手札看破とフェンリルさんで最強へ~魔法はカードだと真理に到達してない世界でデッキ構築!~

白慨 揶揄

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第20話 バカンスに行こう

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「あれ? 今日はギルドに行かないのか?」

 いつもクエストを受けているギルドを通り過ぎた。
 そのことを不思議に思ったのか、ロウが足を止めていた。

「うん。今日は買い物だけにしようかと思ってさ。お金も溜まってるから、エミリさん達の屋敷に行こうかなと思ってて」
「そういや、会いに来てくれって言われてたな」
「最近、この辺の魔物と戦ってばかりだったから、休息を兼ねてね。――それにしても、今日はなんだか街が騒がしいね」
「やっぱり、お前もそう思うか?」

 何かあったのだろうか?
 街の異変にロウも気付いたのか、耳を傍立てる。声と声が重なりノイズに聞こえるけど、フェンリルであるロウはある程度は聞き取れるらしい。

「ふむふむ。どうつもこいつも【選抜騎士】が~って話してるぜ? 魔物に負けたとか、新しいメンバーが決まったとか」
「あ、そっか。色々あって忘れてたけど、もうそんな時期だった」

【選抜騎士大会】

 4年に一度開催される催し物。
 国を代表するパーティー達が互いの力をぶつけ合う、冒険者ならば誰もが憧れる聖なる場。
 バニスもそれに出たがっていたっけ。【占星の騎士団】はもっとも冒険者が多いこの街で一、二を争うほど。
【選抜騎士】に指名されても納得の実績なんだけど、どうなったんだろ?

「追放された僕には関係ないんだけどさ」

 仮に【占星の騎士団】が選ばれてたとしても、これまでと何も変わらない。いつものように「見る方」として楽しめばいいだけ。

 だから、僕は僕のやりたいことをやるだけ。
 そのために、今は準備だ。
 食料や傷薬を購入したリュックは、空気を詰め込まれた風船みたいにパンパンだった。

「だいぶ買い込んだな。そんな荷物必要なのかよ? あいつらの街はここから三日くらいだろ?」

 背中にこんもりと膨らんだリュックにロウが座った。

「そうなんだけど、備えあれば憂いなしってことだよ。それより、重たいから降りてよ!」
「なんだよ、けち臭いな~」

 ぴょんとリュックから飛び降りる。
 ロウの言う通り、エミリさん達が住む街は、ここから馬車を使って三日は掛る。だけど、僕は徒歩で目指そうとしていた。

「はぁ!? なんでだよ!」
「なんでって、彼女達が住んでる街の近くでも魔物を倒したいから」

 僕たちが暮らしている大陸は、北と西はそれぞれ別の国に繋がっており、南と東は海に面している。

 これまで、僕が魔物を倒しに足を運んでいたのは北側の山岳地帯。
 だけど、エミリさん達が住んでいるのは南側。海に面する街だ。当然、環境が変われば暮らす魔物も変わる。
 だから、魔物を倒して新しい魔法を手に入れようというのが、僕の考えだった。

「おい! さっき休息って言ってただろ! どこ行ったんだよ!。全然、休めないじゃんかよぉ!」
「そうかな? 今まではクエストを受けて魔物を討伐してたけど、今回は完全にフリーだから気は楽だよ」

 クエストを受けるとどうしても、早くクリアしなくちゃと思ってしまう。
 だから、自分のペースで旅をしながら魔法を集めてみようと考えたのだ。誰かに依頼されたかどうかで気持ちは大きく違う。

 のびのびと爽やかな風を受けながら街を出る。
 しばらく歩くと緑が濃くなり、森が姿を見せた。

「はぁ。で、この森でも魔物を探すのか?」

 バカンス気分を壊されたロウが、鼻が地面に突きそうなほど顔を項垂れ歩く。その姿は豚が地中に眠る餌を探しているようだった。

「うーん。街周辺の森は、冒険者達が腕試しに魔物を倒してるから、珍しい魔物はいないんだよね」

 現れるのはスライムやゴブリン。
 既に魔法を手に入れているから、無理に探す必要はない。

「だったら、この森抜けるまでは馬車を使っても良かっただろうが」

 ロウは歩くことに飽きたのか、リュックの上に飛び乗り身体を丸める。重いけど、ちゃんと説明してなかった僕も悪いよね。
 しばらく休んで貰おうかな。

「ゆっくり寝てね」

 案外、これまでで一番疲れてるのはロウなのかもしれない。【選択領域】が使えなかった僕のために、毎回、領域を開いてくれていたし、色んな情報を教えてくれた。
 感謝してもしたりないよ。

 ペースを堕として森を歩いていると、前方から蹄の音が聞こえてきた。駆ける足音は早い。馬車ではなさそうだ。

「て、ことは冒険者が帰ってきたのかな?」

 予想通り。
 馬に乗った3人組が姿を見せた。騎乗している馬を見ただけで、このパーティーが優秀なのが分かる。
 馬の装備もしっかりしてるし、毛並みもいい。

 馬の美しさに見惚れる僕の脇を抜けた。
 優雅に森を駆ける姿は、理想のパーティーそのものだ。決して、一人だけに荷物を持たせたり、歩かせたりしていない。
 辛いことを思い出したと、止めていた足を動かす。

「君……、ひょっとして【占星の騎士団】に所属していた人じゃないか?」
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