう笑っていたけど、でも、やっぱり、叔父さんには、バランスのいい食事を取って貰いたかった。
もう、若くないんだから。
これからの生活に安堵し、改めて礼を言うべくフルムさんを見る。
額に汗を浮かべて立ち上がった。
「ふぅ。意外に疲れるのね、これって、あれ……?」
額に流れる汗を拭う――と同時にその場で倒れてしまった。恐らく【魔力】の使い過ぎによるものだろう。
僕は慌てて駆け寄り、呼びかける。
「だ、大丈夫ですか!?」
僕の声に反応はない。
耳を口元に近付けて呼吸しているか確認をすると――、
「すやすや」
フルムさんの寝息が聞こえてきた。
良かった。【魔力】の使い過ぎて寝ているみたいだ。
◇
「ただいま帰りました」
「アウラ!! お前、二日間も何処に言ってたんだ! 儂がどれだけ心配したことか――って、フルム様!?」
叔父さんは立ち上がり、転びそうな勢いで駆け寄ってきた。いつも穏やかな叔父さんの焦った表情。
それだけで、どれだけ僕を心配していたのか伝わってくる。
だが、僕が抱える少女を見て、青白くなった表情から、更に血の気が失われていく。
「一体、この二日間で何が起こったんじゃ!? なぜ、お主とフルム様が一緒に!?」
「ごめんなさい。ちょっと、色々あって……。僕もまだ、整理出来ていないんですけど」
眠っているフルムさんを暖炉の横に置いて、そっと毛布を掛けた。暖かさを感じたのか、フルムさんの表情が少し柔らかくなった気がした。
眠るフルムさんの横で僕は叔父さんに、何が起こったのかを話す。
「実は僕、【願いの祠】に行ってきたんです」
「【願いの祠】……。とは、なんじゃ?」
「あ、えっと……」
叔父さんは【願いの祠】の存在を知らなかったようだ。確かに、僕もあの本に出会うまでは知らなかったし。
僕は森の場所と、そこでフルムさんに出会い、不思議から力を授かったことを説明した。
「力を授かったって……。そんな話、信じられんわい……」
「僕もまだ実感は湧いていないんだけど」
でも、力があることに違いはない。
僕は玄関を開けると、手の平を外に向けて意識を集中する。
ドッ。
青白い光が弾となって【放出】され、近くにあった木に当たり、幹を大きく抉って消滅した。
「な、なんじゃ!? そりゃ!?」
見たこともない力に叔父さんは腰を抜かしたかのように、尻餅を付いた。
「赤ん坊曰く、【放出】というらしいんですけど……」
「よく分からん【放出】とかいう力に、意識を失ったフルム様……。駄目じゃ、年の儂には理解が追い付かん。とにかく、今日はもう休むべきじゃ……」
叔父さんは頭を抑えながら自分の寝室へと向かった。
そうだよね、こんなことが一度に起きたら誰だって混乱する。僕は椅子に座り、静かに瞳を閉じた。
なにから何まで感謝しかない。
今後、一切、僕はフルムさんに逆らうことは出来ないな。
あっという間に僕は畑に帰ってきた。
泥水の溜まる畑は何度見ても気分を重くする。
「あら、あなたは中々立派なゴミ処理場を持ってるわね。ひょっとして、結構、良い所の子なのかしら?」
フルムさんへの恩で溺れていた僕に対して、畑を見たフルムさんの第一声がそれだった。
サァー。
一瞬で恩が引いていった。
「……」
確かに。
確かに、今、僕の畑はフレアに荒らされて、とてもじゃないが、作物が育てられる状況じゃない。
でも、だからってゴミ処理場はないんじゃないか……?
