魔力は自由だ!~魔法を使えない僕は、悪役令嬢を追放された彼女に命を救われる。恩返しするため、魔力放出を鍛えます~

白慨 揶揄

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第2-5話 共に戦う

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「私がいないとてんで駄目ね」

 朧な意識の中でフルムさんの声が聞こえてくる。
 その通りです。
 やっぱり、僕みたいな無能な農家は、【獣人】を倒すことは――

 ヒュン。

 僕の懺悔を切り裂くように、鞭が【獣人】を襲った。
 首に掛けられていた手が外れた。
 僕は、一気に酸素を取り込む。

「はぁ、はぁ……。ゴホっ……。こ、これは――フルムさん?」

 鞭の【魔法】。
 それに、さっきの声。
 まさか、フルムさんが!?

 僕の声に、

「そう、私よ」

 フルムさんは闇の中からゆっくりと歩いてきた。

「全く、1人でなに格好つけてるのよ」

 僕の太ももに手を当てて【陽】の属性で傷を癒していく。みるみる痛みが消えた。

「さてと。問題はこの【獣人】よね」

 フルムさんのことを警戒したのか、再び空に舞い闇夜に紛れる。
 こうなっては、手出しができない。
 いつ、頭上から水の刃が降り注ぐのか。
 やっぱり、守りに専念し様子をみるしか……。

「……なるほど。空を飛ぶ相手ね。手がないことはないわ」

 フルムさんは空を見上げ不敵に笑った。

「なにか、いい案があるんですか?」

「当たり前でしょう。私は貴方みたいに手に入れた力に浮かれて、1人で馬鹿する愚かな人間とは違うのよ」

「……」

 返す言葉もございません。
 項垂れた僕を引き裂くように首元に刃が放たれた。僕が【盾】を発動するよりも先に、フルムさんが【土《アース》・鞭《ウィップ》】で打ち落とす。

 水に強い属性は土。
 
 でも、【魔法】の軌道に合わせて鞭を振るうなんて、相性云々を除いても凄すぎる。
 水の刃が通じないと分かり、【獣人】は攻撃の手を緩めた。
 水の刃が【魔法】であれば、【魔力】に限度がある。無駄な力を使わず温存する知能が【獣人】にはあった。

 次の攻撃に備え、身を屈めながらフルムさんが言った。

「相手が空を飛ぶなら――こっちも飛べばいい。それだけのことよ」

「それって、まさか――!?」

「そう。【属性限定魔法】よ。へえ、貴方でも知ってるのね。ちょっとだけ見直したわ」

「それは、もう……。【属性限定魔法】は誰でも憧れる【魔法】ですから」

【属性限定魔法】はその名の通り、限られた属性でしか発動することが出来ない、特別な【魔法】だ。
 そして、何よりも膨大な【魔力】を消費するために、扱える人間が少ない。

 まさか、フルムさんは扱えるのか!?
 僕に見せつけるかのようにフルムさんは詠唱する。

「【風・属性限定魔法――飛行】」

 詠唱が終わると同時に、「ふわり」とフルムさんの身体が宙に浮いた。
 8の字を描くようにして空を飛び、感覚を確認する。

「ほ、本当に発動してる……。す、凄い……」

 フルムさんの才能に、自然と口が開いてしまう。

「まあ、発動には凄い苦労と集中が必要なんだけどね。これは、私くらいの天才でないと使えないわね」

 フルムさんは頭上を睨む。
 姿の見えぬ【獣人】に向かって飛翔した。フルムさんの姿もやがて闇夜に消えて見えなくなる。

「フルムさんは本当に天才だ……」

 一体、今、このブレイズ王国に【属性限定魔法】を扱える人間がどれほどいるのだろうか。恐らく、数えるほどしかいないのではないか?
 なんだって、あの強気なフルムさんが苦労と集中力が必要だって言うんだから――。
 そこまで考えた所で、僕は少し引っ掛かりを覚えた。

 うん?
 ちょっと待って?
 今までのフルムさんの言動から考えるに、そんなことを言う性格だったか?
 この数日間で僕が知ったフルムさんは、苦労を自ら口にするような人間ではない。むしろ、他人に努力や苦労を知られたくないはず。

 だって、彼女は優しいから心配を掛けまいとしたんだから。

 嫌な予感を抱きながら頭上を見る。
 僕にはそれしかできなかった。

「あ、フルムさん!!」

 しばらく、眺めていると、勢いよくフルムさんが下降してきた。
 地面に足を付けて呼吸を整える。
 怪我は――していないみたいだけど、星々が照らす僅かな灯りでも、顔が白くなっているのが分かる。

「あの【獣人】――中々やるわね。でも、次で確実に倒すから見てなさい!!」

 僅かな休息の後に、もう一度、空中に向けて跳躍をするが――。

 ガシッ。

 僕は彼女の足首を掴んだ。
 空中に飛び出せずに、その場で固まるフルムさん。

「なにするのかしら? 文字通り足を引っ張ろうと言うのであれば、容赦なくあなたの意識を奪うわよ?」

 そうか。
 僕の意識を奪うのか。

「なら……やってみてください」

「……」

「意識を奪うために【魔法】を使ってみてくださいって言ってるんです。どうしたんですか? できないんですか?」

 フルムさんは僕から逃げるように視線を逸らした。

「やっぱり。【属性限定魔法】を扱っている間、他の【魔法】は使えないんですね」

 僕の思った通りだ。
 あのフルムさんが弱音を口にするほど。
 ならば、なにかしら制限があるに違いないという予想は的中していた。

「なんで【魔法】を使えないあなたが、それに気付いたのかしら?」

「だって、フルムさんが「苦労」なんて言うの似合わないなと思って」

「……そんなこと、ないわよ」

 フルムさんは諦めて地面に足を付ける。僕に事実がバレて、力が抜けたのだろう。そのままガクリと膝から倒れ込んだ。

 恐らく、フルムさんは上空で【獣人】に襲われ、怪我を負った。
 傷を隠すために【風・属性限定魔法】を解除し、【陽】属性で回復。その後、地面に触れる直前に再び飛行を開始した。

 体力と【魔力】を消耗したフルムさんを1人で戦わせるなんて――御免だ。

「……その【属性限定魔法】を僕に使うことできませんか?」

「でも、あなたを巻き込むわけには――」

 この期に及んでも、僕の身を案ずるフルムさん。
 今はそんなこと言ってる状況ではないし、なにより、僕は――、

「僕はフルムさんに巻き込まれたいんです。あなたが、僕を助けてくれたから――!!」

 助けてくれたから【放出】を手に入れることが出来た。だから、この力はフルムさんの力だ。
 頭上から無数の水の刃が降り注ぐ。消耗していることを【獣人】を見抜き、攻撃の手を増やしたようだ。
 僕は頭上に向けて【弾《バレット》】を放った。

 ド、ド、ド、ド、ド、ド。

 フルムさんみたいにピンポイントで打ち落とせない。
 だから、僕は【弾《バレット》】を隙間がないほど連射し相殺していった。
 刃と弾が激突して飛沫を上げて消えていく。
 雫が雨のように畑を濡らした。
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