「ここが僕の畑です」
「……ごめんなさい。また、癖が出てしまったわね」
「今のは本気でしたよね!?」
失言を『癖』に擦り付けたフルムさんは、しゃがんで土に手を触れる。土に紛れていた作物の葉に気付いたのか、そっと摘まみ持ち上げた。
「それにしても、酷いことするわね。フレアも……」
酷いこと言うのはあなたですけどね。
そう言いたくなったが、こうして畑を戻すために寄ってくれたのだ。
なんとか堪えて別の言葉を口にした。
「本当に、【陽】属性で元に戻るんでしょうか?」
「さあ? そればかりは、試してみないとね。でも、私の傷は治ったのだから、少なくとも人に作用することは間違いないわね」
フルムさんは摘まんでいた葉を離して、再び地面に手を触れた。身体を流れる【魔力】に意識を集中させ、【陽】の属性に変換させる。
「【回復《キュア》】」
指先から橙色をした光が地面を伝い、枯れた葉と身に流れ込んでいく。
「う、うそ……」
光を浴びた野菜を掴んで僕は驚愕する。
さっきまでの身が削れ、痛んでいたのが嘘のようだ。まるで、今、採れたばかりの瑞々しさを誇っていた。
野菜だけじゃない。土もそうだ。水で濡れ、泥となっていたのだが、程よく乾き、僕が手入れしていた状態に回復していた。
これでまた――野菜が作れる!!
「ありがとうございます!! 本当に、本当になんと言っていいか!!」
畑が無ければ、作物が育てられずに、その間は無収入だ。
叔父さんは、駄目になった野菜を自分たちで食せばいい。そう笑っていたけど、でも、やっぱり、叔父さんには、バランスのいい食事を取って貰いたかった。
もう、若くないんだから。
これからの生活に安堵し、改めて礼を言うべくフルムさんを見る。
額に汗を浮かべて立ち上がった。
「ふぅ。意外に疲れるのね、これって、あれ……?」
額に流れる汗を拭う――と同時にその場で倒れてしまった。恐らく【魔力】の使い過ぎによるものだろう。
僕は慌てて駆け寄り、呼びかける。
「だ、大丈夫ですか!?」
僕の声に反応はない。
耳を口元に近付けて呼吸しているか確認をすると――、
「すやすや」
フルムさんの寝息が聞こえてきた。
良かった。【魔力】の使い過ぎて寝ているみたいだ。
◇
「ただいま帰りました」
「アウラ!! お前、二日間も何処に言ってたんだ! 儂がどれだけ心配したことか――って、フルム様!?」
叔父さんは立ち上がり、転びそうな勢いで駆け寄ってきた。いつも穏やかな叔父さんの焦った表情。
それだけで、どれだけ僕を心配していたのか伝わってくる。
だが、僕が抱える少女を見て、青白くなった表情から、更に血の気が失われていく。
「一体、この二日間で何が起こったんじゃ!? なぜ、お主とフルム様が一緒に!?」
「ごめんなさい。ちょっと、色々あって……。僕もまだ、整理出来ていないんですけど」
眠っているフルムさんを暖炉の横に置いて、そっと毛布を掛けた。暖かさを感じたのか、フルムさんの表情が少し柔らかくなった気がした。
眠るフルムさんの横で僕は叔父さんに、何が起こったのかを話す。
「実は僕、【願いの祠】に行ってきたんです」
「【願いの祠】……。とは、なんじゃ?」
「あ、えっと……」
叔父さんは【願いの祠】の存在を知らなかったようだ。確かに、僕もあの本に出会うまでは知らなかったし。
僕は森の場所と、そこでフルムさんに出会い、不思議から力を授かったことを説明した。
「力を授かったって……。そんな話、信じられんわい……」
「僕もまだ実感は湧いていないんだけど」
でも、力があることに違いはない。
僕は玄関を開けると、手の平を外に向けて意識を集中する。
ドッ。
青白い光が弾となって【放出】され、近くにあった木に当たり、幹を大きく抉って消滅した。
「な、なんじゃ!? そりゃ!?」
見たこともない力に叔父さんは腰を抜かしたかのように、尻餅を付いた。
「赤ん坊曰く、【放出】というらしいんですけど……」
「よく分からん【放出】とかいう力に、意識を失ったフルム様……。駄目じゃ、年の儂には理解が追い付かん。とにかく、今日はもう休むべきじゃ……」
叔父さんは頭を抑えながら自分の寝室へと向かった。
そうだよね、こんなことが一度に起きたら誰だって混乱する。僕は椅子に座り、静かに瞳を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる